研究課題/領域番号 |
21K03107
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分10030:臨床心理学関連
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研究機関 | 鳴門教育大学 |
研究代表者 |
山崎 勝之 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 特命教授 (50191250)
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研究分担者 |
内田 香奈子 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 准教授 (70580835)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | セルフ・エスティーム / 潜在連合検査 / 非意識連動型介入 / 小学校低学年 |
研究開始時の研究の概要 |
セルフ・エスティーム(SE)の概念の再構築が進む世界的な傾向の中、健康や適応を高める良好な自律的SEと低める問題のある他律的SEが弁別のうえ概念化されている。この概念化は理論・実証的に支持され、自律的SEは発達早期に形成基盤を持ち、低年齢の子どもほど介入効果が上がることが分かっている。しかし、低年齢で効果をもつ適応的な自律的SE育成への介入プログラムは世界的に見ても確認されない。 本研究では、小学校低学年を対象に、世界的にも類のない、絵画ベースのテスト刺激を用いた自律的SE潜在連合テストを作成する。そして、長時間にわたり高い参加動機づけを継続喚起できる介入プログラムを開発し、効果を検証する。
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研究実績の概要 |
令和3年度のコロナウィルス禍の影響で、研究はほぼ1年遅れたが、その点を除けばほぼ順調に進んでいる。つまり、令和4年度は令和3年度で実施予定であった研究を行い、令和5年度においては、令和4年度に実施予定であった研究を実施できた。そこで令和5年度は比較対照群を設定した上で、自律的セルフエスティームの育成プログラムの効果検証のために最初の教育介入を実施することができた。 今年度は、小学2年生児童80名(教育群2クラス54名、比較対照群1クラス26名)を対象に、全4時間の小学校2年生用自律的セルフエスティーム育成プログラムを実施した。そして、教育の前後に効果評価を行った(比較対照群は同時期に)。効果評価は、前年度までに完成された潜在連合テストと自律的セルフエスティームの3つの構成要素(自己信頼心、他者信頼心、内発的動機づけ)を測定する作文法を実施した。なお、比較対照群は2回目の調査後に、倫理上の理由から同じ教育プログラムを実施した。 その結果、最初の教育群と比較対照群の比較から、潜在連合テストは、比較対照群では教育実施前から後にかけて得点が有意に低下したが、教育群においては有意に増加し、教育効果が確認された。比較対照群のセルフエスティームが低下する現象は一般的によく確認されるが、教育実施群ではその状況の中でもセルフエスティームが上昇する効果が確認された。作文法では、内発的動機づけのみに同じ教育効果が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和3年度にコロナウィルス禍で遅延が生じた研究も令和4年度にその遅れを取り戻すことができた。令和5年度も、新型コロナウィルス感染症も第五類になり落ち着きを取り戻し、最初の小学校2年生での研究は順調に開始され終えることができた。しかし、続く小学校1年生での研究は実施予定であった徳島県下で年末から年明け3月にかけてインフルエンザ警報が発令され、児童の欠席が増え、その実施を行うことができなかった。 令和5年度の最初から小学校2年生において自律的セルフエスティームの育成プログラムは順調に実施され、自律的セルフエスティーム潜在連合テストを使用して調べた教育効果も比較対照群との比較から統計的に有意な効果を確認した。この良好な効果評価結果から、この教育が小学校1年生にまで及ぶことが十分に予想されたが、上記の理由でその検証は、令和6年度に繰り越されることになった。 本研究は小学校の低学年を対象にして、自律的セルフエスティームの教育プログラムを開発し、また同じく小学校低学年において自律的セルフエスティームの変化を測定できる潜在連合テストを開発した上で、実際に小学校1,2年生で教育を実施することによりその効果を確認することが必要であった。次年度の最初に、残る1年生でこのことを完遂する予定である。また次年度には、総合的に1,2年生において、群の構成でも効果の持続性でも発展した効果評価研究を実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成6年度においては、平成5年度に小学校2年生に実施した研究と同様の規模で自律的セルフエスティームの効果評価研究を実施する。すなわち、教育を行う介入群と教育を行わない比較対照群を設定し、両群の比較で自律的セルフエスティームの教育介入効果を調べる。 さらに、その後の最後の研究においては、小学校1,2年生を同時に対象にして、同じ教育プログラムならびに潜在連合テストを用いて教育効果の検証を発展させる。この場合、教育介入群のクラス数と比較対照群のクラス数を増やし、効果評価の持続性を期間を延ばして(可能ならば最大半年ほど)確認する。その場合、効果が減衰して何らかのブースターセッションを入れる必要があれば、そのブースターセッションの内容と挿入の仕方についての方法も開発しておきたい。 そして、この科研事業を閉じるにあたり、教育プログラムの目標、方法、教材等を含めたDVDパッケージを作成する。このDVDを利用すれば、この教育プログラムを学校が独立して実施できることを目指す。あわせて潜在連合テストの詳細な実施マニュアルと採点化マニュアルを作成し、質問紙とは異なり学校側には実施が困難な側面の多い潜在連合テストの実施可能性を広げたい。この最後のパッケージ作成からマニュアル作成は、この教育を多くの学校で実施していくためにも重要な作業になる。
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