研究課題/領域番号 |
21K02463
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09040:教科教育学および初等中等教育学関連
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研究機関 | 大阪教育大学 |
研究代表者 |
廣木 義久 大阪教育大学, その他, 副学長 (80273746)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 地層 / 地層断面図 / 地層モデル / 沿岸域 / 中学校 / 理科 / 第2分野 / 教科書 / 実験 / 第2分野 / 地層形成実験 / 学習 / 授業 |
研究開始時の研究の概要 |
中学校理科の教科書に掲載されている沿岸域の地層断面図を調査し,掲載されている沿岸域の地層断面図の妥当性を,地層形成に関する理論(堆積学理論・層序学理論)に照らし合わせて検証し,その問題点を明らかにするとともに,現行の中学校学習指導要領の学習内容と学問的に正しい地層形成理論との両面において整合した地層形成実験を開発するとともに,それを組み込んだ授業を開発し,開発した地層形成実験とそれを組み込んだ授業の有効性を実践により評価・検証する。
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研究実績の概要 |
昨年度(令和4年度)は学術的に妥当な沿岸域の地層断面図に描かれている地層の重なりに整合的な地層を形成させるための実験の開発を行った。一般的に,波浪が卓越した沿岸域における砕屑物は波浪によって生じる振動流あるいは振動流と一方向流が複合した複合流によって運搬・堆積される。そこで,本研究においては,直線型水路を用いた波浪をともなう流れの下における地層形成実験の開発を目指した。その結果,実験において形成された堆積体は沿岸域において形成される地層の特徴を示しており,中学校理科における沿岸域における地層形成実験として実施できる可能性のあることが明らかとなった。そこで本年度は,昨年度に開発した地層形成実験を組み込んだ地層に関する授業の開発を行った。実験には,S字状で最大傾斜角20度の斜面を設けた水路を用いて,波を発生させながら砂・泥を3回投入する実験を採用した。授業の開発においては,当該実験を組み込んだ授業を設計し,設計した授業を大阪教育大学附属天王寺中学校の1年生を対象に試行実践し,沿岸域における地層の重なり方に関する生徒の理解を調査した。授業実践の後,中学校理科教科書に掲載の沿岸域の地層断面図の分類図を提示し,正しいと考える地層断面図を回答してもらった。その結果,学術的に妥当な断面図の回答者率は低く,回答者率が最も高かったのは学術的に妥当でない地層断面図であった。このことから,本研究で開発した波を起こして行う実験のみでは沿岸域における地層の重なり方を正しく理解することは難しく,実験結果からいかにして沿岸域における地層の重なり方を理解させるか,その有効な手段を考える必要のあることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究目的は,昨年度開発した地層形成実験を組み込んだ中学校理科における地層の学習に適した授業を開発することであった。中学生が学術的に正しい沿岸域における地層の重なり方,沿岸域における地層の重なり方の規則性を理解できる授業の開発を目指した。そこで,地層形成実験を組み込んだ授業を設計し,中学1年生を対象に試行実践し,授業後に地層の重なり方(断面図)を正しく理解できているかどうかを検証した。その結果,学術的に妥当な断面図の回答者率は低く,実施した波を起こして行う実験のみでは沿岸域における地層の重なり方を理解することは難しく,実験結果から沿岸域における地層の重なり方を理解させるための有効な手段を考える必要があることが明らかとなった。 そこで,本研究の最終年度となる次年度は,波を起こして行う地層形成実験の後,どのような学習をすれば生徒が地層の重なり方を正しく理解できるようになるのか,その学習展開を検討する。次年度は,本年度試行した授業展開の中に,地層の重なり方を正しく理解させるための学習展開を組み込み,授業実践によりその妥当性を検証する。以上のように,本年度は,ほぼ当初の実施計画通り研究を遂行することができ,次年度における課題も明らかとなっていることから,現在までの進捗状況は「おおむね順調に進展している」と判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最終年度となる次年度は,波を起こして行う地層形成実験の後,どのような学習をすれば生徒が地層の重なり方を正しく理解できるようになるのか,その学習展開の内容を検討する。実験によって形成された地層は,陸側から,波状の内部構造を示すくさび状の砂体(海浜〜沿岸砂州相に相当),海側に傾斜するフォーセット状の構造を示す砂体(外浜相に相当),砂層と泥層の互層(漸移相に相当),および,泥層(陸棚相に相当)からなり,沿岸域における地層モデルに認められる構成要素が認められることから,沿岸域の地層形成を再現する地層形成実験となっている。しかしながら,実験では試料の投入が3回のみであるため,実験によって形成された堆積体の幅(水平方向の厚み)は小さく,細長い堆積体となっているために,生徒は実験結果と学術的に正しい地層断面図とを類似したものと捉えるのが難しかったものと考えられる。したがって,実験結果をもとに,実験後,試料を投入し続け,堆積体の幅が大きくなったときに形成される地層断面図を推定させるような作業を授業に組み込むことが有効であると考えている。次年度,そのような作業を授業に組み込み,本年度実践した波を起こして行う地層形成実験と試料を投入し続けたときに形成される地層断面図を推定させるような作業をさせたときに,生徒が学術的に妥当な地層断面図を理解できるのかどうかを検証し,本研究の目的,「現行の学習指導要領の学習内容と学術的に正しい地層形成理論の両面において合致した地層形成実験とそれを組み込んだ授業を開発する」ことを達成する。
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