研究課題/領域番号 |
21K02297
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09020:教育社会学関連
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研究機関 | 東京福祉大学 |
研究代表者 |
金 龍哲 東京福祉大学, 教育学部, 教授 (20274029)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 再帰的近代化 / 伝統文化 / 文化の伝承装置 / 文化変容 / アイデンティ構築 / 文化の伝承 / アイデンティティ構築 / 文化的多様性 / 文化伝承 / アイデンティティ / 周辺文化 / 文化伝承システムの構築 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、文化的多様性の保全に寄与する広義の教育の在り方とは何か、という問題意識に立脚し、急激な社会変動の中で観察される周辺文化の振る舞い、つまり強勢文化の攻勢に直面した弱小民族や地域の文化は如何なる対応を選択するか、その中で伝承される文化はいかに選択され、それはまたどういう仕組みで継承されていくか、その中で人々のアイデンティティは如何に変容し、また再構築されていくか、弱小文化は現代という社会環境の中で如何にして従来と異なる、しかも有効な伝承システムの構築を目指しているか、等についてフィールドワークの研究手法を用いて明らかにしていく。
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研究実績の概要 |
本研究は、再帰的近代化理論やアイデンティティ研究の最新成果に基づいた新しい問題意識と発展的仮説設定を出発点とし、中国西南少数民族の文化伝承の実践において観察される文化変容の実態とアイデンティティ形成(再構築) のプロセスを明らかにすることを目的としている。 具体的には、「文化的危機」への対応において民族間に差異が観察されるのはなぜか、文化の伝承は単なる「再生産」でなく必ず変容を伴うものだが、その変容をもたらす要因とは何か、 伝承される文化はどういう特性を持ち、またどういうロジックで選択されるか、文化を拠り所とする集合的アイデンティティは如何なるプロセスを経て形成されるか、現代において民族集団に身を置く個人は如何にしてアイデンティティの選択と再構築を行うか、等の課題に迫る。急激な社会変動の真只中にある中国西南地域の少数民族の社会で試みられる取り組みや実践に対して、参与観察、インタビュー調査等を中心としたフィールドワークの研究手法を用いて上記諸課題の究明を試みる。 当初予定していた調査は、当該年度においても新型ウィルス感染拡大の影響を受け、現地入りを果たすことができなかったため、前年度で行った再帰的近代化理論や先行研究の渉猟を中心とした理論的枠組みの再整理、現地インフォーマントを対象に行ったリモートによるインタビューの結果を踏まえて、次年度(2023年)の7-8月に実施予定の現地調査に向けて新たに調査対象の選定と現地協力体制の調整を行う一方、一部については現地入りが可能な日本国内での調査に切り替えた。世界無形文化遺産に登録されているチャッキラコの保存と伝承に関する第6回目の現地調査で、2023年3月21-22日に三浦市市長、文化保護部局担当者、三浦市チャッキラコ保存会会長、伝統行事への参加児童とその保護者、地域文化の伝承に協力した学校関係者を対象に実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
周辺文化の伝承実践において観察される文化変容の実態とアイデンティティ形成(再構築) のプロセスを明らかにすることを目的とした本研究は、モソ人、プミ族、イ族、トン族、ジノー族など中国西南の山間地帯に居住し、歴史的に社会の中心から疎外・排除され周辺化されてきた少数民族を主な対象としている。急激に進むグローバル化と市場経済化の進展に伴って「文化の消失」が危惧される中、民族的アイデンティティの拠り所とする自らの文化を整理し、新たな 意味づけを行い、新しい文化の創造を通して文化的正当性を主張する動きが活発化している。グローバル化が周辺化された文化に未曽有の活況の契機をもたらしたともいえるが、この「逆説的」状況は常に不安定で流動的であるだけでなく、必要な情報やデータの収集ルートの確保が困難な側面を持つ。 こうした状況に対してはフィールドワークの研究手法が最も有効であるが、前述したように当該年度においては新型コロナウィルス感染拡大の影響を受け現地入りを果たすことができなかったので、研究は当初の計画より大幅に遅れる結果となった。 現地入りができない状況下での研究活動は、先行研究の渉猟を中心とした理論的枠組みの再整理と現地での調査体制の再構築、現地入り可能な日本国内での調査の実施にシフトしたので、現地の新たな情報の収集とデータの入手が大幅に遅れる結果となった。
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今後の研究の推進方策 |
新型ウィルスコロナ感染状況の終息に伴う入国規制が緩和されたことを踏まえて、2023年の夏季に現地入りし調査を実施する予定である。現在、当初の現地調査の日程と内容に修正を加え、実行可能な調査計画を作成しているところである。当初の計画に従って雲南省、四川省、貴州省における少数民族の伝統文化の現状について、母系社会を営むモソ人、土着信仰体系を支える宗教的職能者育成を目指して取り組んでいるプミ族、新たな形態の学校設置を通して民族文化の伝承を試みるイ族、東巴文字など伝統文化の伝承を軸に学校運営を行うナシ族に焦点を当て、社会変化の中の文化変容の実態、そして文化伝承の実践における民族的アイデンティティ再構築の動向について現地調査を実施する。研究成果は、引き続き比較教育学会、文化人類学会、アジア教育学会、中国四国教育学会、東アジア日本学研究学会等での発表を通して公表していく。
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