研究課題/領域番号 |
21K02266
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09010:教育学関連
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研究機関 | 都留文科大学 |
研究代表者 |
木下 慎 都留文科大学, 文学部, 講師 (10803257)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 存在論 / 共存在 / 開け / 自由 / 主体 / 脱構築 / ケアリング / デモクラシー / 共同体 / 論争問題 / 哲学対話 / 学校 / エージェンシー / 信頼 / 分有 / 特異性 / 複数性 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、現代哲学の知見を踏まえて、近代教育思想の教育共同体論のパラダイムを批判的に乗り越え、教育の新しい共同性を構想することを目的に、ジャン=リュック・ナンシーとジョン・デューイの思想研究を行う。第一に、共同体の哲学を打ち立てている現代フランスの哲学者ナンシーの思想を取り上げ、「分有」「共存在」「特異性」「複数性」などの概念に注目して、教育関係における共同性を原理的に問い直すための視座を得る。第二に、それらの知見をもとに、近代教育思想の共同体論、とくに現在にいたるまで広範な影響を与えているジョン・デューイの思想を再検討し、これまでの教育共同体論の課題と今後の展望を示す。
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研究実績の概要 |
本年度は、ジャン=リュック・ナンシーの存在論の観点から、教育の場における開かれた共同性について考察を行った。その成果は、論文「存在の開けと教育の責務:ナンシーの存在論から」(教育哲学会『教育哲学研究』所収、第128号、59-77頁、2024年)にまとめた。本稿では、ナンシーの存在論の基本構成をハイデガーの存在論との対比で、存在の「開け」の概念を軸に、共存在論としての存在論として把握し、その教育学的意義を「自由の教育」という観点から提示した。ハイデガーの存在論に立脚した「自由の教育」の構想とナンシーのそれを対比させることで、ナンシーの存在論が教育学に与える示唆が明確になるように努めた。従来の先行研究では、ナンシーの共同体論を取り上げてその教育学的意義に触れた研究はいくつか見られたが、ナンシーの存在論の基本構造と照らし合わせて、教育の積極的な構想にまで展開する研究は見られなかったため、その点で本研究は一定の独自性を有している。 また、2022-23年度から継続的に検討してきた学校の共同性とそれを支える原理については『教育哲学事典』(丸善出版、2023年)所収の「教育と学校」の項目で、特にケアリングとデモクラシーという観点から概観した。教育の共同性と密接に関係する「主体」や「自由」の問題については、同書所収の「主体とエージェンシー」と「教育における自由とは何か」に簡潔にまとめた。さらに、脱構築及び脱構築以後の哲学の潮流が教育学に与える示唆については、同書の「脱構築以後の哲学の展開と教育」で触れた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年度に育児休暇を取得したため、研究にやや遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果として、ナンシーの哲学から「自由の教育」という積極的なモチーフを取り出すことができたが、実践に対する具体的な提言にまでは至っていない。教育実践への具体化のためには、ナンシーの世界論と芸術論を関連させつつ掘り下げ、教師の教育的行為に関する具体的モチーフをそこから抽出する必要があると考える。その上で、ナンシーの共同体論へと再び立ち返り、新教育をはじめとした従来の教育の共同体論とは異なる方向性を本研究の最終成果として提示したい。
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