研究課題/領域番号 |
21K03125
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分10040:実験心理学関連
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
饗庭 絵里子 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (40569761)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | ピッチ知覚 / ピッチ不安定性強調現象 / 絶対音感 / 相対音感 / 音程 |
研究開始時の研究の概要 |
人間のピッチ知覚には,聴覚抹消系で抽出された音の周期情報を手掛かりとするだけでは説明できない様々な現象がある.本研究においては,人間が相対音感を活用して音高を予測し,不安定な周期情報を補償することによって,より効率的に素早くピッチを知覚している可能性を明らかにする.実験においては,単純に刺激を聴取して反応する聴取実験に加え,能動的に予測を強く引き起こすような聴取実験を実施することで,より明確に予測による影響が観察できるよう工夫する.加えて,音の周期に依存して喚起される脳波の測定を行うことで,聴覚末梢系から知覚に至るまでの統合的なピッチ知覚のメカニズムを明らかにする.
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研究実績の概要 |
人間のピッチ知覚には,聴覚抹消系で抽出された音の周期情報を手掛かりとするだけでは説明できない様々な現象がある.本研究においては,申請者が発見したピッチ不安定性強調現象を足掛かりとして,人間が音程レベルの予測を活用して不安定な周期情報を補償し,ピッチを知覚している可能性を明らかにすることを目的として検証を行った. ピッチ不安定性強調現象においては,定常的なピッチ感をもつ刺激音を複数回聴取した後,西洋音階より若干狭い周波数差を持つ音程だけ離れた音に移行した際に,刺激音の開始部分でピッチが揺らいで不安定になるような知覚を得る.一方で,西洋音階に基づく音程間で移行した場合には,ほとんど不安定性は感じられない.この現象が生じる原因として,脳が次にくる可能性のあるピッチを音程レベルで予測している可能性が考えられる. そこで本研究においては,ピッチ不安定性強調現象がどのような刺激条件でより顕著に生じるのかを検証する①聴取実験と,能動的な予測を生じさせた状況下で行う②能動的聴取実験,同刺激を聴取している際の脳波である③FFR(Frequency Following Response)計測実験の3つを実施する. 今年度は①聴取実験(純音,ランダム音列,既知の楽曲等を刺激として利用)および③FFR計測実験を実施した.その結果,聴取実験においては,いずれの刺激においても非西洋音階的音程である場合に,ピッチ不安定性強調現象が生じることが示された.特に既知の楽曲だけではなくランダム音列でも生じるという結果は,当初の仮説通り,音程レベルでの予測を支持するものであった.また,FFRを計測した結果,ピッチ不安定性強調現象が生じている状況であったとしても,本現象が生じていない場合と同様に物理的な刺激の周期性と同様の周期性が示されたことから,本現象は末梢系ではなく,より高次で生じている現象であることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究においては,①聴取実験と,能動的な予測を生じさせた状況下で行う②能動的聴取実験,同刺激を聴取している際の脳波である③FFR計測実験の3つを実施を予定している.2022年度は,2年目であるが,このうち①および③が計画通り実施を完了した状態である.また,これについて国内会議発表2件,査読あり国際会議発表1件を行っており,対外発表についても順調に実施を進めている.加えて,現在,国際誌への投稿を準備している. ただし,②について,当初の計画よりも,実験によって得られた回答を①と②の条件間で比較することが難しいことが予想され,現状,実験計画を練り直しているところである.
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今後の研究の推進方策 |
能動的な予測を生じさせた状況下で行う②能動的聴取実験について,当初の計画よりも,実験によって得られた回答を単純な①聴取実験と②の条件間で比較することが難しいことが予想され,現状,実験計画を練り直しているところである.ただし,ダミーの刺激(ピッチ不安定性強調現象が生じないと仮定される条件下で,物理的に刺激を不安定にさせたような刺激)を用いることで,この問題の解決が可能になる可能性があり,これを実施予定である. 加えて,ベイズ推定を使ったモデルを構築し,本現象における聞こえについて,モデルによる予測とそれを検証する実験を組むことで,より効率的に研究を推進することができると考えている.また,モデルの活用により,聴覚メカニズムのどのような仕組みが本現象に寄与しているのかを考察する助けとなる.これについては,ベイズ推定を使った知覚モデルを使った研究を行っている研究者から,協力を得るべく,既に打ち合わせを開始している.
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