研究課題/領域番号 |
21K03053
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分10030:臨床心理学関連
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研究機関 | 桜美林大学 |
研究代表者 |
山口 創 桜美林大学, リベラルアーツ学群, 教授 (20288054)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | セルフタッチ / ストレス / 皮膚 / 身体接触 / リラックス / 皮膚性状 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、セルフタッチによるストレス緩和効果と、自らの皮膚に触れることによるストレスの把握可能性について明らかにすることを目的とする。まず研究1では、ストレス負荷の下で4つの身体部位にセルフタッチを行い、即時的なストレス緩和効果が高い方略を抽出する。次に研究2では、ストレス負荷の前後で、皮膚の客観的評価と、ストレスの主観的評価を行い、自らのストレス反応を触れて把握できる部位について明らかにする。研究3では、実際のフィールドを用いて、研究1と研究2で得られた成果の継続効果について検討する。
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研究実績の概要 |
コロナ禍の自粛生活により、大学生のストレスが高まっていることが、数々の研究から明らかになっている。そこで本研究では、大学生を対象にタッチによるストレス緩和効果に関する実験的研究を行った。その際、セルフタッチによって皮膚の性状を把握することによる自身のストレス状態把握可能性についても検討した。 まず予備実験では、質問紙により他者タッチとセルフタッチの効果の違いを部位ごとに比較した。さらに質問紙と生理指標により自身の皮膚性状の把握可能性について検討した。その結果、セルフタッチではPOMSの「緊張-不安」得点が有意に減少した。また、皮膚の性状の把握可能性については、VASの「ベタベタしている」においてストレス反応尺度の全ての下位尺度と相関が認められた。このことから、大学生のストレス緩和のためにセルフタッチに効果があることと、自らの皮膚に触れることにより皮膚の性状の把握を把握することにより、自らのストレス状態を把握することが可能であると示唆された。 次に本実験では、ストレス緩和効果の高いセルフタッチの部位を限定し、それによるストレス緩和効果を明らかにするとともに、自らの皮膚に触れて皮膚の性状を把握することによるストレス反応の把握可能性について検証することを目的とした。実験の結果、セルフタッチを行った群はPOMSの「混乱」が有意に低下することがわかった。また、ストレス反応尺度と皮膚性状の関係では、抑うつや無気力が高い者ほど皮膚表面温度が低いことがわかった。以上の結果より、セルフタッチが大学生のストレス緩和の一助となり、自らの皮膚に触れて皮膚の温度を感じることによりストレス状態を把握できる可能性が示唆された。ただし皮膚の主観的評価では、抑うつの高い者ほど「温かい」と感じていた。客観的な皮膚の温度の低さを、主観的に「温かい」と評価する理由について今後検討すべき課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度は新型コロナウイルスによる活動制限がかかっていたため、対面によるタッチングを目的とした本研究の計画を十分には達成することができなかったと評価される。そのため本実験においては、予備実験では他者からのタッチングの効果についても検討したが、その効果はセルフタッチの効果と大きな違いが見られなかったことから、本実験ではセルフタッチの効果だけを検討する研究をすることとした。セルフタッチであれば、他者からのタッチよりも、接触による感染のリスクを抑えることができるためである。しかしセルフタッチ中心の研究にしたにも関わらず、研究活動の制限の下、実験参加者を集めることは容易ではなく、研究期間も限られていたことから、実験参加者が十分ではないものの研究を遂行することを優先させ、研究を実施することとなった。本研究で実施することができた実験参加者は合計13名であったため、十分な人数であるとは言えない。そこで2023年度に活動制限がかからなければ、さらに実験参加者を増やして、十分な人数まで実施することを考えている。2022年度に行った研究からは、人数は十分ではないもののある程度の有意義な傾向があることが読み取れたことから考えると、人数を増やすことで、さらに統計的に有意な結果が出ることが期待できよう。実験参加者の人数を増やすためには、大学生だけに限定せずに、大学院生や社会人にも積極的に参加してもらうことで、さらに研究結果の応用範囲を年齢別に検討できるメリットもあると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的は次の5点について明らかにすることであった。第1は、最もストレス緩和効果の高い、セルフタッチの部位と触れ方について明らかにすることである。第2は、ストレスによる身体反応が最も顕著に現れる皮膚の部位について明らかにすることであり、第3は皮膚の性状をセルフタッチにより評価することで、自らのストレス状態を皮膚で把握できる可能性を明らかにすることである。そして第4は皮膚の性状の評価を継続的に行うことにより、その正確性が向上する可能性について明らかにすることである。第5はセルフタッチを継続することの、日常のストレス緩和効果について明らかにすることである。2023年度は、研究計画の最終年度に当たり、第4と第5の目的を達成するための研究を行う。具体的には下記の研究を実施する予定である。 日常的にストレスが高い者を対象に、3ヶ月間継続してセルフタッチを行うことによる、皮膚性状の把握の正確性向上の可能性と、日常のストレス緩和効果について明らかにする。まず①研究協力可能な者を対象に研究概要を説明し同意を得る。②同意を得られた者に対し、web上でアンケートへの回答を依頼する。その中の20名には皮膚性状を主観的・客観的両面から評価を行う。さらに唾液を採取しオキシトシンとコルチゾールの測定を行う。③参加者には毎日就寝前に、5分間セルフタッチの方法を紹介した動画をweb上で視聴しながらセルフタッチを行ってもらう。その前後で身体に触れて皮膚性状を主観的に評価してもらい、ストレス反応尺度に回答してもらう。④3ヶ月の実験終了後、②と同様の尺度にwebで回答してもらい、また②と同じ20名にはベースラインと同様の計測を行う。さらにその後1ヶ月間は特別な介入は行わず、再度②と同様の評価を行う。
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