研究課題/領域番号 |
21K03036
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分10020:教育心理学関連
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
三島 浩路 中部大学, 現代教育学部, 教授 (90454371)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | スマートフォン依存 / 学校適応 / 現実逃避 / 高校生 / 中学生 / スマホ依存 / 現実逃避傾向 / 将来展望 / 逃避傾向 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、中学生・高校生を対象にしてスマートフォン依存に陥るプロセスを解明し、依存リスク指標を開発する。この指標により、スマートフォン依存に陥る可能性を数値化し、依存を抑制する教育活動等での利用を目指す。 はじめに、先行研究によりスマートフォン依存との関連性が示された要因相互の関連を検討し「依存プロセス包括モデル」を作成・検証する。次に、スマートフォンで利用するアプリケーションの特性と、スマートフォンに依存する個人の特徴との関連性を検証する。これらの知見を統合するなどして、中学校・高校でのスマートフォン依存防止に向けた教育活動等で活用可能なスマートフォン依存リスク指標を開発する。
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研究実績の概要 |
高校生約1,100人のデータを収集し、スマートフォン依存傾向の変化に伴う学習適応や友人適応をはじめとした学校適応指標の変化について分析した。その結果、約5ヶ月の期間中にスマートフォン依存傾向尺度得点が上昇した高校生は、学校生活の全般的な適応状況を示す総合的適応感覚指標が有意に低下した。この結果は、スマートフォン依存傾向尺度得点の変化が学校適応状況に関連することを示唆するものである。また、スマートフォン依存傾向の変化と学校適応に関連した指標の変化との関連には性差も確認された。男子生徒の場合、スマートフォン依存傾向を弱めた生徒は、落ち込みや悩みが減少したのに対して、女子生徒にはこうした変化はみられなかった。一方、スマートフォン依存傾向を強めた女子生徒は、学習面での適応を低下させたが、男子生徒にこうした低下はみられなかった。以上の結果からスマートフォン依存傾向の変化と生徒の学校適応の変化との関連については、性差がある可能性も示唆され、こうした性差を前提とした分析を行う必要がある。 さらに、スマートフォン依存傾向の変化のパターンは、学年や性別により異なる可能性があることも示唆された。中学生や高校生のスマートフォン依存への対応を検討する際には、こうしたちがいを考慮する必要もある。 本研究では中学生や高校生の現実逃避傾向を測定する尺度の開発を行っており、2021年度は現実逃避傾向尺度一次案を作成した。2022年度は現実逃避傾向尺度一次案について、尺度としての妥当性をより詳細に分析・検討した。その結果、現実逃避傾向尺度は、抑鬱傾向の強さと正の相関関係を示し、総合的適応感覚や友人適応、さらには生徒の将来展望との間に負の相関関係を示すなど尺度の妥当性を示唆する結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究においてはスマートフォンに対する生徒の依存傾向の変化と学校適応や現実逃避傾向などの変化の関連性を分析し、分析により得られた知見などをもとにして、中学生や高校生のスマートフォン依存を抑制することを実践的な目標にしている。これまでにも、スマートフォン依存の程度と学校適応指標との相関関係に基づいた調査研究は散見された。しかし、スマートフォン依存の程度の変化と学校適応等の変化の関連について、“対応のあるデータ”に基づいて検討した研究は国内で確認することができず、本研究により得られた知見は、こうした変化に着目した数少ない研究知見と思われる。また、スマートフォン依存傾向の変化と学校適応指標の変化との関連に関しては性差がみられる可能性がある点や、本研究で使用するスマートフォン依存傾向尺度得点がどの程度変化した場合、学校適応に影響する可能性があるのかという点に関して、本年度実施した調査研究により一定程度の情報を得ることができた。 スマートフォン依存を抑制するためには、スマートフォン依存傾向の変化に関する情報の収集が必要であり、本年度の研究によりこうした点に関してはおおむね達成できた。 また、本研究ではスマートフォン依存との関連で現実逃避傾向に着目しているが、中学生や高校生の現実逃避傾向を測定可能な信頼性・妥当性がある尺度開発も進めることができ、その成果を2023年度には学会報告する予定であるなど、おおむね順調に研究を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
スマートフォン依存に関しては、生徒が頻繁に使用するスマートフォン用のアプリケーションの種類により依存の特性や関連する要因が異なる可能性がある。こうした点について文献研究を進めてきたが、本年度は文献研究から予想されるアプリケーションによる依存の特性や関連要因の違いに関連した調査を実施する予定である。この調査を実施するためには、中学生や高校生が回答可能な形式での質問紙を作成する必要がある。現在、質問項目等に関する詳細な検討を行っており、質問紙のひな形が完成した段階で、学内の研究倫理審査委員会の審査を受け、本年度9月頃の調査実施を目指している。調査を実施していただく調査協力校の確保に関しては、現在、複数の中学校・高等学校と調整中であり、いくつかの学校からは前向きな反応が得られている。 2022年度にスマートフォン依存や現実逃避傾向、将来展望、抑鬱傾向、さらには学校適応感などに関する調査を、中学校と高等学校でそれぞれ2回ずつ実施し、中学生や高校生から“対応のあるデータ”を取得することができた。本年度はこのデータを分析するなどして、スマートフォン依存傾向の変化が、中学生や高校生の現実逃避傾向の変化や将来展望の変化などとどのように関連するのかを明らかにしたい。同時に、中学生や高校生のスマートフォン依存を抑制するためには、どのような側面から指導や支援を行うことがより効果的なのかというテーマについても考察を深めたい。
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