研究課題/領域番号 |
21K02985
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分10010:社会心理学関連
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
新谷 優 法政大学, グローバル教養学部, 教授 (20511281)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 思いやり目標 / 自己イメージ目標 / 援助 / 非ゼロサム / お節介 / 向社会的行動 / 思いやり / 他者評価 |
研究開始時の研究の概要 |
目の不自由な人のホーム転落事故などは,周囲の人々が手を差し伸べれば防げるにも関わらず,日本人の多くは見知らぬ他者に対して援助を申し出るのを躊躇する。本研究は他者に悪い印象を与えたくないという動機(自己イメージ目標)をもつ人ほど,他者からの評価やお節介という批判を恐れるために,他者が明らかに希望している時のみ援助を行うかを調べる。また,他者のウェルビーイングを高めたいという動機(思いやり目標)をもつ人ほど,援助の希望の有無に関係なく,援助が他者の役に立つ時に援助を行うか検証する。この研究により,困難を抱える人が援助の要請をしなくても,援助が受けられるような方策を提案する。
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研究実績の概要 |
人は援助が必要な時でも、援助を求めないことがある。しかし、直接的な援助要請がない場合でも、介入が必要なことは多々ある。援助要請がない状況での見知らぬ他者に対する援助は、他者のウェルビーイングを高めたいという「思いやり目標」をもつ場合に促進され、他者に悪い印象を与えたくないという「自己イメージ目標」をもつ場合に抑制させることがわかっている。本研究では、対人目標が援助行動を促進または抑制する心理的なメカニズムを明らかにすることにある。 昨年度は、思いやり目標が援助を促進するのは「他者のためになることは、自分のためにもなる」という非ゼロサム的な信念が強いためであるという知見が得られたので、本年度はこれを論文にまとめて国際誌に投稿した。不採択になったものの、現在は論文の修正をし、別の国際誌に投稿する準備を進めている。 また、「人のために費やす時間は、自分のための時間でもある」という非ゼロサム的な時間を経験した人は、「人に時間を取られる」という経験や、「人のために自分の時間を犠牲にする」経験をした人に比べ、より多くの時間を他者の援助にあてる傾向があることを、一つの調査と二つのオンライン実験で明らかにした。この知見を論文にまとめ、国際誌への投稿に向けて準備している。同時に、非ゼロサム的な時間の捉え方をする人ほど、援助が失敗に終わっても後悔が少なく、満足度が高いという知見も得られた。これらは2023年度に学会等で発表予定である。 さらに、三つのシナリオ実験を行い、援助が相手のためになる程度と、相手に喜ばれる程度を独立に操作し、どのような状況で対人目標が援助を促進するかを調べた。しかし、いずれも想定外の結果となったため、今後の研究の方向性について検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画に基づき、援助が相手のためになる程度と、相手に喜ばれる程度によって、対人目標が援助を促進または抑制するという仮説を検証したものの、予測と異なる結果が得られたため、その理由を考察中である。この点においては、計画通りの進捗とは言えないものの、当初の計画になかった非ゼロサム的な信念や時間の捉え方が、対人目標と援助意図の関係を説明する変数として重要な役割を果たすことを明らかにすることができた。対人目標が援助行動を促進または抑制する心理的なメカニズムを明らかにするという本研究の目標に向けて大きく前進したものと言える。これらの研究を二編の論文にまとめることができたことから、研究自体はおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、援助が失敗に終わったときに、対人目標により、援助をしたことに対する後悔や満足度がどのように異なるかについて調べる。思いやり目標の高い人ほど、時間を非ゼロサム的に捉えることがこれまでの研究でわかっており、また、2022年度の研究では、非ゼロサム的な時間の捉え方をする人ほど、援助が失敗に終わっても後悔が少なく、満足度が高いことがわかった。そこで本年度は、これらの変数を全て一つの実験で扱い、思いやり目標の高い人ほど、非ゼロサム的に時間を捉える傾向があるために、援助が失敗に終わっても後悔が少なくなり、満足度が高くなるというモデルを検証する。また、後悔が少ないことが、その後の援助を促進する要因となるかを検討する。 非ゼロサム的な信念や時間の捉え方に加え、2023年度は「他者からお節介だと批判される懸念」についての検討も進める。具体的には、対人目標との関連や実際の援助行動との関連をオンライン調査や実験で明らかにする。
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