研究課題/領域番号 |
21K02451
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09040:教科教育学および初等中等教育学関連
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研究機関 | 京都橘大学 |
研究代表者 |
水山 光春 京都橘大学, 発達教育学部, 教授 (80303923)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | シティズンシップ教育 / 政治教育 / 品格教育 / 道徳教育 / メタ学習 / 当事者性 / 社会科教育 / 市民教育 / 市民性教育 / Community Involvement / 社会参加 |
研究開始時の研究の概要 |
今,日本では,社会の構成員教育としてのシティズンシップ教育が注目されているが,人生のどの段階で,どの程度の質と内容の教育を行えばよいかは漠然としている。加えて,政治教育と道徳教育という二大潮流の板挟みから,シティズンシップ教育に関心を寄せる学校教育関係者は困惑している。 この現状を打破するために,本研究では,1)シティズンシップ教育の中核概念である「社会との関わり」に着目し,国内外の調査を踏まえて,政治教育と道徳教育を統合する理論的枠組みを示す。2)「社会との関わり」を視点とし,子どもの発達段階を踏まえた授業モデルを開発・試行・評価する。以上を通して,新しいシティズンシップ教育像を示す。
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研究実績の概要 |
本研究の主たる目的は,1)シティズンシップ教育の中核概念である「社会との関わり」に着目して,政治教育と道徳教育を統合する理論的枠組みを検討し,2)英国や香港等,日本に先行する品格教育実践国・地域における品格教育と「社会との関わり」の関連を考察するとともに,3)「社会との関わり」を視点とし,子どもの発達段階を踏まえた授業モデルを開発・試行し,その有効性を検証することである。 その趣旨は,今,我が国において,社会の構成員教育としてのシティズンシップ教育が注目されているものの,人生のどの段階でどの程度の質と内容の教育を行えばよいかが漠然としており,加えて政治(的リテラシー)教育と道徳(的品格)教育というシティズンシップ教育の二大潮流の板挟みから,シティズンシップ教育に関心を寄せる日本の学校教育関係者,とりわけ義務教育の実践者が困惑している現状を改善することにある。 そのために本年度は,1)に関わっては,社会との関りとしての「当事者性」に着目し,先行研究の批判的分析に基づいて,論争問題を「論争問題の質」「子どもの立ち位置」「探究学習の方向性」の3つの観点から4つの段階で捉える学習フレームワークを作成した。2)に関わっては,英国Birmingham大学Jubilee CenterのCharacter Educationについて検討し,実践知としての「品格」が,政治指向のシティズンシップ教育と道徳指向のシティズンシップ教育をメタに包括する内容・方法概念と成りうることを明らかにした。3)に関わっては,1)で作成したフレームワークをもとに,価値判断研究会に属する3人(岡田泰孝・梅澤真一・粕谷昌良)の実践研究の特徴を分析するとともに,ウクライナ問題を事例として,学習フレームワークの4つの段階すべてを組み込んだ授業モデルを開発し,学会(社会系教科教育学会)において紙上発表した(オンライン)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究は,理論・開発・実践・評価の4つのステージを組み合わせて,研究期間の三年間を通して,次のように進めることとしていた。1)理論研究:国内外の調査を踏まえつつ,批判/公正や参加/責任等の価値や鍵概念をもとに,「社会との関わり」を捉えるシティズンシップ教育の基本フレームを作成する。2)開発研究:「授業構成のための作業フレーム」に基づいて,「無関心な市民」「消極的不参加志向の市民」を除く残る5つの市民像に対応する授業モデルを作成する。3) 実践研究:開発した教材,学習プログラムを試行,実践する。4) 評価研究:研究協力者の協力を得て,授業モデルを評価・改善し,発信する。 これまでに,1)の理論研究においては,「社会との関わり』を視点とした授業構成のための作業フレーム」における発達段階との関わりを仮説的に整理するとともに,社会との関りの具体的な姿について,「当事者性に着目して,論争問題の質」「子どもの立ち位置」「探究学習の方向性」の3つの観点から4つの段階で捉える学習フレームワークを作成した。 2)の開発研究においては,新型コロナウィルス感染症への対応を題材にして,民主主義を支える倫理としてのベンサム・ルール,パレート・ルール,ロールズ・ルール等についての学習者の理解度を問う調査を行い,論文にまとめるとともに,ウクライナ問題を事例として,当事者性を視点として論争問題を捉える学習フレームワークを組み込んだ授業モデルを示し,学会において紙上(オンライン)発表した。 以上,理論・開発研究においては,学習モデル作成に向けての予備的な作業を順調にほぼ終えたが,COVID-19感染防止対策のために海外調査を実施することができなかったこと,理論・開発研究を踏まえた3)の実践研究への着手が遅れていること,加えて予算も未消化(特に海外調査分)な部分があることから,(3)「やや遅れている」とした。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は,1)理論研究から2)開発研究,3)実践研究,4)評価研究へと段階的にゆるやかに移行していくことを目ざしている。 これまでの研究から,1)の理論研究については,社会との関わりに関して「批判/公正」と「参加/責任」の軸に発達段階を加えて7つのステージを設定した作業フレームワーク及び,社会との関りの具体的な姿について,「当事者性」に着目して,4つの段階を設定した学習フレームワークの2つの理論フレームワークを作成してきた。今後は,これらを一つに統合し,最終的には汎用性のある理論フレームワークを作成する必要がある。 次に,2)の開発研究においては,これまでに開発してきた民主主義を支える倫理と新型コロナウィルス感染症への対応を題材にした授業モデル,当事者性を視点に論争問題を捉える学習フレームワークを組み込んだウクライナ問題を題材とした授業モデルの,2つの授業モデル作成の過程で明らかとなった成果と課題を踏まえ,最終的な理論フレームワークに基づく第3の授業モデルを開発し,3)実践研究として実践し,データを収集する予定でいる。 加えて,4)の評価研究においては,授業実践の省察に基づく授業モデルの再構成を行うとともに,これまでの研究成果を集約し,学会等で発表する。併せて本研究の全体を総括し,評価する。
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