研究課題/領域番号 |
21K02629
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09050:高等教育学関連
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
中島 英博 立命館大学, 教育開発推進機構, 教授 (20345862)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 組織文化 / 組織学習 / 大学改革 / 高等教育マネジメント |
研究開始時の研究の概要 |
2004年の国立大学法人化以降、法令改正や政策等を通じて国公私立大学のガバナンス改革が進められてきたが、組織的な教育改善等の成果につながっているとは言い難い。ガバナンス改革を諸制度の変更ととらえ、教職員が取り組む教育研究活動・運営支援活動の解釈や意味づけを考慮せず、組織研究の知見を活用してこなかったためである。本研究は、現場の教職員が日常的に使う言語、日常的に接するルール、他の教職員との相互作用に注目することで、組織の成果につながる組織変革を進めるための対案を提示することを目的とする。
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研究実績の概要 |
2021年までの研究では、米国の州立大学4大学、国内の国立大学2大学で、大学組織内の複数のロジックの葛藤や共存に関する調査を行った。一連の調査では、2000年以降の外部資金による教育改革は、大学組織に市場ロジックの浸透をもたらしたが、認知のパターンが完全に市場ロジックによって置き換えられたわけではなく、教職員間の葛藤や調整によって、複数のロジックを並存させる実践を明らかにした。 この調査の過程で、個々の教職員は優秀であるにもかかわらず、業務の過程でその優秀さを隠す行動があることを見出し、2022年度の研究ではそうした行動を促進する組織内の文化とルーチンを明らかにする調査に取り組んだ。本研究ではOrganizational stupidity(Alvesson & Spicer 2012)の枠組みを援用し、国内の国立大学を事例として、職場でのOrganizational stupidityの存在を探索する調査を行った。 一連の調査では大きく2つの点が明らかとなった。第1に、組織内で上位の階層に付く教職員ほど時間の圧力を感じており、その圧力が省察や批判的思考を抑制する可能性がある。その圧力は上位職者との会議や作業など、接触機会の多い教職員ほど大きくなる。第2に、一般教職員や中間管理職の教職員は、上位職者による職務上の指示の内容や方法が変わると、組織内での有能感や快適さが変化する。具体的には、上位職者が持つ政策的な期待を実現したいという意思に触れ、それを多くの業務量を抱える中で無批判に受け入れる経験を重ねると、組織における重要な業務に関与している認識を通して、有能感や快適さを感じるようになる。一方、非公式組織や学外ネットーワークを持つ人ほど省察の機会が増え、そのことが上位職者からの影響を受けにくくしている。 これらの成果は学会で報告すると共に、一部は論文として公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度の研究代表者の異動に伴い、エフォートの偏りが生じたが、2022年度は質的データを得るための面接調査を計画通りに行うことができた。また、成果の一部は学会で報告すると共に、論文としてまとめて公表した。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度の調査で、あらたにOrganizational stupidityあるいはFunctional stupidityの枠組みに注目した調査を行い、新たな研究課題が析出された。これらは組織のルーチンと文化の両面からのアプローチが必要であり、従来、西欧諸国の文化を前提とした研究のみがなされてきた。一方で、2022年度の調査では、日本や東アジアに特有の文化を考慮する必要性が顕在化し、従来の研究と比較しながら新たな知見につながる見通しが得られた。今後は、当初計画していた個別組織の質的調査を進めると同時に、組織やその構成員が持つ国家や民族の文化を考慮した分析を行い、学会報告や論文として国外の研究者との交流を進める。
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