研究課題/領域番号 |
21K03093
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分10030:臨床心理学関連
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
榎本 淳子 東洋大学, 文学部, 教授 (50408952)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 先天性心疾患 / 生涯発達 / 発達課題 / 社会文化的文脈 / アイデンティティ / 心理社会的特徴 |
研究開始時の研究の概要 |
先天性心疾患患者の多くが成人に達することが可能となり、患者の自立、社会参加が課題となっている。患者は生まれつきの病気であるがゆえに自分の状態を客観的に把握することが難しく、病気の捉え方によっては将来展望が持ちにくいことがある。本研究ではこのようなことを背景に、「生涯にわたる病気」を抱える先天性心疾患患者の心理社会的特徴を、微視的に個々の生涯発達の径路に位置づけ、その結果をもとに巨視的に患者の発達段階モデルを提示する。その際、患者の発達や生活に影響を与える日本の文化的要因、社会システムの特徴について検討し、病者の生涯発達を患者単体のみならず、文化や社会との関連を含めて複層的に明らかにしていく。
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研究実績の概要 |
本研究では、1.「生涯にわたる病気」を抱える先天性心疾患患者の心理社会的特徴を、微視的視点で個々の生涯発達の中に位置づけて捉えること、2. その結果をもとに巨視的視点で患者の発達段階モデルを提示すること、3. その際、患者の発達や生活に影響を与える日本の文化的要因、社会システムの特徴について検討することを目的としている。 本年度は、面接調査から得られた患者の生涯発達について、選択的最適化理論、ナラティヴ・アイデンティティの視点を用いて検討した。特に、先天性心疾患患者の場合、1. 生涯発達における獲得と喪失について、本来は加齢に伴って生じる喪失が、若年段階においても疾患に伴ってやりたいことができない(諦め)などの「喪失」を多く経験すること、2. これらの喪失を調整し、補償を行っていくためのアイデンティティの役割と機能が重要であることを示し、調査の結果と照らし合わせながら具体的に提示した。また、ナラティブ・アイデンティティの視点から、エージェンシーの役割、リデンプティヴ(redemptive)な語りに注目し、結果をまとめた。これらの成果は、国際学会(Biennial Meeting of the AEPC Working Group on Neurodevelopment and Psychosocial Care)にて発表した。 さらに先天性心疾患患者を対象とした国際調査においては、共同研究者によって不安・うつに関する国際比較調査結果が原著論文として発刊され、日本の患者は他国と比較して、最も不安が高い国であることが示された。また現在、共同研究者が投稿中の論文においては高所得国出身の患者は、身体機能がより高く、QOLが全体的に高いことが示され、社会的文脈が患者の身体機能や精神心理的状態の背景要因となっている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在、先天性心疾患患者の生涯発達の側面から捉えた面接調査の結果について様々な方法から検討している。すでに結果のひとつについては国際学会にて発表し、まとまりつつある。また国際調査のデータについては各国のデータ収集を終え、全体的な検討をし、共同研究者からグローバルな社会的文脈から捉えた患者の特徴について論文が投稿された。
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今後の研究の推進方策 |
面接調査結果については必要に応じて追加の面接を行いつつ、先天性という独特な慢性疾患をもつ患者の生涯発達の特徴を提示できるようにまとめていく。また、国際調査は、参加国全てのデータ収集を終えたものの、全てのデータを自由に使える段階にないが、日本のデータについては可能な範囲で分析し、日本の患者の文化的、社会的特徴について明らかにしていく。
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