研究課題/領域番号 |
21K03011
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分10020:教育心理学関連
|
研究機関 | 多摩大学 |
研究代表者 |
竹内 一真 多摩大学, グローバルスタディーズ学部, 准教授 (10737571)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
|
キーワード | 文化心理学 / ナラティヴ・アプローチ / ビィジュアル・ナラティヴ / 技能の復活 / 世代継承生 / ライフストーリーインタビュー / 社会文化的アプローチ / ビジュアル・ナラティゔ / 生成継承性 / ナラティヴ / 世代断絶 / 実践知 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,先行世代の生み出した制作物をもとに復活を行う陶芸家らと,先行世代が生み出した制作物が無い中で復活を行う和菓子職人らを研究協力者としてライフストーリーインタビューを行う。陶芸の復活においては陶片や窯跡など有形のものをもとにしながら復活を行う。一方で,和菓子の復活においては過去に書かれた文献の絵やレシピをもとに復活を行う。したがって,和菓子の復活では文字や絵といった情報のみから復活を行う。この二つの異なる復活の形を明らかにすることで,先行世代の実践知を復活させ,新たな制作物を創発するという世代の断絶から再構成,そして社会的ニーズに応じた創発へと至る実践知の循環的発達モデルを示す。
|
研究実績の概要 |
2022年度は質的心理学研究に「ガラス工芸の復活を通じた世代間の関係性構築の語り:ナラティヴ・アプローチから捉える新たな制作物の開発過程」が出版された。この論文はガラス工芸を復活させた当時者を対象とした先行世代の関係性構築から,新たな制作物の作成までをインタビュー調査で明らかにしたものである。この論文を通じて二つのことが明らかとなった。 一つ目は先行世代の技能を読み解く能力である継承リテラシーと熟達の関係が明らかとなった。具体的には復活を行う当事者は当該技能の習熟と先行世代との内的対話を通じて継承リテラシーを深める。そして,継承リテラシーの深まりと共に,先行世代との関係性が構築されることが示された。 二つ目は,新たな制作物作成過程を物語的自己同一性の観点から捉えることである。作り手は受け手と先行世代の間に自らの経験を媒介させる形で新たな制作物を作る。その過程で,制作物の物語的自己同一性を代替的に再構築することが示された。 この論文は陶芸や和菓子などの復活に関する基礎となる研究である。特に制作物の物語的自己同一性の代替的な再構築という視点は,復活に際して作り手の物語的自己同一性だけでなく,制作物の物語的自己同一性という二つの物語的自己同一性に関して射程に入れて捉える必要があることを示す。実際,現在進めている和菓子と陶芸の復活に関するインタビュー調査でもこの二つを念頭に置きながら進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度はインタビュー調査を中心に行った。2021年度は新型コロナウイルスの影響もあり十分に行えなかったインタビューに関して昨年度分も今年度補う形で実施した。具体的には陶芸と和菓子の復活に関してそれぞれの対象者に対して年度計画よりもより多くの対象者に対してインタビューを実施している。 和菓子や陶芸の復活に関するインタビュー調査では東北や関西,甲信など複数の地域でインタビュー調査を行った。和菓子と陶芸という二つの調査に並行させる形でインタビュー終了後はすべての音声データの文字起こしを行っている。また,文字起こしを終了させた後に,データ分析を行っている。このデータ分析を通じて,今後のインタビュー計画や質問事項の修正を図った。 このようなインタビュー調査を通じて文献の整理も行っている。特に和菓子や陶芸のインタビュー調査では,専門的な用語や地域が登場するため,そのための知見の整理も必要となる。このような観点から研究協力者に選定された職人の背景を調べるとともに,関連する技能や地域の歴史,専門的な用語について調査を行った。 また,教育心理学や発達心理学の関連文献の収集も行っている。とくに和菓子や陶芸では復活と創発が切り離せない。従って本研究では「先行世代を踏まえて,後続世代のニーズに合わせて新たなものを生み出す」という創造性と世代間の関係性が大きなテーマとなる。そのため,社会文化的アプローチによる創造性研究に関する文献の収集及び分析を中心に行った。
|
今後の研究の推進方策 |
2023年度は大きく三つのことに取り組みたい。一つ目が陶芸や和菓子のインタビュー調査であり,二つ目がインタビュー調査のデータ分析及び発表,三つ目が先行研究の論文化である。 一つ目であるが,今年度は陶芸や和菓子に関してインタビュー調査を引き続き行っていく。これまで東北や関西,甲信地域を中心に調査を行ってきたことから,今年度は北陸,九州,中国,四国地方でインタビューを実施していく予定である。概ね研究は順調に推移しているものの,新型コロナウイルスの影響で本来終わっているインタビュー対象者がまだ数名いるので,今年度で研究計画通りになるように調査を進める。 二つ目が上記した調査と並行して調査データがある程度集まった和菓子や陶芸の研究に関する分析をさらに進め,可能であれば研究発表を行うということである。発達心理学会の大会は3月に実施されることから,それまでにデータ収集とデータ分析を終わらせ,研究発表まで向かえるように調整を行っていく。 三つ目が発達心理学や教育心理学に関する先行研究をまとめ,論文として投稿をするという点である。本研究は,先行世代から受け継ぎ,それを次の世代に残すという技能の世代間の関係性やそこから生まれる制作物の創発を明らかにするという目的で進めている。特に制作物の創発(創造性)に関して,特に文化心理学観点からどのような研究が進められているのかこれまでの文献収集の成果として論文にまとめていく。
|