研究課題/領域番号 |
21K02518
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09040:教科教育学および初等中等教育学関連
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
大島 賢一 信州大学, 学術研究院教育学系, 助教 (90645615)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 久保田俊彦(島木赤彦) / 写生論 / 自由画教育運動 / 図画教育 / 長野県 / 写生教育 / 長野県内小学校聯合教科研究会 / 大正自由教育 / 臨画教育 / 美術教育史 / 自然観 / 近代教育史 / 美術敎育 / 自然 / 自由画敎育 / 白樺 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、明治期から大正期の自由画教育運動勃興期までの長野県の美術教育言説、理論、指導における「自然」の捉え方の変遷について自然科学教育や綴り方教育、長野師範学校附属学校の自由教育の実践、白樺教師の活動など周辺の事象と関わりながら検討すること通して、美術教育の歴史の中で「自然を描くこと」がどのような教育的効果、意義を持つものとして捉えられてきたのかということの一端を明らかにしようとするものである。
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研究実績の概要 |
本研究は、明治期から大正期にかけての長野県の美術教育を対象とし、自然を描く(描かせる)教育思想がどのように芽生え、どのような実践が行われてきたのかを明らかにすることで、美術教育における「自然を描くこと」の教育的意義がどのように形成されたのかということの一端を明らかにすることを目的とする。 2023年度は、長野県内の教育者たちが山本鼎の自由画教育論にどのように反応したのかを検討した。自由画教育運動は、従来の臨画による図画教育を否定し、自然を対象に描く美術教育を奨励するものであり、山本が1918年に長野県小縣郡神川小学校で行った「児童自由画の奨励」という講演を契機に、長野県から全国規模で展開したことは広く知られている。しかし、各地域における具体的な受容や展開については、現在も十分に明らかにされているとはいえず、研究の途上にある。それは、発信地である長野県においても同様であると言える。 2022年度までの調査で、山本が登場する以前の長野県の美術教育の言説には、すでに重要な論点として写生教育論が存在していたことが確認された。その中で、長野県の教育者たちが山本の自由画教育論をどのように受け止めたのかを明らかにした。 特に、1918年当時『信濃教育』の編集主任を務めていたアララギ派歌人の久保田俊彦(島木赤彦)に注目した。久保田は、一定程度山本の自由画教育論に共感を示しながらも、その実、彼の芸術教育論は写生論や鍛錬道といった自身の歌人としての芸術論を前提としていた独自のものであったことが確認された。当時の長野県における教育言説のオピニオンリーダーであり、また、歌人として県内の教育者たちに多くの弟子を持つ久保田の影響力は大きなものであったと考えられる。 この調査研究によって、長野県の図画教育における写生教育論の源流の一つに、アララギ派の作歌理論である写生主義が存在することが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究対象として挙げていた白樺派教師、島木赤彦、新定画帖受容といった事象について、それぞれ、資料収集、研究調査を進めることができた。 特に島木赤彦(久保田俊彦)について、その芸術教育論については、論文として公表しており、着実な成果を挙げている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、研究テーマに関わる資料収集に努めるとともに、ここまで収集した諸資料の分析・検討を行う。ここまでの研究によって、長野県の図画教育言説においても、教育的図画への対応及び、自由画教育への反応が、写生教育言説の形成に大きな影響を与えたことが明らかとなってきたので、2024年度については特に次のような調査研究を予定している。 1)、長野県における新定画帖に代表される教育的図画の受容と、それへの反応について。本件については、ここまでの調査過程において資料収集を進めてきたが、特に各地域教育団体における新定画帖研究に関わる資料について、未確認のものがある。それらの収集、確認をする。 2)、さまざまな美術思想の流入による、自然対象を描くという美術教育感の形成にについての検討を引き続き行う。具体的には、白樺派教師等による後期印象派の受容と解釈、山本鼎以降の写生教育の議論の変化などが、いまだ十分に解明されておらず、本年度重点的に検討を行う。 また、2024年度は最終研究年度であるため、それら成果のまとめと発表を行う。
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