研究課題/領域番号 |
21K02239
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09010:教育学関連
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
鈴木 尚子 徳島大学, 人と地域共創センター, 准教授 (00452657)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 認知症 / 社会包摂 / 一般市民 / 意識啓発 / 教育 / 地域住民 / ウェルビーイング / 社会的包摂 / 国際比較 / 認知症の人の社会的包摂 |
研究開始時の研究の概要 |
認知症は、現段階において、薬物投与だけではその諸症状の軽減にはつながらず、周囲の人々が当事者とどのように接していくかがその進行や諸症状の度合いに影響を及ぼすといわれている。そのため、国内外の近年の認知症施策では、認知症をめぐる諸問題が地域に生きるあらゆる人々の協力により解決すべきものとして位置づけられ、先進的な一部地域では、一般市民を対象に多様な地域資源を活かして意識啓発を行い、対応力向上を促す試みがみられる。 そこで本研究は、このテーマにおいて先駆的な取り組みを進める国内外の事例をもとに、認知症の人とともに生きる社会において求められる一般市民への意識啓発のあり方を解明することを目的とする。
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研究実績の概要 |
2023年度には、本研究課題に関する国内外の文献にもとづいた資料分析調査並びに所属機関のある徳島県で自身が実施してきた認知症に関する一般市民への意識啓発活動等をもとに、所属する国内学会においてその成果を発表した(日本比較教育学会第59回大会、日本社会教育学会第70回大会、日本認知症ケア学会2023年度東海ブロック大会)。また、少子高齢化の進行する我が国の各地域において、特に高齢化率の高い地方都市での認知症に関する意識啓発活動のあり方とその課題に焦点を当て、国際学会(8th International Conference on Research in Teaching and Education)でもその研究成果を発表した。 この他、2023年度よりコロナ禍が徐々に収束したため、諸外国における現地調査をカナダとオーストリアで遂行した。カナダでは、異なる複数の専門分野(看護学、音楽学、心理学、社会学等)の大学関係者が中心となり、地元の高校生・大学生に呼びかけ、同じ地域に住む認知症の人とその家族介護者とともに定期的な合唱活動を行わせることを通じ、認知症当事者の認知機能改善や社交性の向上等の変容をもたらしているだけでなく、学生らの認知症への理解促進や、(年に数回開催されるコンサートを通じて)地域全体への認知症をめぐる意識啓発等の効果を見出しているプロジェクトについて、参与観察調査並びに聴き取り調査を実施した。オーストリアでは、芸術分野の大学関係者により考案された、アートの作品を通じたワークショップをもとに認知症への理解を地域住民に促すプロジェクトについて、意見聴取を行った。 以上に加え、徳島県内において地域住民を対象に実施している認知症に関する意識啓発活動に関し、これまでの成果をとりまとめ、所属機関の紀要に投稿した(徳島大学・人と地域共創センター紀要33)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍により約2年間実施の困難であった諸外国での調査研究について、2023年度にようやく遂行できた点においては飛躍的な進展があったと思われる。これにより、それまで資料分析調査等を通じて文献のみから理解を深めていた好事例に関し、それらが行われている現地の状況を踏まえ、より体系的かつ包括的に当該事象をとらえた比較研究が徐々に可能となった。したがって、研究計画全体としては、おおむね順調に進展し始めている。 しかしながら、過去数年の間に進行した円安や諸外国でのインフレーションの影響等もあり、海外での調査研究に必要となる諸費用が当初に日本円で想定していた予算額を大幅に超過したため、限られた範囲内での調査に留めざるを得なくなった。この問題をいかに克服し、国内での調査研究とバランスをとっていくかは今後の課題である。
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今後の研究の推進方策 |
国内においては、災害等の諸事情により現地調査を延期している某機関での調査研究を可能であれば実施し、その成果をまとめていくことを予定している。 諸外国においては、前年度に実施した現地調査の成果を徐々に取りまとめて公表していくとともに、それらの調査で情報が不足する点は、再度関係者らに連絡を取りながら補完していきたい。また、新たな調査対象として検討していた(昨年度に現地調査を遂行した機関以外の)国内外の機関においても随時打診を行い、了承を得られた機関より、新たな調査研究にも着手する。 以上を進めつつ、国内外における調査研究のバランスを取りながら、徐々に本研究課題全体の総括にも取り掛かる予定である。
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