研究課題/領域番号 |
21K02452
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09040:教科教育学および初等中等教育学関連
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研究機関 | 大阪成蹊大学 |
研究代表者 |
羽野 ゆつ子 大阪成蹊大学, 教育学部, 教授 (50368437)
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研究分担者 |
井藤 元 東京理科大学, 教育支援機構, 教授 (20616263)
山崎 宣次 山梨県立大学, 人間福祉学部, 教授 (50622635)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | イノベーティブ教育 / 探究型授業 / 教員養成 / 威光模倣 / 心理的安全性 / 教職準備性 / オルタナティブ教育 / SEL(社会性と情動の学習) / 総合的な学習/探究の時間 / 熟達化 |
研究開始時の研究の概要 |
イノベーティブ教育(Innovative Practice,教科横断的な学びや批判的思考、創造的問題解決を進める教育、以下、IP)の初等・中等教育への普及は国際的政策課題である。本研究では、IPの実践準備を可能にする、具体的かつ教員養成に適用可能な方法を検討する。 1IPの実践につながる学習プログラムを現職熟達教師と「連携・協働」して開発・実践する。 2学習プログラムに参加した教職志望学生(以下、学生)の学習を縦断的にとらえる。 3学生の学習として、経験と省察に、熟達教師の威光模倣という関係論的な学習を加え、熟達教師のIP実践を模倣する学習が、学生の授業実践力と教職準備性に及ぼす影響を検証する。
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研究実績の概要 |
本研究では、イノベーティブ教育(Innovative Practice, 探究型の学習を進める教育、以下、IP)の実践準備に向けた教員養成プログラムを現職熟達教師と協働で開発・実践し、教職志望学生の現職熟達教師への威光模倣による学習過程を探る。それをふまえ、大学と学校現場の「連携・協働」の内実を実践レベルで検討し、IPの実践に向けた教員養成の創出を目指している。研究2年目として、第1に、1年目の「IP授業体験プログラム」に参加した教職志望学生を主な対象として、1年目に続き教職課程の学習状況調査を縦断的に行い、プログラム参加の効果を検証した。その結果、プログラム全3回参加の学生は、同学年の1回参加の学生に比べ、威光模倣による学習態度が見られたが、教職準備性と批判的思考態度の「熟慮」の自己評価が低下した。熟達教師の実践に威光を感じた学生は、加算モデルとは異なる成長モデルを示した。第2に、1年目の「IP授業体験」に続いて、同じ熟達教師から、「SEL(Social Emotional Learning)を基盤としたIPの授業づくり」を学ぶプログラムをオンラインで実施した。複数の大学生・院生がチームに分かれて共同でIP授業を構想し、高校生を対象に実践した。IP授業づくりにおいて授業者間の心理的安全性が重要で、SELがその基盤となることが示唆された。1年目のプログラムから継続参加した学生の変容は検証中である。第3に、シュタイナー教育などのオルタナティブ教育講演プログラムを新規に実践した。本研究の成果は、「省察と模倣による教師の学習」(日本教育心理学会第64回総会 学会企画シンポジウ4)、「SEL を基盤とした探究型授業実践力養成プログラムの実践と評価―授業に創発をもたらす教師の育成に向けて―」(『大阪成蹊大学紀要』, 第9号)など、学会発表3回、紀要論文1本(査読付)にまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【研究実績の概要】欄に示した通り、教職課程の学習状況に関する縦断調査から、IPの授業体験によって学生の教職準備性が下がるなど、加算モデルとは異なる教職志望学生の成長モデルが示された。この調査結果をふまえて、年間を通じて教職志望学生が「IPの授業づくり」を現職熟達教師からオンラインで学び、学生が開発した授業を高校生対象に対面で実践するプログラムを行なった。その結果、現職熟達教師に威光を感じている学生は、オンラインでも、SELを基盤として、他大学の学生とチームでIP授業を構想し、実践につなぐことが可能であることが示された。このように、コロナ禍の2年間で、現職教師への威光模倣による養成プログラムをオンラインで実施する基盤を整えることができた。 また、教員養成から現職教育まで、生涯にわたる教師の学習をテーマにした教育心理学会シンポジウムで研究内容の一部を報告した。この中で、教員養成にとどまらず、生涯学習を視野に入れ、教師の資質能力としてのコンピテンシーや「わざ」に関する研究とも結びつけて本研究を吟味することができた。 他方で、実践研究としては、オンライン実施の基盤確立に軸足を置く結果となり、IP授業の要となる「学習材の研究・構想力の育成プログラム」の開発が課題として残されている。 以上から、研究は順調に進んでいるが、課題も残されている点で、進捗状況は、おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
第1に、威光模倣による学習の縦断研究として、主として、1年目のプログラムに参加して教職準備性を下げた学生を対象に、2年目のプログラム参加を通した変化を検証し、教職志望学生の成長モデルを検討する。 第2に、一条校(伊那市立伊那小学校、きのくに子どもの村学園)でIP(体験をとおした探究学習)を実践している現職教師から、「学習材の研究・構想力」を学ぶプログラムを開発・実践する。2年目に実施したオルタナティブ教育講演会(シュタイナー学校やサドベリー・スクールなど)に対する参加者の関心をふまえて、一条校での実践に焦点を絞り、本研究2年目までに整備したオンラインでの実施方法をベースに、実践研究を遂行する。 第3に、教職課程における学習状況の縦断調査を行い、現職教師の実践の威光模倣による養成プログラムの効果と合わせて、IPの教職準備性の成長モデルを検証する。大学と学校現場の「連携・協働」による教員養成のあり方の提案を目指す。 第4に、教師のIP(探究型授業実践)の「わざ」と、その伝承(学生の威光模倣による学習)過程について、学生の学習内容やインタビューから追究してゆく。 2023年度は日本教育心理学会や日本教育情報学会、日本教師教育学会での研究発表と、大学紀要等への論文投稿を予定している。
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