研究課題/領域番号 |
21K02269
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09010:教育学関連
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研究機関 | 奈良教育大学 (2023) 東日本国際大学 (2021-2022) |
研究代表者 |
南雲 勇多 奈良教育大学, 教育連携講座, 講師 (00781543)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 開発教育 / グローバル市民教育 / 国際理解教育 / ESD / 持続可能な開発 / SDGs |
研究開始時の研究の概要 |
グローバル市民の育成の重要性が教育分野でも強調されてきている。そこではグローバル競争にばかり力点をおいた人材・能力育成が批判的に検討されたり、またグローバルイシューの解決のための実践が模索されているが、背景にあるグローバリゼーションの「文脈の中」で議論するだけでなく、その「文脈それ自体」を批判的・構造的に問いなおし、再構築していく市民の育成も求められる。本研究ではそのために示唆を与えうる開発教育に着目し、先進的に研究蓄積を重ねてきた英国の開発教育と独自の発展もみせてきた日本の開発教育を比較・検討しながら、グローバル市民教育の批判的発展へ向けた開発教育の意義や視点を明らかにすることを目指す。
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研究実績の概要 |
本年度は主に、これまで取り組んできた国内の開発教育研究のさらなる推進と、開発教育の先進的地域であるイギリスでの調査の実施といった二つのアプローチを交えながら進めた。 そのことを通し次の点が明らかになった。第一に国内外の開発教育はこれまで多様な変遷を経験しながら今に至っているが、その過程で多くの実践や組織において、グローバル市民やその育成がキーワードとして位置付けられるようになっている点である。第二に、イギリスでは様々な地域に開発教育センターがつくられ、国レベルで、また地域ごとの、そして国外とのネットワークが重層的に形成されてきているが、そのセンターの多くがグローバル市民を掲げており、そのことが多層的なネットワークをつなげる軸となったり、また、ナショナルの枠組みにとらわれずにネットワークの地域性をつくりだすことにつながってる点である。 上記をふまえ、次のような課題が浮かび上がった。まず、開発教育の中でグローバル市民が掲げられる背景として、開発教育がこれまで志向してきたこととの親和性などがうかがえる一方、開発教育が具体的にどのようなグローバル市民像を描いているのか、また描いていこうとしているのかについて、それぞれの実践や組織で必ずしも充分に議論が重ねられているわけではなく、暗黙知のようなかたちで共有されており、それらを明らかにしていくことである。加えて、国際社会においてグローバル市民教育という分野そのものが構成されてくる中、グローバル市民の育成を掲げる開発教育とその他のグローバル市民教育との重なりや違い、また、そこからみえる開発教育の意義や役割とは何かについて明らかにすることである。今後は上記の明確化を通し、開発教育が示すグローバル市民とその育成に関する視点、またこれまでの開発教育のグローバリズム批判やポストコロニアル批判の視点をふまえ、既存のグローバル市民教育の再考をはかる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度推進した点として、第一に、前年度より計画していた国内の開発教育関係者との連携や聴き取りを行った。個別の聴き取りに加え、例えば国内で開発教育を先進的に進め、かつネットワーキングを担ってきた開発教育協会(DEAR)がこれまで実施してきた開発教育全国研究集会(現在はd-laboと呼称)に参加し、開発教育の実践・研究者と連携をはかるとともに研究課題に関する情報交換や議論を行った。また、関西において開発教育の地域的なネットワーキングと実践を推進してきた開発教育研究会が企画・実施する実践現場に参加し、同様に、開発教育の実践・研究者と連携や議論をはかった。 第二に、日英の開発教育を関連づけた研究を進めるため、当初計画していてコロナ禍の影響などで延期となっていた英国への訪問調査を実施した。特に初年度と二年目に実施した文献調査および開発教育やグローバル市民教育の課題の明確化をふまえ、現地の研究者・実践者への直接の聴き取りおよびディスカッションを行うとともに、情報をアップデートするための施設訪問、資料調査などを実施することができた。具体的にはロンドン大学のDevelopment Education Research Centre(DERC)および英国で開発教育を地域に根ざして進めてきた各地の開発教育センターの中でも先進的な実践展開を行っているReading International Solidarity Centre(RISC)などの関係者から近年進んだ実践や研究について情報収集を行った。 上記のように進んだ点がある一方で、次のことから遅れが生じている。本研究課題の計画時には予定していなかった筆者の所属大学の異動と転居に伴い、今年度計画していた年間スケジュールが後ろ倒しとなったため、予定の調査および最終年度としてのまとめを仕上げることが難しくなり「やや遅れている」との状況に至った。
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今後の研究の推進方策 |
今後の本研究の推進について、主に次の二つの段階に分けた方策を取ることとする。 第一に、日英の開発教育をより関連づけて研究を推進するため、英国への第二次訪問調査を実施する。特に、第一次訪問調査で明らかとなった、英国における開発教育およびグローバル市民教育、そして両者の関係性などの近年の変遷をふまえ、これまで地域を基盤に開発教育を実践してきた各地の開発教育センター(DEC)がグローバル市民(グローバル・シティズンシップ)を掲げて活動している実態やその背景・経緯、またそこでの実践の蓄積について調査を行う。あわせて、これまでで明らかとなった論点や課題を現地関係者と共有し、本研究課題を深めるための聴き取りおよびディスカッションを行うこととする。その訪問調査から明らかとなったものについて、第一次英国訪問調査およびこれまでの文献調査をふまえて分析し、考察を加え、研究発表や論文につなげて公開をはかることとする。 上記の取り組みをふまえ、第二に、これまでの研究期間全体の調査および分析・考察を総括しつつ、日本と英国の開発教育研究を比較・検討することを通し、また、両者のグローバル市民教育と開発教育の関係性に関する議論をふまえ、既存のグローバル市民教育を批判的に問い直し、再構築するためのより具体的な視点と枠組みを明確にすること、そしてその成果の公表につとめることとする。これまで取り組んだ国内の開発教育研究、訪問調査に文献・資料調査で補完を加えた英国開発教育研究、さらには、両者を関連づけながら明らかにする開発教育の批判的視点と、それらを用いたグローバル市民教育の再考と発展へのあり方を探る研究について明確化し、関係者が集う場で研究報告・研究発表として公開すること、さらには論文として公表につなげることなどを通して、関連領域の実践者・研究者を中心に共有をはかることとする。
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