研究課題/領域番号 |
21K02761
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09070:教育工学関連
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研究機関 | 九州産業大学 |
研究代表者 |
佐藤 慈 九州産業大学, 芸術学部, 教授 (90412460)
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研究分担者 |
青木 幹太 九州産業大学, 芸術学部, 教授 (70159276)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | STEAM教育 / デジタルファブリケーション / 伝統工芸品 / 3Dプリンター / 博多張子 / 教科横断的な教育 / 伝統工芸 |
研究開始時の研究の概要 |
STEAM教育とは、理数系教育に芸術や教養を加えた教科横断的な教育の枠組みであり、Society5.0に向けた人材育成を急務とする我が国において、初等中等教育への導入が課題となっている。また一方で、国際社会で活躍する人材の育成に向けて、郷土の伝統や文化に関する教育の充実も重要である。 本研究は、我が国の初等中等教育を念頭に置き、デジタルファブリケーションを活用した博多張子の制作手法を考案することにより、郷土の伝統や文化に関する教育とSTEAM教育を統合的に実施できる教育コンテンツの開発を目的とする。
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研究実績の概要 |
2022年度は、福岡市立東月隈小学校5年生の「総合的な学習の時間」において、3クラス、計76名を対象として、福岡県の伝統工芸品である博多張子のお面を、3DCADソフトウェアと3Dプリンターを使って制作する授業を実施した。伝統的な博多張子のデザインに触れる機会を子どもたちに提供するために、博多張子の代表的なお面として知られるひょっとこをモチーフとして選定した。また、工芸品をデジタル化することによって、データを保存および活用できることを学んでもらうために、既存の伝統的なひょっとこの型を3Dスキャナーでデータ化したものをモデリングのベースとして用いることにした。このベース上に、前もって準備された目と口のパーツを、移動、拡大縮小、回転させながら自由に配置してもらうことで、オリジナルのひょっとこの型をデザインできるようにした。また、算数の学びを応用させるために、3Dプリンタ―で出力可能な寸法を数値で指定し、その範囲内でモデリングさせた。モデリングは、福岡市が小学校に導入したChromebookを用いて行った。3DCADソフトウェアには、Webブラウザで操作ができる無料のTINKERCADを使用した。 授業の配当時間は、前年度のワークショップで得た経験を踏まえて、2時間×3回、全6時間とし、2023年9月21日、10月5、19日に実施した。授業後に、児童を対象としたARCSモデルに基づいたアンケートを実施した結果、注意、関連性、自信、満足度のすべてのカテゴリーにおいて4.5以上と高い点が得られた。この結果から、今回開発した教材が、伝統文化とデジタルファブリケーションを統合的に学習できるSTEAM教材として有効であることが示唆された。 活動成果は、2023年2月23~2日に、福岡市内の商業施設、天神ソラリアプラザで開催された「九産大プロデュース展2023」において公開した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
前年度に前倒しでワークショップを実施することができたため、2022年度は、ワークショップで得られた経験と知見に基づき、小学校5年生の「総合的な学習の時間」において開発したSTEAM教育を実践することができた。授業後に児童を対象としてARCSモデルに基づいたアンケートを実施したところ、注意、関連性、自信、満足度のすべてのカテゴリーにおいて高い得点が得られた。また、授業後に、担任の先生方を交えて実施したミーティングにおいても、小学校、大学、そして伝統工芸の産地組合といった地域各所の連携による教育プログラムが、子どもたちの教育によい影響を与えることが意見交換の中で確認された。 小学校における実践を通じて、今回開発した教材が、伝統文化とデジタルファブリケーションを統合的に学習できるSTEAM教材として有効であることが示唆されたため、2023年度は、開発した教材を小学校の授業で活用可能なかたちにまとめ、広く公開するための準備を行うことにした。 また、2023年度に予定している高校におけるSTEAM教育の実践に向けて、2022年10月29日、11月5日、12日に、福岡市の文化複合施設、なみきスクエアにおいて高校生を対象としたワークショップを試験的に実施した。参加者は中学2年生1名、高校2年生2名、高校3年生1名、計4名であった。高校生向けに難易度を上げてモチーフをだるまに変更したところ、型のモデリング、和紙張り、型だしの難易度が、想定以上に上がることが分かった。特に難易度が高いのはモデリングであり、だるまのかたちに合わせて、細かく移動、回転、拡大縮小しなければならないことが理由として挙げられた。中学校、高校においても、マウス操作に慣れていない生徒にとっては難しい課題となる可能性が高く、生徒のスキルに応じてモデリングの難易度を調整する必要があることが分かった。
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今後の研究の推進方策 |
小学校における実践に続き、次は中等教育における伝統文化とデジタルファブリケーションを融合したSTEAM教育の可能性を探ることを目的として、小学校よりも高度な内容を取り入れた博多張子制作ワークショップを高等学校において実施する予定である。具体的には、博多張子の型の制作過程に3Dスキャナーを取り入れることを検討しており、使用に適した機器の選定を行っている。福岡市地域産業支援課の協力により、福岡市立博多工業高等学校において実施することが決まっており、博多伝統職の会および高校担当教員と連携しながら教育内容およびスケジュールを調整中である。現時点では、7月~10月中の実施を予定している。 また、令和4年度に東月隈小学校で実施したSTEAM教育の内容と、ARCSモデルに基づいて実施したアンケートの結果をまとめて考察し、2023年6 月に予定されている日本デザイン学会春季研究発表会において口頭発表を行う予定である。 さらに、小学校における実践を通じて得られた経験や知見に基づいて教材をブラッシュアップし、3DCADソフトウェアと3Dプリンターを活用して博多張子のお面を制作するSTEAM教育コンテンツとして、小学校の教員に向けて公開するための準備を行う。
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