研究課題/領域番号 |
21K02824
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09070:教育工学関連
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
菅谷 克行 茨城大学, 人文社会科学部, 教授 (30308217)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 視線移動 / 読解 / 電子メディア / メディア特性 / 電子書籍 / 集中力 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、文章読解・校正時の視線移動データから、表示媒体の違いによる読解過程の特徴・差異を明らかにすることが目的である。特に、文章読解・校正時の被験者の視線移動情報を、視線計測機器アイトラッカーを用いて複数の特徴量として獲得し、これらのデータを定量的に分析することにより、読解中の理解度・疲労度・集中度・注意力等を推定することを目指す。 本研究の成果として、文章読解時や校正時に適した媒体の選択方法や各媒体使用上の留意点を提案し、今後の教育や読書文化における電子媒体の役割や可能性について議論する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、文章読解時の視線移動データに基づいて、電子媒体上における読解過程の特徴・差異を明らかにすることである。文章読解中の被験者の視線移動情報を眼球運動測定装置を用いて複数の数値データ(視線座標、瞳孔径、注視時間、瞬き、移動速度等)として獲得し、これらから特徴量(視点移動範囲、停留頻度、停留時間、速度変化、逆行など)を算出し定量的に分析することにより、文章読解過程の理解度・疲労度・集中度・注意力等を推定することを目標としている。 令和4年度は、主に、実験による文章読解時の視線移動データの獲得・分析と、研究成果の中間評価・発表を計画していた。本研究のコンセプトを整理するとともに初期実験データを分析した結果をまとめ、「眼球運動データによる読解過程の分析」という題目で2022 PC Conference(コンピュータ利用教育学会研究大会)にて口頭発表した。実験結果・考察に基づいた中間成果や検討中の課題点に関するディスカッションとともに、研究コンセプトの意義についても意見交換することができた。 本実験は、視線移動データを獲得するために、眼球の動きを検出するための測定装置を被験者の頭部に装着する必要がある。実験中に被験者の一部より、装着による頭部への圧迫感・違和感の訴えがあったため、装着部分の一部(固定部品)を変更し、再度実験することにした。 また、実験開始時に、実験者により被験者頭部へ装置の着脱・微調整操作が必要であるため、実験者と被験者間での一定距離を保つことや、装置を介した接触の可能性を排除することができない。そのため、コロナ禍の第7、8波の期間では、感染状況が落ち着くまで、すべての実験を中断をせざるを得なかった。そのため、予定していた実験数を完遂できず、分析のために必要なデータ量を獲得できなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和4年度の計画は、主に実験による文章読解時の視線移動データの獲得・分析の実施と、研究成果の中間評価・発表であった。前年度末より実施してきた初期実験のデータを分析した結果として、視線移動データをヒートマップとして読書の様子を記録した動画上に表示し、読解中の視線軌跡や注視の状態を明示することができた。さらに、読書に集中していた時と集中できていなかった時(疲労や眠気を感じていた時)との間で、ヒートマップ表示が明らかに異なっていることを示すことができた。加えて、電子メディア環境における文章読解の現状調査(メディア接触の観点によるアンケート調査)を前年度から引き続き実施し、メディア接触や電子書籍利用等に関する現状を確認することができた。これらの成果をまとめ、中間評価・発表という位置づけで、2022 PC Conference(コンピュータ利用教育学会研究大会)で口頭発表し、意見交換することができた。ここまでの内容については、概ね予定どおりに進んでいる。 本研究の視線データ獲得実験では、視線の動きを検出するための測定装置を被験者の頭部に固定する必要があるが、その際、被験者の一部から、測定装置を装着することによる頭部への圧迫感・違和感の訴えがあった。本測定装置がゴーグル型の装着方法であるために、側頭部周りから鼻骨上部で装置の重さを支えており、装置がずれないよう固定したために、装着調整部分を少し強めに締めたことが圧迫感・違和感の原因であることが判った。そこで、ゴーグル型の装着部品からヘッドバンド型の装着部品(側頭部周りに加え、頭頂部のバンドでも支えることができる)に切り替え、再実験することにした。加えて、コロナ禍の第7、8波の期間は、実験の中断を余儀なくされ、予定していた実験数を完遂できなかった。 以上の理由により、達成度としては、やや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
まず、令和4年度に完遂できなかった読解過程における視線移動データの獲得実験を実施する。定量的な分析に必要なデータ量を獲得するために、早い段階で複数回の実験を行う必要があると考えている。その実験で獲得したデータを解析ソフトウェアを用いて定量的に分析し、表示媒体の違い(液晶、電子ペーパー)による視線移動データの相違や、視線移動の特徴量と読解行動・状態にどのような関係性があるのかを明らかにする。そして、実験結果を早急にまとめ、学会・研究会での発表を行い、議論や意見交換をしながら論文としてまとめていく予定である。 さらに、文章校正時における視線移動データの獲得実験を実施し、文章校正時(本研究では、より注意力・集中力を要する読解過程という位置付け)の視線移動データから、視線移動の特徴と文章校正時における読解行動・状態にどのような関係性があるのかを明らかにする。こちらも、実験結果を早急にまとめ、論文としてまとめていく予定である。 以上の結果を総合的に分析し、読書中の疲労度や集中度を視線移動の特徴から定量的に推定する方法について検討する。
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