研究課題/領域番号 |
21K02430
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09040:教科教育学および初等中等教育学関連
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
内田 裕子 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (40305024)
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研究分担者 |
大岩 幸太郎 大分大学, 教育学部, 名誉教授 (90223726)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 造形的な見方・考え方 / 感情 / 関係性 / 美学 / 美術史 / 美的人間 / 倫理的人間 / 個性 / 性格 / キャラクター / 関係 / 想像力 |
研究開始時の研究の概要 |
知性だけでは捉えられない対象や事象を、身体を通して知性と感性を融合させながら捉えるとする「造形的な見方・考え方」は、{①学習指導要領に「感性」の定義が記されていないこと、②その感性と深く関わる「個性」の理解が困難であること、③「知性と感性を融合させる」ための教材や評価法が明確では無いこと}が障害となり、指導に携わる教員からは、絶えず不安や迷いの声が聞かれる。そこで本研究では、これまでの{感性、個性、形と色の学習プログラム}に関する研究成果を基に、上記の障害となる問題を解消し、教員が「造形的な見方・考え方」について充分な指導が出来る様になるための「学習プログラム」をWeb上で開発する。
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研究実績の概要 |
2022年度は「学習プログラム(指導編)」の基本設計のため,次の研究を行った。 1)鑑賞教育を理解するための「構造表」(試案)を,鑑賞の行為を{みる,しる,かんがえる,つくる,あそぶ}に分け,各行為を通して習得する{方法,内容,能力}に分けたマトリックスとして作成した。 2)美術教育における感情の捉え方の変遷を知るため,学習指導要領に現れた感情に関する用語一覧表を作成し,その分析から,嘗てはあった「情緒の安定」の記載が無くなり,当初は鑑賞活動にのみ記された「感性」の用語が表現活動にも用いられる様になると感性が知情意全てを含む意味で捉えられ,現在は感性を「造形的な見方・考え方」に必要な資質と見做す様になったが,この感性の意味の広がりによって感性の定義が曖昧になり「造形的な見方・考え方」の理解が困難になっている点を明らかにした。 3)近年注目される「デザイン思考」及び「アート思考」の用語の分析を通して{対象を良く知る「観察力」,対象を良い組み合わせにするための「美意識」,その組み合わせにより嘗ては無かった新しい事物を作り出す原動力となる「妄想力」,妄想力を発揮する際に邪魔になる「固定観念を打破する力」}の4種類が「造形的な見方・考え方」の要素である点を明らかにした。 4)美的人間関係を作る「倫理的人間」に必要な「他者への想像力」に支えられた「共通善」について検討し,「共通善」が「共通感覚」に通ずる「趣味判断」に基づく点を明らかにし,更に大学生が考える「美的人間関係」の調査から{キャラクターの影響はそのキャラクターに出会った年齢が関与すること,感性の感度は発達曲線の「リンパ系型」の様に次第に上昇して或る時期ピークに達した後は再び下降する性質を持つ可能性があること,大学生が漫画やアニメーションについては良く知る一方で映画・小説・戯曲・舞台作品等の知識は乏しいこと}を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画調書に記載した研究内容は概ね予定通り遂行しているが,2022年度の研究課題としていた「学習プログラム」(試作版)Webサイトの開発については「学習プログラム」に含められる内容が当初の予定よりも広がったため開発を控えている状況にある。広がった内容は主に鑑賞教育に関わり,それは,上記の構造表に挙げた各種の学問分野である{美術史学,図像学,美学,芸術学,哲学}に関する内容であり,各学問分野に特有の「見方・考え方」への理解を深め,更に,それを具体的に指導するための方法を検討する必要が生じたためである。 また「感情」の育成に関わり「情緒の安定」が図画工作科及び美術科の学習指導要領から削除された点とその理由の解明は行ったものの,自殺やいじめ,不登校等の問題が加速する現代においては,改めて造形美術教育が「情緒の安定」に寄与する方法を検討する必要があると考え,これらの研究を進める必要があると判断したためである。 今後,上記の観点から可能な限り調査を行い,図画工作科及び美術科の教員が「造形的な見方・考え方」を理解すると共に児童生徒が「造形的な見方・考え方」を習得するための指導法を検討する必要があると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は「学習プログラム」を完成させて「学習プログラム」公開Webサイトの運用・調査及び改善を行う。 そのため,これ迄収集した「表現」及び「鑑賞」の各教材を,「知性」と「感性」並びに「知性と感性を融合する」方法と内容の観点から分類する。次に「感情」の育成に関わる学習プログラムに含める代表的なキャラクター及びキャラクター同士の関係を整理し,更に「共通善」の観点から,それらの関係を検討する。加えて,カントの教育に関する遊戯論やチクセントミハイの「フロー理論」,或いはホイジンガの「ホモ・ルーデンス」等の観点や,米国を中心に実践されて来たArts-Integrated Curriculumの学習方法や,感情の育成の必要性を理解するためにWHOが作成した報告書「健康と幸福に寄与する芸術の役割に関する証拠」(ISBN-13:978-92-890-5455-3)等も参考に研究を進める。 なおGIGAスクール構想の実践結果から,今日,明らかになりつつあるWebサイト画面を通じた学習における理解に関わる問題の解消を目的に「学習プログラム」の冊子版の作成も目指す。
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