研究課題/領域番号 |
21K02417
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09030:子ども学および保育学関連
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研究機関 | 白梅学園大学 |
研究代表者 |
本山 方子 白梅学園大学, 子ども学部, 教授 (30335468)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | カリキュラム・マネジメント / 幼児教育 / 保育者 / 質的研究 / ナラティヴ / インタビュー / フィールド研究 / カリキュラム / マネジメント / デザイン |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、幼稚園でのフィールド調査を通して、教育実践のその時々に思考する保育者の声を集積し、「現実の」カリキュラム・マネジメントという営為の生成について明らかにするものである。その営為はPDCAサイクルのように機能的に展開するのではなく、園の教育文化や、保育者の教育観、経験に基づく直観などと相まって、遊びの「物語」の創出を伴うノット・ワーキングのように進み、自己言及的システムにおいて維持し続けるであろうことを検討する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、第一に、幼児教育におけるカリキュラム・マネジメントの実際の営為を発生的に丹念に描くことであり、第二に、カリキュラム・マネジメントという営為を形成的側面とシステム的側面から理論的に明らかにすることである。 3年次の2023年度は、A幼稚園における最初の調査について分析を行い、日本保育学会第77回大会にポスター発表「保育者によるカリキュラム・マネジメントの語りにみる省察の輻輳と拡散」としてエントリーし、抄録原稿を提出した。本発表では、A幼稚園の2名の保育者の語りを検討し、以下の点を明らかにした。コロナ禍により、保育形態や行事の実施形態が変更されるなど、変則的なマネジメントがなされていた。但し、変更されても取組みや子どもの育ちはネガティブな評価はされていなかった。「経験されなかったこと」が及ぼす今後の影響については有無両方が推察されていた。カリキュラム・マネジメントとしては、PDCAのみならず、カリキュラムのありよう自体が再検討されていた。保育観を見直させるなど、自明であったことの可視化や問い直しが語られた。カリキュラム・マネジメントの語りにみる省察は、子どもの経験や育ちを眼前にして、園文化や保育観、経験に基づく直観などと相まって輻輳し、カリキュラムのメタ言語化や自明の可視化などにまで拡散されたことが明らかとなった。 カリキュラム・マネジメントの営為の理論化に向けては、一つには、Schonの省察的実践論について検討を進め、日本保育学会第77回大会に自主シンポジウム「保育者の省察的実践と専門知の社会的文脈:Schon, D. A.(1983/2007)『省察的実践とは何か』をふまえて」の企画のエントリーを行った。二つには、「保育」の境界の不可視性について検討を行い、小論「「保育」の自己産出とその境界の不可視性」(『保育学フロンティア』第1号,4-9)を取りまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「園のカリキュラムの策定に向けたデザインとマネジメントの研究」については、A幼稚園において科研開始の前年度から調査を開始し、既に3年間、調査を行った。とりわけ、B保育者については連続して3年間、C保育者については連続して2年間、いずれも概ね月1回の頻度でインタビューを行い、随時、保育環境のフィールド観察を行った。2023年度はC保育者の3年目のインタビューを実施する予定であったが、調査日程を確保できず、今年度の調査は断念した。この点は大いに反省するところである。科研開始前年度の調査については、分析まで終え、ナラティヴ分析による仮説生成の可能性をみることができ、学会発表のエントリーまで進めることができた。 カリキュラム・マネジメントの理論化についても、徐々にではあるが進展があった。 Schonの省察的実践論からは種々の示唆を得た。例えば、Schonは「専門知の脱神話化」を図り、プロフェッショナルとクライアントとの関係性の再構築や省察的対話、マネジメントにおける組織の重要性、プロジェクトの社会性と問題の再定位など、専門知は種々の社会的文脈において発揮されていることを示している。この点に、カリキュラム・マネジメントの営為の形成的側面は個体論的に捉えるのではなく、営為の社会性に着目すべきことを改めて認識した。また、カリキュラム・マネジメントの営為のシステム的側面については、Luhmannの社会システム論等に基づき、「保育」の自己産出や、「保育」の境界の不可視性の点から、議論を進めることができた。調査自体は停滞したが、理論研究については、進展があった。 なお、「日々の実践に基づくカリキュラムのデザインとマネジメントの研究」については、B幼稚園に関わり続けているものの、今年度も調査のかたちはとれなかった。本研究における、この課題の位置づけについて、再検討を要すると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は「①カリキュラムのデザインとマネジメントに関する理論的研究」と、「②園のカリキュラムの策定に向けたデザインとマネジメントの研究」と「③日々の実践に基づくカリキュラムのデザインとマネジメントの研究」から成る。 このうち、「②園のカリキュラムの策定に向けたデザインとマネジメントの研究」については、科研開始前年度から3年間、A幼稚園にて調査を行い、1年目の調査の分析を終えた。今後は2年目以降の分析を進めていく。とりわけ、B保育者とC保育者については、縦断的に語りを分析したい。ナラティヴ分析や質的データ分析を試みながら、進めることとしたい。一通りの分析を終えた段階で、両保育者にその結果を説明し、あらためてインタビューを実施し、結果の妥当性について、検討をしたい。 「③日々の実践に基づくカリキュラムのデザインとマネジメントの研究」については、調査内容を見直し、B幼稚園で園のカリキュラムの策定が一段落した段階で、カリキュラムやカリキュラム開発手順等について、インタビュー調査を行うこととしたい。 「①カリキュラムのデザインとマネジメントに関する理論的研究」については、Schonの省察的実践論における専門知の社会性について、小論をまとめる予定である。また、保育の語り直しについて、Ricceurの物語り論やSchonの省察的実践論などをもとに、検討を進める予定である。
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