研究課題/領域番号 |
21K02260
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09010:教育学関連
|
研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
金馬 国晴 横浜国立大学, 教育学部, 教授 (90367277)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
|
キーワード | 自学共習 / 共学自習 / 活動理論 / 生の哲学 / 生命知 / 遊び / 教育DX / 合科 / 自学自習 / GIGAスクール構想 / 個別最適な学び / 協働的な学び / 令和の日本型学校教育 / 新教育 / 個別化・個性化教育 / 僻地教育 / カリキュラム |
研究開始時の研究の概要 |
全ての人が自学できるまでに育つよう,小・中・高校・大学の各段階で,社会人以降や少なくとも前後を見通しながら,どんな知識・技能と資質・能力をいかに養っておけば,将来,自学が始められ・続けられるのか。本研究はこの長期的な視点から,学校のカリキュラム案を共習の計画として開発する理論的かつ実践的研究として位置づけられる。 すでに家や図書館,公民館などでの場で,受験に向けて自習をする中高生がいるが,私も地元で主宰する無料塾も自習の場の提供といえる。基本的に個々人が自分で持ってきた教材を自習するが,質問がある時に仲間に話しかけるか,スタッフを呼ぶ。こうした地域での共習の場を発想の一つとしたい。
|
研究実績の概要 |
研究の目的は,「自学共習」という実践的理論を,新教育の諸系譜の歴史と現状に関する研究を通じて構築することであり,また,その理論を仮説として活用し,ポスト・コロナにおける実践の理想例を選定して分析する作業を通じて仮説検証をし,「自学共習」論を活用したカリキュラム案を段階的に開発していくことであった。 理論面では,自学や共習は活動と見なしたとき,活動理論で分析ができるという着想が得られ,文献収集と読解・考察を進めて図書紹介を執筆するとともに,コア・カリキュラムを活動理論で分析・図示し直した学術論文をまとめ,活動理論学会での報告も行なった。活動における道具を通信端末と捉えた場合も考察して論文化し,自ら編集した教育DXの大学テキストに掲載した。併せて,自学的な活動の典型といえる遊びについて論文をまとめ(2023年度公開),総合的な学習の時間の歴史を新教育の観点から捉え直した文章が大学テキストに掲載された。また,自学の大前提として生命知,生の哲学,生命論の系譜を発見し,文献を収集して理論的な考察を進めて,論文化の準備を始めた。 併せて,新教育の系譜に関わる研究を進化させ,コア・カリキュラムの研究と資料集成を続けた。『戦後初期コア・カリキュラム研究資料集』の4巻分(諸団体編および補遺)の編集・刊行ができ,当資料集も活用した学術論文3本をまとめて投稿した(未掲載)。 実践面では,上記の考察も仮説として活かすべく,感染症と一斉休校に関する小学・総合学習に関してインタビューも行なって雑誌上の文章にまとめ,感染症問題に関する書評や,虫とその生命に関する生活科を合科学習と見なして分析した文章を執筆した。 今後は以上のような理論や実践の探究を,仮説と見なしてフィールドワークで検証し,研究会も含めた場での発表・報告を通じても吟味して,雑誌のみならぬ学会誌への掲載を目指す。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度もコロナ禍による出張の制約が残っていたため,理論・実践の検討を中心とせざるを得ず,活動理論およびコア・カリキュラム論を中心として考察を進めてきた。 (1)当科研費他で収集してきた参考文献,コア・カリキュラムの冊子類を整理し直した。情報・知見などを補うために,オンライン研究会に無料のものも含めて計250件参加した。それらに関連して配信されたレジュメ・パワポ・資料,およびメモも,電子データの形で膨大に収集することができた。 (2)これまで4回の科研費で行なってきたコア・カリキュラム関連の元教師インタビュー50名分に対するテープ起こし記録,および収集してきた冊子類を活用することで,学術論文3件をまとめて学会誌に投稿したが,引き続き再構成を進めている。他にも教育雑誌に掲載する論考を執筆する中で,上述のように考察してきた理論を仮説として活用することができた。 (3)新しい文献の入手・整備を進めた。今年度は活動理論,探究的な学習論,遊び論,創造性論,およびそれらを阻害・疎外する要因に関連するものを中心に,教育と哲学や歴史などの近接領域とに関する文献を収集し,研究室への配架を続けることで見通しが立てられてきた。とくに自学自習の根拠として,新教育やその継承といえるものに注目し,デューイ,モンテッソーリ,シュタイナー,フレネ,ニール,そしてイエナプラン,ホリスティック教育,さらに戦後日本における個性化・個別化学習,自由進度学習,生活科,総合学習,総合的な学習の時間・総合的な探究の時間,協働的な学びとそれらと対になる個別最適な学び他に関する文献が収集できた。さらに,近代合理的な機械知とは異なるいわゆる生命知の系譜が大いに注目できるものとわかり,ベルクソン,ドゥルーズ,ガタリ,そしてヴィゴツキーの文献を揃えてきた。
|
今後の研究の推進方策 |
コア・カリキュラムなど新教育に即したカリキュラム研究を本格化し,活動理論も活用して分析を進める。その際,現代における新教育の展開を考える上での見取り図となる著作を活用する。永田佳之編著『変容する世界と日本のオルタナティブ教育』(世織書房,2019)と『オルタナティブ教育』(新評論,2005),および『世界新教育運動選書』別巻の3冊(明治図書,1988)と橋本美保・田中智志による大正新教育の編著書3冊(東信堂,2015・18・21)は,新教育的な系譜と課題も含めたカタログ的な著作となっており,基盤的に活用することができる。それらによって全体像を捉えた上で,新教育の系譜一つ一つを,活動理論によって分析する準備を進めていく。TEA (複線径路等至性アプローチ)も併せて活用できる見通しも立っている。 さらにコロナ禍が明けていく2023年度は,新教育の諸系譜他「自学共習」の先駆として位置づけられるような学校,施設,あるいは研究会を訪ねて,フィールドワーク,公開授業などの機会に参加するなどし,できればインタビューを行なう。オンライン研究会や実践検討会への参加が対象の選定に有効であるため,200件以上に参加しレジュメ,資料を収集する。 文献・資料の収集も積極的に行うことで,理論の深化や実践例の選定に備える。大正自由教育,戦後新教育,総合学習,海外の新教育の諸系譜,それらと系譜を共にするような生命知,生命論などを中心に,哲学・思想,歴史,社会科学の関連文献を集める。それらと対比的な系譜としてのシステム社会論,具体的には総力戦体制,全体主義,ファシズム,植民地支配やそのもとでの戦時下教育,今日における新自由主義,新保守主義,そしてSociety5.0構想,個別最適な学び論,AI論,さらにはウェルビーイング論や企業内研修論などに関しても文献を収集し,整理・配架,分析を進める。
|