研究課題/領域番号 |
21K02888
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09080:科学教育関連
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研究機関 | 桜美林大学 |
研究代表者 |
坪田 幸政 桜美林大学, リベラルアーツ学群, 教授 (70406859)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 地球システム科学 / 実験科学 / 科学の方法 / データベース / リベラルアーツ / オンライン / Web API / ジオパーク / モデル / 論理的思考 / システム思考 / プログラミング的思考 / リベラルアーツ教育 / オンラインコース |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の概要は,Society5.0に向けた人材育成に貢献することを目標として,リベラルアーツ教育におけるオンライン実験科目「地球システム科学」を開発することである.「地球システム科学」の目的は,科学的な見方・考え方や定量的推論のスキルの修得と学生が仮説の実験的検証(データの収集と分析)に参加することで,科学的原理を日常の経験に適用できる力を培うことである.そして,成果を利用し易いMoodle形式で広く公開し,SDGsの達成にも貢献することを目標とする研究である.本研究は,リベラルアーツ教育におけるオンライン実験科学「地球システム科学」を開発する研究である.
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研究実績の概要 |
作成したシラバスを担当する科目内で実践し,その結果に基づいてシラバスの改訂案を作成した.2単位科目として実施するには,断片化を避けつつ,教材の厳選が必要であることがわかった.そして,リベラルアーツ教育を考えると,地球システム科学を通して,数学と理科の基礎力を涵養することも課題であることがわかった.今年度,開発したオンライン実験教材は,次に示した4種類である. データベースの利用:地球システム科学は,長い時間や広い範囲の観測データが必要になることが多い.そこで,気象庁とアメリカ地質調査所(USGS)が提供する気象や地震に関するデータを利用した教材を開発した.確率過程と極値統計,座標変換とデータ処理などを組み込むことで,科学の方法を体験できるようにした. Webベースの実験:バーニア社の測定センサーは,JavaScriptを用いた制御が可能であり,Webブラウザー経由で実験できる.そこで,オンライン実験への応用を探る目的で,JavaScriptを用いた実験教材を試作した.実験データの取得,処理,グラフ化は行えたので,スマホのセンサの値をマニュアル入力すれば,オンライン実験が可能であることがわかった. Web APIの利用:天気予報はWeb APIを通して利用でき,JavaScriptで予報データを取得し,予報精度を検証する教材を作成した.Web APIは,日々更新されるリアルタイムデータが利用でき,より臨場感のある教材となることがわかった. ジオパークの利用:実験科目としての「地球システム科学」では,野外巡検が重要な要素である.しかし,実験時間帯が確保された授業であっても,野外巡検の実施は容易ではなく,全員参加型野外巡検の実施はほとんど行われていないのが実情である.そこで,見学ルートや博物館が完備されたジオパークを対象とした野外巡検ガイドを作成し,シラバスに組み込んだ.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,課題1「リベラルアーツ教育における科学教育の実態調査」と課題2「大学生に対する科学リテラシーの習熟度調査」,課題3「オンライン実験科目『地球システムの科学』コースの開発」を設定している.課題2がやや遅れている状況にあり,課題3は計画以上に進展している.その結果,「おおむね順調に進展している」とした. 課題1では,大学入学者の実態を知る目的で,大学進学率や学習指導要領の変遷などを調査した.1980年代に約50%であった高等教育機関への進学率が,1990年以降増加して,現在では約84%となっている.そして,その時期に初等中等教育で「ゆとり教育」が始まり,完全学校週5日制の導入や学習内容が削減された.つまり,大学設置基準の大綱化以降,大学入学者に共通する基礎学力の質と量が変化していた.そこで,リベラルアーツ教育における科学教育の目標設定の再考が必要であると結論付けた. 課題2では,適当な評価ツールの調査を続けているが,現在まで普及したツールの発見には至っていない.そこで,米国で実施されているGREにおけるGeneral Testの利用を考え,quantitative reasoning(定量的推論)とverbal reasoning(言語的推論)について調査した.定量的推論は,科学リテラシーの評価に利用できるが,数式を使う計算力が求められ,日本の非理系大学生を対象とした評価ツールには使用できないと判断した.一方,言語的推論では,論理的思考力の評価ツールに適しているが,大学入学時のSATでも同形式の試験を受けている米国の学生と同等に比較できるかが疑問となった. 課題3では,公開されている地球システムに関するデータを利用したデータ処理教材とJavaScriptとWeb APIを利用したオンライン実験教材,ジオパークを利用したオンデマンド型野外巡検ガイドを作成した.
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今後の研究の推進方策 |
本研究で遅れている課題2「大学生に対する科学リテラシーの習熟度調査」を進めるため,米国のSATとGREの言語的推論を参考にして科学リテラシーの習熟度評価ツールを作成し,実施して米国の状況と比較する.また,新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行されたことを受けて,課題1「リベラルアーツ教育における科学教育の実態調査」として,積極的に訪問調査を実施する.そして,地球システム科学コースのあるカリフォルニア州立大学アーバン校(UCI)など,米国の大学の科学教育を調査する. 課題3「オンライン実験科目『地球システムの科学』コースの開発」としては,昨年度の実践結果を踏まえて改訂したシラバスを用いて授業を行い,最終的なシラバス案を作成する.実験教材としては,スマートフォンの気圧と磁気,加速度センサーを用いたWebベースの実験サイトをJavaScriptで作成する.また,「JAXA Earth API」が提供する多種多様なJAXA地球観測衛星画像データの活用を試みる.オンデマンド型野外巡検ガイドの候補地としては,糸魚川ジオパーク(フォッサマグナパーク)と箱根ジオパークを予定する. 地球システム科学コースの構成を海外と比較すると,日本では生物圏が含まれていないことが多いことがわかった.そのため,地球システム科学のシラバスにも,生物圏が含まれていないこと多い.そこで,米国における地球システム科学を参考にして,地球システム科学における生物圏の取り扱い方を重点的に調査することとした.具体的には,植物の光合成や蒸散を取り上げ,エネルギー循環と物質循環に組みことを考える. 開発教材の評価と普及を図るために,教材を提供するwebサイトを立ち上げ,研究協力者からのフィードバックを受ける.日本では非理系大学生への実験授業が少ない状況を踏まえて,高等学校の地学担当者との連携を強化する予定である.
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