研究課題
基盤研究(C)
本研究では、保育士・小学校教員志望学生に生物多様性の保全に貢献するための知識の習得と価値観・態度の形成を促すプログラムを開発する。研究遂行に当たっては、ドイツおよびアジア諸国の教育研究者との情報交流を行い、国際的にも通用するプログラムの範例の提示を目指す。本研究における価値観・態度の検討は「人間が自然とどう向き合うか」を考えることでもあり、その成果は、地球温暖化抑制や新型コロナウイルス等の新興感染症への対応など他の世界規模課題に関する教育プログラムを開発する際、有用な資料となり得る。
本研究の目的は、保育士、幼稚園・小学校教員志望学生に生物多様性の保全に貢献するための知識の習得と価値観・態度の形成を促すプログラムを開発することである。研究2年目の2022年度は、生物多様性の保全に関する小学5年生対象の授業プログラムを参観した。広島県江田島市で市・市教育委員会・大柿自然環境体験学習交流館(以下、さとうみ科学館と表記)・市内6小学校が連携・協力して行っている海辺のオリエンテーリング「マリン・アドベンチャー」がそれで、十数年にわたって継続実施されている。この活動では7つのチェックポイントが設定されており、児童は生物の採集後、その生物がそこにいる理由や同目の生物の形態が異なる理由、分布域が決まっている理由を考えながら、生物の多様性,その生存戦略,環境と生物のつながり等に気付くように編成されていた。海辺だけでなく、山や川,市街地におけるプログラム開発を行う際にも有益な先行実践例であり、本研究のプログラム開発に当たって極めて有益な情報を得た。また、開始当初の主目的ではなかった「教師の能力向上」が事前準備と当日を通して実現されており、児童のみならず教員にも生物多様性の保全に関する知識の習得と価値観・態度の形成を促している方略を本研究におけるプログラム開発に転用する予定である。上述した調査結果のうち、児童に関する教育効果は2022年度の日本理科教育学会全国大会にて発表した。教員の能力向上に関しては2023年度にヨーロッパ科学教育学会で発表予定である。この調査結果とESDを推進するために必要とされる指導者の資質・能力・生物多様性の保全のために必要な知識、価値観、態度、生物多様性の現状についての文献調査の結果を踏まえて、2023年度はプログラムを開発・実施する。実施後は、その教育効果について検討し、プログラムを修正することにしている。
3: やや遅れている
当初の予定通り2022年5月に小学生を対象とした生物多様性保全に関するプログラム実施を参観し、本研究におけるプログラム開発のための情報収集を行うことができた。またこのプログラムのコーディネーターへのインタビューを通じて、指導者の資質・能力を向上させるためのアイデアを得た。一方、プログラムは構想段階であり、実施・評価には至っていない。2023年度に実施・評価を行う予定である。
2022年度と同様に、ESDを推進するために必要とされる指導者の資質・能力・生物多様性の保全のために必要な知識、価値観、態度、生物多様性の現状についての文献調査を継続する。加えて、ヴァーチャルリアリティ教材を用いた授業実践、大学生を対象とした生物多様性保全に関する授業実践についても調査を行う。以上の調査結果と2021年度に実施した生物多様性保全に関する大学生の実態調査結果を踏まえて、プログラムを開発・実施する。プログラム評価は、授業中・後の学生の反応を分析して研究メンバーで行う。加えて本年度以降に学会発表を行い、他の研究者からの評価も受ける。これらの評価結果はプログラムの修正に活用する。なお、開発するプログラムは、SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」および目標15「陸の豊かさも守ろう」関連の2つを予定している。
すべて 2023 2022 2021
すべて 雑誌論文 (13件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 1件)
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