研究課題/領域番号 |
21K02630
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09050:高等教育学関連
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
林 篤裕 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70189637)
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研究分担者 |
坂本 尚志 京都薬科大学, 薬学部, 准教授 (60635142)
児玉 忠 宮城教育大学, 教育学部, 教授 (50332490)
鈴木 慶子 長崎大学, 教育学部, 教授 (40264189)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 国語教育 / 哲学教育 / フランス / 小論文試験 / 哲学小論文 / ディセルタシオン / 型 |
研究開始時の研究の概要 |
現在、日本で進められている教育改革において、児童・生徒・学生たちに求められる能力の筆頭に論理的記述力が挙げられており、これらの根幹を成すものとして国語力の重要性に注目が集まっている。しかし、国語力と論理的記述力とは必ずしも一致せず、教科を限定して育成するものではない。一方、論理的記述力の育成で世界的に定評があるのはフランスにおける「哲学」教育である。 そこで、本研究では教科国語科に限定せずに教科の枠を超えた領域の研究者グループを組織して、フランスにおける「哲学」教育を参照しつつ、大学入学者に対して論理的記述力を涵養する教育方策を確立するための基礎研究を行う。
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研究実績の概要 |
本研究課題に参加している研究者の研究テーマは、教科国語教育、哲学、高等教育論、統計科学、教育工学等と多領域にわたっており、それぞれの分野で活躍してきた。幾つかの偶然が重なって本プロジェクトに参画しており、このことから特定の領域に偏ることなく広い視点から一つの課題に取り組み議論することができ、この点も本研究課題のユニークな点である。 第2年度である当該年は、初年度の研究成果に基づき、各メンバーが本課題のテーマである「論理的記述力」に関連する考えを相互に紹介しあい、議論・意見交換を行った。具体的には、COVID-19下であったことからWeb会議システムとWebサーバーを用いた情報共有システムを有機的に利用したミーティングを開催し、合計4回の研究会を行った。 その結果「論理的記述力」を涵養するためには、所与の課題に対する思考を巡らせたり、文章にまとめたりするための論理展開の「型」が存在し、それを習得することが有力な手段となることが判った。また、この「型」を習得するには、それらを形作るための基礎となる知識や情報が必要となり、論理を構成することのベースには、単なる「知っている」という知識ではなく、その知識の背景になる生成過程を含めた「正確な事実としての知識」が必要となることも解った。一方で「論理的記述力」の習得を実践するために身に付けておくべきスキルは多く、しかも輻輳的に関連して存在し、一朝一夕に実践できるものではないことも類推された。これらを国語科の授業の中で涵養させることにも計画立てた工夫が要ることが判ってきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
参画研究者の各専門領域から類推される「論理的記述力」に対する課題洗い出しや捉え方・アイディアを相互に理解し合うという活動は概ね達成されたと考えている。しかし、本テーマへの関連事項が輻輳的に絡み合っており、これらをどのように紐解き、もしくは、収斂させれば良いかの目処が立てられずにいる状態となっている。とは言え、「論理的記述力」には「型の習得」が一つの有力な方策との共通認識は獲得できた。 また、当初予定していた渡仏しての調査はCOVID-19の影響で順延としたため、その現地調査も実施できずじまいであった。代わりにフランスの高校で実際に哲学教育を担当している教員に対して、Web会議システムを用いたインタビュー調査を行い、フランスにおいて哲学教育がどのように根付いており、論理的思考のバックボーンとして機能しているかの一端には触れることができ、本研究の遂行に役立った。
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今後の研究の推進方策 |
参画研究者の研究領域から観た「論理的記述力」について、一定程度相互に理解を深めることができたので、これらの成果を土台として、次年度はより具体的な涵養方策を検討・模索することとする。 上述からも解る通り、フランスの高等学校において実施されているディセルタシオンの作成技法学習は本研究課題の有望な参考事例となると考えられるので、順延とした現地調査を是非とも実現させる予定である。この調査は課題申請時から組み入れていたものであり予算措置も既にされているが、2020年年初から全世界的に拡大しはじめたCOVID-19の感染状況は予断を許さず、訪問立案に苦慮してきた。幸い日本国内においても感染法上の類型が5類に変更となり、海外との往来も元に戻りつつあるので、感染状況等を勘案しながら慎重にその実施時期を探り、研究を進展させる予定である。 他にも思考の「型」の有用性も解ったので、その活用法や修得する方策を検討して教育現場に提言できるように検討する。
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