研究課題/領域番号 |
21K03086
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分10030:臨床心理学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
松本 真理子 名古屋大学, 心の発達支援研究実践センター, 招へい教員 (80229575)
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研究分担者 |
高橋 昇 愛知淑徳大学, 心理学部, 教授 (10441619)
野村 あすか 名古屋大学, 心の発達支援研究実践センター, 准教授 (90747586)
田附 紘平 名古屋大学, 教育発達科学研究科, 准教授 (90804336)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 創造性 / 理系科学者 / 投影法 / ロールシャッハ法 / 知能検査 / 臨床心理学 / 想像性 / WAIS-Ⅳ / ナラティブアプローチ |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は,高度な創造的業績を有する科学者を対象として,創造性の芽生えから創造性発現に至る過程について,パーソナリティ特性と生活史を内包する社会環境要因に焦点を当て,創造性発現の基盤解明を目指す統合モデルの構築と、創造性育成への提言を行うことを目的とする。 1)投影法を用いて,認知・思考過程を中心としたパーソナリティ特性について分析し、想像性から創造性発現へと至る認知機能の特徴を解明。 2)創造性の芽生え期から創造的活動期に至る社会環境要因についてナラティブアプローチを通して解明。 本研究は,創造性研究への新たな視点に立つ臨床心理学的接近という点で,国内外初であり、独創性の高い成果が期待できる。
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研究実績の概要 |
調査対象者として理系科学者10名、理系大学院生10名の計20名の一連の心理検査および半構造化面接を終え、分析作業を進めた。データとして、心理検査:ロールシャッハ法、知能検査(WAIS-Ⅳ)、描画法、SCT(文章完成法)、半構造化面接を全員に実施した。調査にあたっては、名古屋大学教育発達科学研究科研究倫理委員会の承認後に実施した。調査データ公表は、すべて対象者の同意を得ている。 分析経過における成果については、理系科学者のロールシャッハ法を中心とした事例論文を1編(査読有)、日本ロールシャッハ学会誌に掲載(田附紘平・松本真理子・髙橋昇・野村あすか・松浦渉. 2022 創造性を有する理系科学者のロールシャッハ反応 ロールシャッハ法研究,26.20‐29)、分析成果の一部を国際ロールシャッハ学会で3編発表(筆頭発表者、W.Matsuura, A.Nomura, K.Tazuke、2022、オンライン発表)、また日本心理臨床学会において2編(松本真理子・田附紘平・野村あすか・山内星子・松浦渉・高橋昇 2022 理系科学者の創造性に対する臨床心理学からの接近可能性と意義に関する一考察 日本心理臨床学会第41回大会、山内星子・松本真理子・田附紘平・野村あすか・松浦渉・高橋昇 2022 理系科学者および理系大学院生の創造性‐ロールシャッハ法とWAIS指標に対するクラスター分析の結果から‐ 日本心理臨床学会第41回大会)、日本描画学会において1編(高橋昇・松本真理子・田附紘平・野村あすか・山内星子・松浦渉 2022理系科学者の創造性に関する検討‐2事例の「実のなる木・夢の木」描画を通して)と計6件の国内外学会に発表するなど積極的に成果公表につとめた。 2023年度には、これらの成果をさらに詳細に分析、論文投稿、学会発表の上、書籍化を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
調査データの収集を終えて、分析を進めており、成果はその都度発表してきた。理系研究者10名の心理検査(WAIS-Ⅳ、ロールシャッハ法、バウムテスト、SCT)と半構造化面接データについて統計分析および事例研究を進めた。統計分析からは主に3群に分類できること、それらについて創出型、解明型、折衷型と命名し、各群の特徴を抽出した。 特に、3群のうち創出型の特徴として、従来言われてきた拡散的思考に類似する豊かな想像性、や思考の拡張傾向が認められた。解明型では、客観的で詳細な観察と批判的思考が認められた。また両群の共通点として、常識的な外界の認知よりも自己の論理を優先する思考や認知特徴が認められ、創造性に繋がる思考・認知特徴と思われた。 知能検査(WAIS-Ⅳ)からは、両群とも処理速度が他指標に比して顕著に低得点でありプロフィールは両群類似した、いわゆるギフテッドに近いプロフィールであることが示された。描画からは、描画能力において未熟なものが両群に多く認められ田が、一方で言語による描画の説明は詳細で想像性豊かであることが示唆された。SCTにおいては、自己イメージの安定性と肯定、社会的にも安定していることが示唆された。一方、折衷型では、自己イメージや社会的な不安定さや悩みが記述されることもあった。 これらの結果を踏まえて、次年度は理系大学院生のデータを統合して、再分析を行い学会、論文発表の予定である。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度には、研究者および院生のデータを統合して再度クラスター分析を行い、その結果にそって、各群の知能検査と投影法(ロールシャッハ法、バウムテスト、SCT)の特徴を抽出する。また各群における半構造化面接のデータについても、家族、幼児期、小・中・高校時代、大学・大学院時代、研究者時代に分類し、各群の特徴を検討する予定である。現時点では、創出型、解明型、途上型、潜在型の4群に分類可能であり、創出型、解明型はこれまでの研究者集団での分析に類似する特徴が認められている。 一方、潜在型は、大学院生のみで成る群となっており、他3群とは、WAIS-Ⅳ、ロールシャッハ法において特に相違が認められている。具体的には、WAIS-Ⅳでは、個人によって能力の凹凸に特徴が認められ、極めて高い突出する能力を有している大学院生がいることも示されている。また「創造性とは何か」「創造性を育成するには」などの創造性をめぐる質問も研究者と大学院生に行っており、これらも群ごとにまとめる予定である。 これらを秋の学会で発表した上で、最終年度もしくは翌年度には書籍化して成果を広く公表する予定にしている。
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