研究課題/領域番号 |
21K02678
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09060:特別支援教育関連
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
菊地 一文 弘前大学, 教育学部, 教授 (80509141)
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研究分担者 |
杉中 拓央 東北文教大学, 人間科学部, 講師 (70755917)
藤川 雅人 名寄市立大学, 保健福祉学部, 准教授 (90845538)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | キャリア・パスポート / 知的障害教育 / キャリア発達 / 個別の教育支援計画 / 本人参画 / 対話 / 目標設定 / 振り返り |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は,特別支援学校高等部に在籍する知的障害のある生徒を対象とした対話場面の分析等を通して,①知的障害のある生徒の振り返りと対話を促進させるツールの開発,②対話場面における知的障害のある生徒のキャリア発達を促進する要因の検討,③これらを踏まえたキャリア・パスポートの活用及び個別の教育支援計画・個別の指導計画等への本人参画に向けた実践モデル提案を行うことを目的としている。 本研究では,キャリア発達の契機と捉えられるキーワードや項目を抽出するとともに,対話における有効化な働きかけのポイントを解明し,対話場面における質問項目や具体的な対応例等の具体的方法を確立していく。
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研究実績の概要 |
本年度は主に以下の2点について取り組みを進めた。 1点目は「知的障害特別支援学校におけるキャリア・パスポート(以下、CP)の作成と活用に関する実態調査」の実施である。本調査は、全国特別支援学校知的障害教育校長会(以下、全知長)加盟校663校(分校・分教室等を含む)のうち364校から回収し54.9%の回収率であった。そのうち有効回答数は364校(分校・分教室等を含む)650名であった。調査結果について単純集計した報告書を作成し、全知長加盟校に還元した。また、「CPの作成状況」「所管分掌」「個別の諸計画との関連」「活用場面」「課題」等の調査結果の一部について実践研究誌等をとおして報告した。また、本調査で得たデータについて複数の視点から分析した。なお、本調査をとおして、CPの活用による特徴的な実践知見についても把握することができた。 2点目は実践研究の推進である。研究協力校を1校追加し、PAC分析やPATH、TEM図等を適用したホームルーム活動等における対話を重視した実践を積み重ねた。これらのツールの活用においては、知的障害の特性を踏まえた工夫・改善を図り、試行をとおして一定の効果が認められた。また、他の協力校3校においては、学習評価の効果的活用による生徒のキャリア発達の把握の試行のほか、対教員、生徒同士等の集団対話をとおした生徒のキャリア発達の促進を意図した実践を継続した。これらの実践研究をとおして、キャリア発達の促進に向けた対話における「可視化」「具体化」「共有化」「段階化」の4点のポイントが把握できた。今後、実践の対象の拡大と定量的・定性的評価によって、その妥当性等について検証していく予定である。 以上の成果の一部については、日本特殊教育学会第60回大会の自主シンポジウム等をとおして報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
調査研究の結果の論文化については、複数の視点からの分析を踏まえ、構成を検討した。そのうちの一部については執筆し、投稿中であるが、調査実施時期の変更の影響によって、遅れが生じている状況にある。 また、これまでコロナ禍による研究協力校の訪問等に制約が生じていたため、オンラインによる授業実践の共有や研究協議のための体制を整備し、研究を進めてきた。今年度は一定のオンラインのノウハウが確立されてきたことと、一部対面での実践検証等が実施できたことにより、前年度の遅れを若干取り戻すことができた。 実践研究については、PAC分析やPATH、TEM図の活用等について、対象とする知的障害のある生徒の特性を踏まえた工夫・改善を図り、研究協力校1校において試行した。試行をとおして得た対話場面のデータについて定性的に分析するとともに、カテゴリー別に定量化するなどして分析した結果、「共同化」による効果が推察された。しかしながら、対話場面の分析については、学校現場でかかるコストを踏まえて、教育活動に還元できるような、より効率的な方法を検討する必要性がある。 以上の制約等から、限られた期間で得られた限定的な知見ではあったものの、CP活用に向けた実践モデル提案のための研修プログラム案について検討し、次年度の実施に向けて現在作業を進めているところである。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、知的障害特別支援学校におけるCPの作成と活用に関する現状と課題を把握するとともに、その推進に資する実践知見を得ることができた。これらの知見を踏まえ、現在研修プログラム案について検討し、準備を進めているところである。次年度9月には、研究分担者及び研究協力者が一同に会し、特別支援学校教員を対象とした「CP活用セミナー」を開催する予定であり、研究知見の報告及びCPの活用に向けたプログラムを実施する予定である。また、本セミナー参加者による評価を踏まえ、各プログラムの効果検証を進める予定である。 また、今年度研究協力校1校において試行した目標設定と振り返り場面におけるPAC分析やPATH、TEM図の活用等について、他の研究協力校においても一部試行を進め、事例を蓄積していく。また、これらの実践研究をとおした対話についても定量的・定性的分析を進めるなどして、効果検証を進めるとともに、対話における教員による支援のポイント等について明らかにしていく予定である。 以上の取組を進めることにより、本研究の総括として、「特別支援教育におけるキャリア・パスポート活用ガイドブック」(仮称)としてまとめ、書籍として刊行する予定である。
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