研究課題/領域番号 |
21K03135
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分10040:実験心理学関連
|
研究機関 | 日本福祉大学 |
研究代表者 |
中村 信次 日本福祉大学, 教育・心理学部, 教授 (30351084)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
|
キーワード | 運動知覚 / 自己身体運動 / ベクション / 非輝度定義運動 |
研究開始時の研究の概要 |
視覚誘導性自己運動知覚を駆動する視覚要因を同定することを目的とし、これまで十分な分析がなされていない視覚刺激の非輝度定義運動のベクションに及ぼす影響を体系的に検討する。具体的には、方位定義回転をベクション駆動刺激として用い、①方位定義回転による自己運動知覚強度の計測、および、刺激呈示領域や刺激奥行き構造など、ベクション強度に対し強い影響を及ぼすことが既知の視覚刺激要因の検討、②身体動揺や残効等、他の知覚・運動現象に及ぼす影響の分析、③自発的自己運動状況下での視覚情報処理の様相の検討、④方位定義回転の以外非輝度定義運動を用いた検証などを行う。
|
研究実績の概要 |
2022年度は、昨年度実施した方位定義回転運動(フラクタルローテーション:連続的な方位の変化により視覚刺激の運動が知覚される現象;輝度定義運動エネルギーは随伴しない)が視覚誘導性自己動知覚(ベクション)を誘導する効率を算定するための心理物理実験を継続した。それとともに、位置および方位の変化を伴わないが、連続的な輝度定義運動エネルギーを含有する視覚刺激として、Four Stroke Apparent Motion(4SAM)を取り上げ、様々な輝度コントラスト水準を持つフラクタルローテーション刺激と4SAM刺激とを重畳させることにより、視覚刺激に含まれる方位定義成分と輝度運動定義成分を任意の比率で操作することの可能な刺激系統を作成した。これにより、方位定義運動と輝度定義運動がベクションを駆動する効率を独立して査定することの可能な実験パラダイムを実現することができた。上記刺激を用いた本格的な心理物理実験を実施する準備として、予備的観察を行い、両刺激運動成分の検討を適切に行うことの可能な刺激条件設定を決定した。さらに、4SAM刺激を単独で用いて、輝度定義運動エネルギーのみが存在し、視覚対象の位置の変位が生じない場合のベクションの様相を分析する心理実験を実施した。観察者実験の結果、平行運動、拡大運動、回転運動のいずれの運動方向においても、4SAM刺激が、通常の実際運動刺激よりはその効果は低いものの、依然有効にベクションを誘導可能であること、4SAM刺激と実際運動刺激がベクションを駆動する効率の差異は、平行運動刺激においてより大きく、拡大運動刺激、回転運動刺激においてより小さくなる(特定の条件設定下では、4SAM運動条件と実際運動条件の有意差が消失する)ことなどを見出した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度研究計画推進に当たっては、前年度のコロナウィルス感染防止対策に伴う観察者実験推進の遅れを取り戻すため、2022年度実施を予定していた実験の継続を余儀なくされた。そのため、本来今年度実施する計画であった、非輝度定義運動と輝度定義運動との重畳刺激を用いた心理実験の本格着手には至っていない。また、前年度実施した心理物理実験においては、感染防止対策の一環として実験時間を極力短時間に制限したため、刺激条件操作の範囲が十分なものとはならず、結果として非輝度定義運動刺激がベクションを誘導する効率が、当初想定していたレベルよりは弱いものとなっていた。今年度は、感染防止対策上の制約が緩和され、必要な繰り返し回数を伴った実験実施が可能となったが、前年度の刺激調整が不十分であったことが影響し、重畳刺激を用いた実験に関しては、安定した結果を得ることができなかった。この影響のため、研究計画を調整し、刺激調整のための予備観察を再度慎重に実施することとなった。研究計画に一部遅滞が生じているが、次年度以降、心理物理実験の実施ペースを増加させ、計画当初の成果の達成を期する。
|
今後の研究の推進方策 |
2023年度においては、非輝度定義運動と輝度定義運動との重畳刺激を用いたベクション実験を実施し、視覚運動情報からの自己運動抽出において、輝度定義運動エネルギーと位置・方位変化情報との関与の度合いを独立に査定する実験を実施する。それに引き続き、自己運動知覚の残効や視覚的正中線の変位など、他の知覚現象に及ぼす影響や、歩行やポインティング行動などの身体運動に及ぼす影響などを分析することにより、非輝度定義運動により駆動されるベクションが、通常の実際運動により駆動されるベクションと同等の現象的特徴を持つのかを吟味する。さらに、これまで主に身体の回転運動に限定して検討していた非輝度定義運動がベクションに及ぼす効果を、身体の前後方向への平行運動にも拡張可能か否かを検討する。これらの検討に基づき、視覚情報が自己運動知覚に及ぼす影響を包括的に記述可能な知覚心理学的なモデルの導出を行う。
|