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高齢者学習における自然科学教育のニーズと効果的な教育手法の研究:天文学を例として

研究課題

研究課題/領域番号 21K02913
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分09080:科学教育関連
研究機関九州産業大学

研究代表者

鴈野 重之  九州産業大学, 理工学部, 准教授 (20615364)

研究分担者 香川 治美  九州産業大学, 建築都市工学部, 教授 (50405544)
小田部 貴子  九州産業大学, 基礎教育センター, 准教授 (80567389)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
キーワード科学教育 / 高齢者学習 / 生涯教育 / 天文教育 / 天文学
研究開始時の研究の概要

高齢者に対する生涯教育が広がる中,高齢者の学習ニーズについての研究が増えている.しかし,自然科学分野が高齢者教育にどのようにコミットできるかを検討した研究はほぼ皆無である.本研究では天文学を切り口として,高齢者の学習ニーズに対し自然科学分野が応えられる点を探る.そのため,高齢者大学でのアンケート・聞き取り調査等を実施し,特に高齢者特有の学習ニーズである「超越ニーズ」と天文学との関わりを考察する.また,自然科学特有の観測・実験などの実地教育を高齢者向けに安全かつ効果的に実施するための知見を収集し,ICT活用の可能性も検討する.

研究実績の概要

研究三年目となる今年度の研究では,高齢者の学習動機や好まれる学習分野,興味関心の持ち方などについて,調査を実施した.とくに,天文学をはじめとする理工学分野に関心を持つ学習者と,文系分野に関心を持つ学習者との間での差異に着目して調査を行った.調査のため,高齢者学習の現場にて様々な学問分野についてのレクチャーを実施し,参加者を対象としてのアンケート調査を実施した.学習領域に対する興味関心の持ち方については,比較群として大学生に対しても同様のアンケート調査を行っている.
初期結果として,「天文学」「古典文学」などのアカデミックな学習分野に対して関心を持つ層は,主に感情的価値(好きだから選ぶ)に基づいてこれらの学習分野を選ぶのに対し,「食品科学」「情報工学」のようにより日常生活に近い分野に関心を持つ層は,認知的価値(役に立つから選ぶ)に基づいて学習分野を選ぶ傾向が見られた.今後,より詳しく分析することで,高齢者がどのように学習分野に関心を持ち,その分野の学習に何を期待しているのか,そして若年層との違いがあるのかなどについて検討したい.
一方,高齢者に対しての教育環境を整えるためには,実際に高齢者教育に携わっている教育者や運営者の意見や知見を収集することも必要である.そこで今年度より,実際の高齢者教育の現場に携わってきた教育関係者に対してのインタビュー調査を行っている.この中で,高齢者教育におけるノウハウの収集や,様々な活動における共通点,差異などを明らかにすることを目指している.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究開始時において,高齢者の学習ニーズにおいては,衰えへの対処や人間関係の再構築が重要であるとの認識が広く知られていた.これに対し,近年では退職後も健康な高齢者が増えている.彼らは従来考えられていた高齢者の学習ニーズとは異なるニーズを持つということが本研究において明らかにされいたが,我々は加えて,高齢者が学習分野にたいしてどのような形で興味関心を抱くのかについて研究を行ってきた.先行研究の手法を踏まえ,様々な学習分野に対して高齢学習者を高関心層と低関心層に分類し,感情的価値や認知的価値など関心の持ち方との関係を調べている.初期的結果は2024年4月現在,学術論文として投稿され,査読手続き中である.
また,研究前年度,高齢者の特性にあった学習方法の調査にも着手していた.その結果,最新の視聴覚教材よりも従来から行われてきたような講義や実験が,高齢者には好まれる傾向があることがわかってきた.この結果は2024年4月現在,学術論文として投稿され,査読手続き中である.
3年目から実施している,教育関係者へのインタビュー調査を4年目でまとめることができれば,本研究で初期に計画していた調査+αの内容をカバーすることとなる.3年間で多くのデータが蓄積されており,これらを分析できれば,当初計画を超えた成果が得られるのではないかと期待している.以上を踏まえ,研究計画全体としては,おおむね順調に推移しているものと考えている.

今後の研究の推進方策

これまでの研究を通して,天文学を学習するニーズは従来の高齢者学習のニーズとは異なることが示されてきた.とくに,天文学の学習ニーズは,他者とのつながりや実生活の改善などを主な学習ニーズとする従来型の高齢者学習のニーズとは対極的にあるらしいことがわかってきた.一方で,高齢者学習の身体特性は若い世代と異なっており,とくに視覚聴覚で衰えを感じている高齢者は少なくない.このような高齢者にとっては最新の精緻な視聴覚教材の利用を負担と感じる高齢学習者も存在することが示されている.
これらの結果を踏まえると,成人から高齢者にかけての生涯学習のニーズや最適な学習方法は,静的なものではなく年代とともに移り変わっていく動的なものと考えるべきであろう.今後の課題として,このようなニーズや学習方法の年代ごとの変遷や,学習分野ごとのニーズの違いなどを調べていくことが興味深いテーマとして考えられる.本研究3年目では,天文学に限らず多角的な学習分野にわたって調査を行ってきた.同時に,これまではあまり顧みられてこなかった高齢者教育の実施者側への調査もスタートしている.研究最終年度には,これまでに得られたデータをまとめることで,高齢者学習支援の最適化をはかる手法を検討していきたい.

報告書

(3件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 2021 実施状況報告書
  • 研究成果

    (6件)

すべて 2024 2023 2022 2021

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件)

  • [雑誌論文] 高齢者を対象とする天文教育 ~高齢者の学習ニーズと天文学~2022

    • 著者名/発表者名
      鴈野重之,小田部貴子
    • 雑誌名

      天文教育

      巻: 34 ページ: 2-25

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 超高齢化社会における天文教育の挑戦2024

    • 著者名/発表者名
      鴈野重之, 小田部貴子, 香川治美
    • 学会等名
      日本天文学会2024年春季年会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 高齢者向け生涯教育における天文教育の方法2023

    • 著者名/発表者名
      鴈野重之, 小田部貴子, 香川治美
    • 学会等名
      2023年日本天文教育普及研究会年会・第37回天文教育研究会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] Astronomy Education for the Elderly2023

    • 著者名/発表者名
      S. Karino, T. Otabe & H. Kagawa
    • 学会等名
      AstroEdu conference 2023
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] 高齢者のウェルビーイングに貢献する天文学2023

    • 著者名/発表者名
      鴈野重之, 小田部貴子, 香川治美
    • 学会等名
      日本天文学会2023年春季年会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] Contribution of astronomy for the fulfilling life of the elderly citizens2021

    • 著者名/発表者名
      S. Karino & T. Okabe
    • 学会等名
      Communicating Astronomy with the Public 2021
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
    • 国際学会

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公開日: 2021-04-28   更新日: 2024-12-25  

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