研究課題/領域番号 |
21K02245
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09010:教育学関連
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研究機関 | 東北学院大学 |
研究代表者 |
片瀬 一男 東北学院大学, 情報学部, 教授 (30161061)
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研究分担者 |
天童 睦子 宮城学院女子大学, 一般教育部, 教授 (50367744)
相澤 出 東北医科薬科大学, 教養教育センター, 准教授 (40712229)
大迫 章史 東北学院大学, 教養学部, 教授 (60382686)
石川 由香里 立正大学, 文学部, 教授 (80280270)
土田 陽子 帝塚山学院大学, 人間科学部, 教授 (30756440)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 女子ミッション教育 / 脱連結 / 性別役割分業 / ミッション教育 / 女子中等教育 / 国家統制 / 女子教育 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、第一に「東北地方における女子ミッション教育の社会史」研究のまとめとなる宮城学院女子大学同窓会員への郵送調査を行う。第二に、これを踏まえて、函館の遺愛女学校・長崎活水女学校との比較を行う。 遺愛女学校は、本研究の端緒となった弘前女学校の本校であり、両者の間にあった交流を明らかにする。また、これらの学校と同じくメソジスト派のミッションスクールでも、文化風土の異なる長崎の活水女学校との比較を通じて、キリスト教が地域の近代化に果たした役割の差異を考察する。
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研究実績の概要 |
2023年度は、これまで収集した弘前女学校(弘前学院大学)および宮城女学校(宮城学院女子大学)の史料の分析を行った。 弘前女学校については、『弘前百年史』などを資料に同校が明治30年代に教育勅語や文部省訓令第12号を、新制度学派のMeyerらのいう「脱連結」すなわち公式組織の形式と日常の組織活動を分離するという方策で受け入れることによって、明治政府の国家主義的教育政策に柔軟に対応してきたことを示した。 宮城女学校については、戦時下の記録(「多賀城海軍工廠動員記録」および「戦時下の宮城学院」)を宮城学院資料室の許諾を得てテキストマイニングの手法で内容分析することができた。このテキストマイニングでは、とくに「特攻(機)」と「空襲」という形態素(語句)に着目して分析を行ったが、それによって近代家族における性別役割分業が、戦時下では前線(特攻攻撃など)と銃後の守り(工廠での航空機・火薬・信管など武器製造)という形で、再編されたことを示した。 また東北地方のミッション女子教育研究の総括として、11月4日に宮城学院ハンセンホールで「音楽とリベラルアーツがつむぐ地域革新」という公開講演会を行い、100名ほどの参加者があった。当日は東北地方における洋楽受容に詳しい北原かな子・青森中央学院大学教授による「『辺境』から見る洋楽受容と近代東北の音楽家たち」という基調講演のあと、本科研費の研究成果の一環として、相澤出・東北医科薬科大学准教授から「音楽がつむぐ地域文化の革新‐宮城学院同窓生のライフコース分析」という研究報告を行った。 さらに2024年2月には、コロナ禍で中断していた長崎活水女子大学資料室で同校の戦前・戦中期の校務日誌など教務資料を写真撮影によって収集した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
東北地方の2つのキリスト教主義の女学校(弘前女学校と宮城女学校)については、研究目的を達成するに足る史料の収集はほぼ終え、その分析結果の一部は学内の紀要で発表し、また学会誌にも投稿中である。 ただし、コロナ禍の影響もあり、比較対象とした長崎活水女学校の史料収集はまだ道半ばではある。しかし、同校の資料室および同窓会事務局とは、今回で3回目となる訪問によって、協力関係を保っている。今後は同窓会誌などへの寄稿文を収集し、その内容分析を行うことにしている。この内容分析の方法は、すでに宮城学院同窓会記念誌の分析(既発表)を通じて確立されており、今後は学校側の教務資料と照らし合わせて分析をする予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、東北地方の弘前女学校と宮城女学校については、さらに資料の分析を行い、科研メンバーでの情報共有をもとに学会報告や論文執筆をおこない、2024年度中の報告書の作成をめざす。 今後明らかにすべき課題としては、まず弘前女学校の場合、2023年度中に教育勅語や文部省訓令への対応戦略は明らかにできたので、今後は国家神道ならびに地域の民間神道である岩木山神社との対峙・対応の過程を明らかにする必要がある。宮城女学校については、戦争末期(昭和20年)に横須賀海軍航空工廠への大規模な勤労動員がなされていたことが同窓生の証言や「神奈川県の学徒勤労動員を記録する会」の資料から明らかになった。しかし、学徒勤労動員令(昭和18年)の時点では、政府部内で女子の広域動員はしないという申し合わせがあった。それにも関わらず宮城女学校をはじめ、東北地方各県の高等女学校には大規模動員がなされた。その政策決定(または変更)過程の究明が課題となっている。 長崎活水女学校については、戦時下における教員への思想統制との関わりで教育過程の分析をしてきたが、今後は同窓会の募金活動にも注目して分析を行う。というのも、戦時下ではアメリカのミッション・ボードからの資金援助が途絶し、財政難に陥る中で、同校は定員の増加も行ったが、同窓会の募金による資金援助が学校の存続を可能にしたと考えられるからである。こうした同窓会の活動状況を、地域社会たとえば同校の利用層などに注目して解明することが課題として残されている。
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