研究課題/領域番号 |
21K03028
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分10020:教育心理学関連
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
尾之上 高哉 宮崎大学, 教育学部, 准教授 (30631775)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 交互練習 / ブロック練習 / 練習法の捉え方 / 練習の効果 / 効果の境界条件 / 学習内容の定着 / メタ認知 / 効果を調整する要因 / 学習法 / 調整効果 / 基礎研究 |
研究開始時の研究の概要 |
1つの課題に集中し、繰り返し練習すること(ブロック練習)は効果的だろうか? 科学研究は、あえて異なる課題を交互に練習する方が(交互練習)、定着や転移に頑健な効果を持つことを示している。だが、交互練習はブロック練習よりも、学習に伴う認知的・身体的負荷が高くなるため、学習中に失敗や間違いが起こり易い。その事実を踏まえた時、次の3つの各要因が、交互練習の効果を調整する可能性がある。それらは、①その学習者の元々の認知的・身体的な能力の高低、②どのような目標指向性で学習に臨むか、③学習中の失敗や間違いをどのように捉えるか、である。本研究では、この3つの各要因が、交互練習の効果をどう調整するかを検証する。
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研究実績の概要 |
2023年度には、まず第1に、本研究課題「交互練習の効果を調整する要因を特定する基礎研究」に着手する前段階として実施した「ブロック練習(=交互練習の対概念)の弱点を調べる実証研究」の論文化に取り組み、その成果は、2023年3月発刊の教育心理学研究に掲載された。本研究では、ブロック練習には、そこでの学習を単純作業化させてしまう可能性があることが示された。本研究には、教育現場でよく用いられるブロック練習を問い直し、より良い運用方法を考える必要があることを示した点での意義があると考える。 第2に、本研究課題に直接関係する研究として、「練習中の成績」が交互練習の効果(学習内容の定着度)を調整する要因になり得るのか?、ブロック練習の効果についてはどうか?、という点についての基礎的な研究を実施した。具体的には、ブロック練習と交互練習における各成績が、練習の効果(定着度)を測るテストの成績と関連するか否かを検証した。4つの立体の求積課題を教材とし、各課題の学習を行った後の復習をブロック練習で行う条件と、交互練習で行う条件を設け、その復習時の成績とテストの成績の関連を分析した。結果として、①ブロック練習中の成績は定着度を表さない可能性がある、②交互練習中の成績は定着度を表す可能性があり、その傾向は交互練習の機会が増えると顕著になる、が示された。本研究の結果は、交互練習の効果は、練習中の成績によって調整される可能性があることを示唆している。それを踏まえると、交互練習を行う際には、正答率が十分に高まるまで実施することが重要であるといえる。その一方で、本研究の結果は、ブロック練習中の成績は、練習の効果(定着度)を表していない可能性があるため、その捉え方には留意する必要があることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの進捗状況については、下記の2つの理由を踏まえて、「おおむね順調に進展している」と評価している。 第1の理由は、交互練習とセットで用いられるブロック練習について、先行研究では未だ実証的に検討されていなかった「弱点が内在する可能性」について検証し、その成果を論文として発表できた、という点である。従来の研究では、定着度が高まることへの期待から交互練習への注目がなされてきたが、本研究によりブロック練習に内在する弱点を補うという観点からも交互練習に注目できることを示すことができたといえる。 第2の理由は、「交互練習の効果を調整する要因」として、「練習中の成績」がその要因になり得る可能性を示すデータを得ることができた、という点である。従来の研究では、ブロック練習と交互練習に関して、しばしば練習中の成績はブロック練習条件(群)の方が高くなるものの、定着度は交互練習条件(群)の方が高くなることから、「練習中の成績は必ずしも定着度を表していない」との議論が行われていた。この議論からは、一見、交互練習の効果は、練習中の成績とは関連がないような印象も受ける。しかしながら、本研究で検証を行った結果、ブロック練習の効果は練習中の成績と関連がなかったが、交互練習の効果は練習中の成績と正の関連があることが確認された。本研究により、交互練習の効果を調整する要因として練習中の成績に注目する必要性、及び、実践においては練習中の成績を十分に高めることの必要性、がそれぞれ示唆されたといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策について述べる。 まず、これまでに実施した研究を論文にまとめて発表し、第3者が研究結果を共有可能な状態にすることを目標にする。練習中の成績が、交互練習の効果を調整する要因になり得る可能性を示したデータについては、既に論文化し現在1回目の査読を受けている状況にある。その他、交互練習の副次的効果を検討した研究と、成長マインドセットと学習効果との関係を検討した研究についても、それぞれ先行研究との接続を図りながら論文化する作業を進めていきたい。 次に、交互練習の効果を調整する要因についての新たな研究を展開させたい。現時点では大きく2つの案を考えている。第1の案は、中学校の社会科の授業の中での実践研究である。交互練習の効果を調べる研究、及びその効果を調整する要因を調べる研究では、大学生を対象とした実験室実験の手法が用いられることが多く、小中学校のカリキュラムに即した研究は少ない。実際の教室で、これまでの知見がどの程度再現されるのか、そして、どのような要因が効果を調整することにつながっているのか、を検討することは重要な作業であると考える。現在、研究協力が得られる可能性がある中学校との相談を進めており、協力が得られた場合にはこの第1の案を進めていきたい。もし第1の案が難しい場合には、第2の案として、大学生を対象に、実験室実験の手法を用いた研究を予定している。ただし、この場合にも、実際の教育現場の実践の文脈に近い文脈を設定し検討を行う予定である。
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