研究課題/領域番号 |
21K02548
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09040:教科教育学および初等中等教育学関連
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研究機関 | 兵庫教育大学 |
研究代表者 |
勝見 健史 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 教授 (20411100)
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研究分担者 |
山本 智一 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 教授 (70584572)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 国語科単元学習 / 言語運用 / 主体的学習 / 自律 / アーギュメント |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、近年、科学教育において注目されているアーギュメントを、国語科がめざす能動的な課題解決の学習(国語科単元学習)における言語運用プロセスの協働的解決の学習方略として導入することによって、学習者が自らの言語運用の質を精緻に捉え、自律的に学習を進めていくことができる協働的な学習プログラムを開発するものである。学習者の主体的学習においては、評価論は学習論に内包されて精緻化されるべきである。本研究では、評価論を指導論との関係で論じるのではなく、評価を学習者自身が自らの学びを自己調整する学習活動の一部として捉え、自律性を発揮する学習論に評価論を包接させることを試みる。
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研究実績の概要 |
本研究は、近年、科学教育において注目されているアーギュメントを、国語科がめざす能動的な課題解決の学習(国語科単元学習)における言語運用プロセスの協働的解決の学習方略として導入することによって、学習者が自らの言語運用の質を精緻に捉え、自律的に学習を進めていくことができる協働的な学習プログラムを開発するものである。 当該年度においては、第一に、前年度の基礎的研究に基づき、アーギュメント理論を理科教育に限らず各教科教育において活用する場合の特質につい検討した。特に、本研究で対象とする国語科においては、例えば読解授業の場合はwarrantは読者の解釈であるが故に、理科や数学科の「説明ツール」とは異なり、アーギュメントが不確定な状況下での「説得ツール」として働くことを明らかにした。この成果は、アーギュメントを国語科の特質に対応して位置づけていくための大きな手がかりとなるものである。 第二に、実践協力校の授業者と、当該学校における国語科の主体的学習の具現化に向けた実態および課題の所在を共有しながら、自律的言語運用を促進する単元組織の方略と言語運用の改善に働く論理的思考のあり方を検討した。そこでは、特に、単元の言語運用プロセスにおけるアーギュメントの内容と配置の仕方を協議し、アーギュメントを児童の自律的な学習に還流させるためには、「いつ」「誰が」アーギュメントを行い、さらにその結果を「どのように」学習に還流させるのかについて明確化した。 第三に、自律的言語運用を実現するにあたっての教師の関与について検討を行った。この点について、当該年度に実践協力学校において試行単元を実施し、アーギュメントを児童側の主体的な学習ツールとするための成果と課題を抽出することによって、教師の役割と関与の内実を抽出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、近年、科学教育において注目されているアーギュメントを、現在の国語科がめざす学習者主体の能動的な言語運用プロセスに協働的な解決方略として導入することによって、学習者が自らの言語運用の質を精緻に捉え、自律的に学習を進めていくことができる学習プログラムを開発することが目的である。 当該年度においては、言語運用プロセスにおけるアーギュメントを活かした思考活動の内容と配置、教師の関与の方法について実践協力校の授業者と協議を重ね、具体的単元による試行実践を通して成果と課題を抽出することができた。 しかしながら一方で、実践協力学校はコロナ禍の状況下において、徐々に緩和はされてきてはいるものの、感染対策から対話的活動をできるだけ控えることが留意されており、協働的学習プロムラム策定プロセスにおける具体的な試行実践と検証、それに伴う対話的活動を内包させる単元の特定と実施の見通しが流動的な状況であった。 特に、主体的学習における児童同士の協働的な解決方略を導入したプログラム開発を目指す本研究を進める上で、一つの単元による実践化だけではなく、長期間にわたるアーギュメントの実施による結果の省察が必要である。コロナ禍による学校教育現場への長期間にわたる参与観察の回避や、児童の積極的な対話活動の制限は、アーギュメントを内包する実践の反復とデータの蓄積を停滞させており、研究進展を遅らせている。
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今後の研究の推進方策 |
3年目の2023年度は、アーギュメントを位置づけた実効性のある協働的な学習プログラムの構築を図っていく。 そのために、第一に、実践協力学校の授業者や同学年・異学年の教師集団との協議を進め、言語運用プロセスにおけるアーギュメントを活かした思考活動の内容と配置、教師の関与の方法について、カリキュラムを視野に入れた検討と修正を重ね、公立小学校の一般的な学校教育現場で実現可能な学習プログラムとしての構築を行う。また、具体的実践化において参照できるように、ワークシートや教師の働きかけのポイント等を示すことによって、実際の学校教育現場における実現可能性を高めるものとする。 第二に、最終的に本研究は、アーギュメントを、教師側が与える方略から、自律的学習における学習者自身のための学習者側の方略として機能させることを目指すものである。この点について、本研究の内容を、児童の自律性を重視する「学習のための評価(assessment for learning)」さらには「学習としての評価(assessment as learning)」の評価論に関わる文献執筆と連動させることによって、本研究の意義について広く啓発し、学習論と評価論との関係性を問い直す契機となることを期待するものである。
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