研究課題/領域番号 |
21K02381
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09030:子ども学および保育学関連
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
野坂 祐子 大阪大学, 大学院人間科学研究科, 教授 (20379324)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
|
キーワード | トラウマインフォームドケア / 特別なニーズのある子ども / 幼児 / トラウマインフォームドシステム |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、幼児や障害等の特別なニーズのある子どもへのトラウマインフォームドケア(TIC)実践とその評価を行い、組織のあり方について検討することである。 まず、幼児と特別なニーズのある子どものそれぞれについて、日常生活のなかでどのようなトラウマや逆境の影響がみられるのか、職員・支援者を対象としたヒアリング調査及び質問紙調査を実施する。 また、現場での対応事例を収集し、一定期間の縦断資料を用いて、対応の経過と効果、課題を明らかにする。 さらに、支援者を対象とした二次的外傷後ストレスの質問紙調査を実施し、組織風土との関連を明らかにする。
|
研究実績の概要 |
幼児や特別なニーズのある子どもへのトラウマインフォームドケア(TIC)実践のために、TICの4つの鍵概念に沿って、初年度に取り組んだRealizeのための実態調査の結果をふまえ、次の段階のRecognizeとRespondに関する検討を進めた。 前年度から継続的に社会的養護のもとで育つ子どもの在籍が多い小学校を対象としたフィールドワーク(計9回、63時間)を行ない、トラウマをかかえる子どもの学校での行動の把握と教職員の関わりについてのデータを収集した。児童養護施設との連携状況も把握し、事例への対応のポイントと課題を抽出した。学校や施設では、顕在化した子どもの言動に着目し、それに対する介入計画が立てられやすいが、行動の背景をTICの視点で包括的に捉えるための支援チームの共通認識が求められる。また、職員室や検討会議が教職員にとって安全な場である必要がある。 加えて、今年度から乳児院へと調査対象を広げ、職員(24名)へのアンケートとヒアリング調査を実施した。乳児院におけるTICは、被虐待やネグレクト等による乳幼児のトラウマの影響だけでなく、一時的な保護の役割を担う職員自身の喪失に伴う悲嘆(グリーフ)や葛藤もあり、複雑な影響があることが把握された。 実施計画としていたTICの教材化に関して、今年度、特別なニーズのある子どもの理解に向けた情報として、性被害や性問題行動、セクシュアリティに関する課題等のある児童・思春期の支援モデルをまとめた書籍を出版した。また、幼児に関する文献レビューと乳児院での調査データをもとにした論文を投稿した。 これらをより一般化した教材にするために、次年度も継続的なフィールドワークと教材を用いた研修実施後の事後調査を行ない、適切な対応と再トラウマの予防(Resist retraumatization)に向けた検討を行う予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
調査対象機関での継続的なフィールドワークを行うことができた。さらに、COVID-19の影響で調査の開始を見合わせていた乳児院での調査も開始することができた。 計画では、質問紙調査は規模の大きいものを予定していたが、現場のニーズもふまえ、調査対象者をしぼって、ヒアリング調査等を組み合わせた方法へと変更している。次年度の課題として、予定していた質問紙調査の実施の可能性は残している。
|
今後の研究の推進方策 |
調査は概ね予定通りであるが、初年度にCOVID-19の影響で開始が遅れた乳児院の研究がやや不十分であるため、次年度に収集していく。質問紙調査についても同様に、現状で不足している部分は、現在の調査対象機関との協力関係によって実施可能と考えている。 最終年度は、TICの鍵概念の4つ目であるResist retraumatization(再トラウマの予防)を検討するために、組織的にTICが運用できている機関を調査対象機関に追加し、事例の収集と検討による概念化を図る。
|