研究課題/領域番号 |
21K02480
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09040:教科教育学および初等中等教育学関連
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
林 慶一 甲南大学, 理工学部, 教授 (10340902)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 日本列島の成り立ち / 地域の自然景観 / プレート運動 / 広域応力場 / 南西諸島 / 西南日本海 / 前弧スリバー / 教育用の地史 / 地形3Dモデルの作成 / 地質図のプロジェクションマッピング / プレートの運動と応力場 / 自然景観の成り立ち / プレート運動の応力場 / 日本列島の区分 / 中等教育 / 実験教材および資料教材の開発 |
研究開始時の研究の概要 |
科学の世界では日本列島の大地形の成り立ちがプレート運動に基づいて説明できるようになりつつあり,この新しい見方に基づいて,中等教育における日本列島の形成史や地域の自然景観の成り立ちの教育を転換する。そのため,日本列島を同じ傾向の力を受けている範囲を単位として区分し直すことを提案し,地域ごとの特徴的な力が実際の地形・地質にどのように現れているかを野外調査により明確にする。そして,その関係を理解するためのモデル実験装置を,3Dプリンタやプロジェクションマッピングといった新技術を駆使して開発するとともに,地域の自然景観の成り立ちをダイナミックに理解できるように,教育用の地史の資料教材を考案する。
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研究実績の概要 |
日本列島の形成史や地域の自然景観の成り立ちの学習内容や探究方法を,日本周辺のプレートの運動が作り出す広域応力場の視点を基軸にしてアップデートすることが本研究の目的である。 本年度は以下の3つの成果が得られた。 ①南西諸島の琉球弧の形成と広域応力場について文献調査と沖縄本島および久米島での野外調査を行った。北海道西部から九州北部までの列島の形成と応力場の関係との対比を試みた結果,沖縄トラフが形成されて大陸から分離した時期については1.7Maで概ね一致するものの,その水平変位量ははるかに小さい一方で,垂直変位量については現在からは想像できない高山を持つ巨大な島が形成されたことなどがわかった。 ②フォッサマグナと中央構造線が交わる複雑な応力場で形成された火山である浅間山について,火山形成史と災害についての資料研究と野外調査による確認を行った。自然景観の中でも火山は成り立ちの歴史が若く,他の地表現象と異なり大規模かつ瞬間的な活動による変化で特徴付けられ,立体地形・地質模型を製作することなどで有効に教材化できる見通しが立った。 ③西南日本が大陸から裂けて時計回りに回転してできた日本海の南西側半分の地域について,文献調査と京丹後市から鳥取市にかけての山陰海岸での調査を行った。前年度に行った日本海の北東半分の形成過程が太平洋プレートのロールバックによる強力な伸張応力場の発生により急速に拡大・深海化したのに対して,日本海の南西半分では大陸からの分離の際の断裂や深海化の証拠が乏しく,大陸地殻全体が引き延ばされているらしいことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
西南日本海と西南日本日本海側の広域応力場と自然景観の関係については,山陰海岸における調査で,前年の東北日本海と東北日本日本海側の研究との対比で,研究は順調に進んだ。しかし,日本海の形成とそれに伴う東西の二つの日本列島の形成過程において。山陰海岸に残された西日本の時計回り回転は,東日本の反時計回り回転に対して弱い応力場で特徴付けられることを解明したものの,一方でこれを西南日本海全体に拡張するためには日本海の中にある隠岐や対馬についてのデータを収集する必要が浮かび上がり,更なる研究を要することになった。この増加分により研究は予定より少し遅れることになった。 また,南西諸島と東シナ海の広域応力場と自然景観の関係については,日本海とは異なるメカニズムであることが明らかになってきたことで,本年度の沖縄本島とその西方の久米島のみの調査では有力な仮説をつくることはできたものの,この沖縄トラフー琉球弧の形成メカニズムを概要レベルでも把握することは難しく,より広範囲に台湾側と鹿児島県の諸島を調査する必要が出てきた.このため,本年度中にこの地域についての研究を完了する予定は,大きく遅れるという結果になった。また,途中の成果を学会および学術して公表するすることを続けてきたが,本年度に限ってはできなかった そこで,これら2つについての調査を改めて計画しようとしたが,筆者が6月に癌であることが判明し9月に入院手術をすという状況になり,11月には配偶者にも癌が発見されるという,個人的な想定外の障害が発生して実施が困難となった。筆者の癌は既に根治しており,今後計画を実行すること支障はないが,進捗状況としてはかなり遅れることになってしまった。
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今後の研究の推進方策 |
日本列島の大地形のうち,未調査地域と本年度の研究で追加調査を行わなけらばならなくなった地域について引き続き調査を行う。具体的には,東北日本・西日本とは別の島弧-海溝系を形成する,南西諸島のフィリピン海プレートが琉球海溝でユーラシアプレートの下に沈み込む応力場と,日本海の南西部の中央に位置する隠岐と対馬,また太平洋プレートが伊豆-小笠原海溝で海溝軸にほぼ直角にフィリピン海プレートの下に沈み込む地方の応力場を調査する。またに西日本と南西諸島の境界部に当たり,複雑な伸張の応力場となっている九州,千島弧と東北日本の境界域で回転の応力場となっているように見える津軽海峡周辺部についても調査を行う。 これまでの研究により,地理的により密度の高い調査を行う必要が明らかになってきたため,研究期間を一年延長することも視野に入れて無理のない計画を立てることとする。
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