研究課題/領域番号 |
21K02276
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09010:教育学関連
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研究機関 | 筑紫女学園大学 |
研究代表者 |
松本 和寿 筑紫女学園大学, 人間科学部, 教授 (50613824)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 教育評価 / 戦後教育改革 / 経験主義教育 / ガイダンス / 教育測定 / 標準検査 / 小見山栄一 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、1920年代のアメリカで「教育測定」運動に対抗して生まれた「教育評価」概念が、戦後教育改革期の日本でどのよに受容されたか明らかにする。 研究の中心には、戦後日本の「教育評価」論を先導した小見山栄一を取り上げ、その「教育評価」論を軸に、戦前日本の「教育測定」研究と戦後「教育評価」との連続・非連続の問題、他の研究者の「教育評価」論、教育現場での展開の状況等を検討する。
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研究実績の概要 |
2023(令和5)年度は、戦後教育改革期の日本における「教育評価」の実像について、経験主義教育とガイダンスにおける学力の評価や児童生徒の特性の把握が如何に行われたのかについて検討した。このことにより、戦後日本における児童中心の思想に基づく教育実践と戦後目指された客観的な評価との関係、およびその変化について検討し、この時期の学校教育の姿を子ども観と評価の観点から明らかにすることを目指した。 全人格的な子ども観に基づく経験主義教育やガイダンスの成否は、児童生徒の学力や様々な特性を教師がどのような手立てで把握するかが鍵となる。つまり、教育の結果や特性の把握とその客観的合理性の問題である。 ところが、戦前の評価は、教師の主観に基づくものであり、レディネスに関する顧慮もみられなかった。また、評価の対象は、部分的で限られており、記憶力を試すものが大半であった。こうした評価では、ガイダンスや経験主義教育が対象とする児童生徒の多様な特性、問題解決の力、自主性、態度などを明らかにすることはできない。 そのため、戦後教育の実践的改革の柱として経験主義教育やガイダンスが推進される一方、評価においては二つの課題があったと言える。その一つは教師の主観からの脱却であり、もう一つは態度を含む学力や様々な特性の把握であった。つまり、経験主義教育やガイダンスの有効性を示すには、客観的合理性をもつ多様な評価を実施することが必要であったのである。 戦後教育改革期、全人格的な子ども観に基づく教育実践の成否を左右する新たな評価は、戦前の評価が抱えていた課題を克服し得たのか。そしてそれは戦後日本の教育にどのような影響を与えたのか。今期は、これらの問題を明らかにすることに取り組んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の計画のうち、「教育評価」の実際として、新制高等学校への進学競争や学力低下批判と経験主義教育との関係、新制高等学校の入学者選抜における態度の評価方法、および日本教育学会や国立教育研究所が行った全国規模の学力調査における態度に関する問題の形式や内容および両調査の相違点について明らかにした。 また、導入期のガイダンスの概念や当時示されていた児童生徒の特性を把握する方法について明らかにするとともに、「ケース・スタディ」を軸にしたガイダンスの計画的実施の様子や集団指導と個人指導の関係を検討し、ガイダンスが有する機能と「教育評価」の関係を検討した。 さらに、全人格的な子ども観のなかで、学力が児童生徒の特性の一つとしてどのように位置付けられたのか、戦後最初の学籍簿である「小学校学籍簿」で用いられることになった5段階相対評価の検討を通して明らかにした。その上で、生徒の多様な情報を集約し「教育評価」に生かす目的で作られた中等学校用の学籍簿「累加記録摘要」について検討し、ガイダンスにおける情報の集約と更新の方策について明らかにした。 こうした内容を、令和5(2023)年度 科学研究費助成事業(科学研究費補助金)(研究成果公開促進費)「学術図書」の助成を受け(23HP5154)、『子ども観と評価でみる学校教育史-経験主義教育に学ぶ子どもはどう評価されたか-』、風間書房から2023(令和5)年11月に出版したところである。 ただし、本研究で取り扱うことにしていた、通常の教育活動で用いられた客観的な評価に関する具体的な事例の収集や、家庭を巻き込み「教育評価」の充実を期すための連絡簿である通知表等についての検討までには至らなかった。この点が本研究の残された課題であり、全体としてみれば当初計画から「(3)やや遅れている」と評価せざるを得ない。
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今後の研究の推進方策 |
研究の最終年度となる2024年度は、地方の教育実践に関する一次資料(指導案、研究報告等)に当たり、実際の授業における客観的評価の事例を収集したい。また、通知表の様式や記述の内容等を見ることにより、学校と家庭の連携という視座から「教育評価」の実際について検討したい。
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