研究課題/領域番号 |
21K02429
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09040:教科教育学および初等中等教育学関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
本多 正尚 筑波大学, 生命環境系, 教授 (60345767)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2025年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2024年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2023年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | 教科書 / 種分類 / 分布 / 環境 / 亜熱帯 / 理科教育 / 分類学 / 自然環境 / 種 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究で実施する内容は、A.教科書の分析1:動物名と分類階級の不整合の調査、B.教科書の分析2:動物名と自然環境との不整合の調査(分布)、C.教科書の分析3:動物名と自然環境との不整合の調査(出現時期)、D.生徒へのアンケート調査:実体験と種認識、E.教員への聞き取り調査:指導上の問題点、F.分類学の知見や自然環境に対応した指導案の考案と評価、G.最新の研究を反映させた適切な種名の使用法の提案、H.多変量解析を用いた要因の解明、I.総合考察と社会への還元、の主に9項目である。
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研究実績の概要 |
「生活科」および「理科」の教科書中に掲載されている生物の種数や分類階級には違いがある。しかし、この違いについての定量的な研究は行われていない。そこで、本研究ではこれらの教科書に記載された生物の種分類について精査し、教科書間での掲載数の差異や、教科書での生物名と現在の分類階級との不整合について、実情を詳細に明らかにし、これらの差異や不整合を生じさせた分類学上の問題点や学習指導上の要因を明らかにすることを目的に分析を行った。 中学校の合計5出版社15冊から抽出された約4000件の生物名の集計結果、掲載件数は全て第1学年用教科書(以下、中1)が一番多くなり、次が中3、最後が中2となった。これは各学年で学習する内容の違いによるものであると考えられた。しかし、種数については、繰り返し数の違いにより、2つの出版社では中3が一番多くなった。 生物名の掲載件数は、小学校では一番多い教科書でも300件を超えなかったのに対して、中学校では600件を超える教科書があり、どの出版社でも小学校で一番多い小3より中1のほうが多かった。これは、巻頭や巻末等で多くの生物写真が紹介される近年の教科書の体裁によるものと考えられた。また、掲載件数を多い出版社と少ない出版社とで比べると、小学校ではどの学年でも2倍以内だったが、中学校では中1が約2倍、中2が約5倍、中3は約3倍となった。種数についても中2の差が出版社間で一番大きくなった。 また、いくつかの教科書において、種名あるいは亜種名から高次の分類群までが同列に扱われているページが見つかった。この扱われ方については、門間で異なる分類階級が同列に扱われるだけでなく、脊椎動物亜門の綱間でも異なる分類階級が同列に扱われていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目については、一部内容を変更して、電子メールによるアンケート調査と教科書の分析を中心に行った。その結果、教科書に掲載の生物の中には沖縄県では馴染みが薄く、実感がわかないものがあること、教科書に掲載されている生物が、その単元を習う時期にはシーズンが過ぎてしまい、使用することができないこと等が明らかになった。また、小学校の生活科の教科書において同一ページに挙げられている動物は、亜種、種、数百種を含む科、数千種を含む複数の科をまとめた呼称が用いられていることが明らかになった。 2年目については、現行の全ての小学校の生活科・理科の教科書について、掲載される生物名と分類階級名を分析した。その結果、「生活科」および「理科」で繰り返し同じ種名を用いる割合は、出版社間で約3倍までの間でばらつきがあった。「生活科」に関しては、いずれの出版社も下巻より上巻のほうが生物名の掲載件数や含まれる種数が多くなった。これは単元の内容に起因するものであると考えられる。一方、小学校の「理科」の生物名の掲載件数や種数の出版社間の差異に関しては、出版社間で一致しなかった。これは各学年の単元の違いでは説明できないことを示唆した。 3年目については、中学校の教科書を中心に分析し、小学校との比較を行った。合計5出版社15冊から抽出された約4000件の生物名の集計結果、掲載件数は全て中1が一番多くなり、次が中3、最後が中2となった。これは各学年で学習する内容の違いによるものであると考えられた。しかし、種数については、繰り返し数の違いにより、2つの出版社では中3が一番多くなった。中学校の教科書の分析では、生物名の掲載件数は、小学校では一番多い教科書でも300件を超えなかったのに対して、中学校では600件を超える教科書があり、どの出版社でも小学校で一番多い小3より中1のほうが多かった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、現在の小学校・中学校・高等学校の生活科や理科の教科書に記載された生物の種分類について精査し、教科書での生物名と現在の分類学との不整合(生物名が亜種名から科名まで同列に扱われている)、および教科書と各学校を取り巻く実際の自然環境との不整合(亜寒帯や亜熱帯に生息しない生物名がある、授業時期と実際の生物の出現時期が異なる)について、実情を明らかにする。そして、これら二つの不整合を生じさせた分類学上の問題点や学習指導上の要因を明らかにする。また、小学校・中学校・高等学校の現場のニーズに合わせ、尚且つ最新の研究成果も盛り込み、地域に対応した具体的な指導案の考案と評価を行う。特に、特定の分類群を一括りに扱うことは生物多様性の過小評価に繋がる可能性があるので、今後の教科書等での種名の使用法についても提言を纏める予定である。 小学校と中学校について主な分析が完了したので、次は高等学校の教科書でも同様な分析を行う予定である。
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