研究課題/領域番号 |
21K03141
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分10040:実験心理学関連
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
渡邉 慶 大阪大学, 大学院生命機能研究科, 助教 (00772740)
|
研究分担者 |
番 浩志 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所脳情報通信融合研究センター, 主任研究員 (00467391)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
|
キーワード | 二ホンザル / デフォルトモードネットワーク / fMRI計測 / 高次認知機能 / 非侵襲実験 / ニホンザル / 局所電場電位(LFP) / fMRI / Spiking activity |
研究開始時の研究の概要 |
デフォルトモードネットワーク(DMN)は,安静時に大きな活動を示す領域,逆に言えば,タスク時に活動が減少する脳領域である。DMNは極めて重要な機能を担うとされるが,その詳細は未解明である。本研究では(1)独自の頭部固定法を用いた完全非侵襲サルfMRI計測を行い,DMNコア領域を同定する。(2)各コアの,安静時とタスク時のニューロン活動・フィールド電位を解析し,コア間の活動特性の差異を明らかにする。(3)薬物注入による各コアの活動抑制を行い,行動変容を解析する。このように,細胞活動からスタートし,領域内フィールド電位,領域間相関へと知見を積み重ね,DMN機能をボトムアップで解明することを試みる。
|
研究実績の概要 |
当該年度は、以下の成果を得た. (1)前年度までに確立した,プラスチックマスクを用いた完全非侵襲のサルfMRI計測法には幾つかの問題点(長時間計測時に,サルの体動頻度の上昇を抑制できない・もともと頻繁に動くサルではクリーンなfMRIデータを取得しにくい)があった.当該年度は,固定に用いるマスクの強度を高めるなど,作成方法にいくつかの改良を加えることで,これらの諸問題を解決した.実験に用いた3頭のサルの全てにおいて,標準的なretinotopic mapping(wedgeによるvisual meridian刺激,expanding/contracting annulusによる刺激)を,標準的な侵襲的ヘッドポストによる頭部固定サルと,同程度の精度で実行可能であることを確認した. (2) 前年度に引き続き,計測方法に上記(1)の改良を加えたうえで,1頭のサルにおいて覚醒安静時とタスク時のサル脳fMRI計測を行い,DMNコア領域の同定を試みた。脳活動に由来する血液酸素飽和度の変動(BOLD信号)を分析した結果,内側前頭葉において,安静時においてタスク時よりも有意に高い活動が見られたが,先行研究においてDMNのコア領域とされているその他の脳領域は検出されなかった.現在,2頭目のサルを用いて計測を継続している. 当該年度までの研究で確かに言えることは,完全に非侵襲なプラスチックマスクによる頭部固定で,サルfMRI実験が確かに可能であるということである.本手法は,事前の手術など侵襲的な操作を全く必要としないことから,覚醒行動中のサルを用いた脳イメージング研究のハードルを著しく下げると考えられる.この結果に関して,現在論文投稿準備中である.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度は,デフォルトモードネットワーク(DMN)の生物学的基盤の解明の第一歩として,ヒトに進化的に近縁なニホンザルにおいてfMRI計測を行い,DMNのコア領域の同定を目標としていた.1頭のサルにおいてfMRI計測を実行し,前頭葉内側面において,DMN領域のシグネチャーである「安静時>行動タスク時」となる脳活動を観察した.行動タスクブロックでは,3分間の連続注視点注視(報酬は3-7秒ごとにランダム提示)と,視覚誘導性眼球運動課題を用いた.今回観察された内側前頭葉の活動は,ヒトおよびサルの先行研究の報告と同様のものであったが,数多くの先行研究によりDMNのコア領域とされているその他の領域(Precuneus,下頭頂小葉)は今回の実験では見出されなかった. 当初の計画では,当該年度までにDMNのコア領域を同定し,最終年度においてそれらの領域の神経活動を電気生理学的手法によって検討する予定であった.このため,現在の進捗状況は当初の計画よりやや遅れていると判断した. 当初の計画よりやや遅れている理由のもうひとつは,当該年度は,DMN同定実験を遂行する前に,非侵襲なプラスチックマスクによる頭部固定に生じていたいくつかの問題点(上記,研究実績の概要を参照)を解決する必要があったことである.この点については,改良が上手くいき,この手法によるサルfMRI実験が確かに可能だと示すことができた.当該年度の研究成果をもとに,国際学会,国内学会において発表を行った.
|
今後の研究の推進方策 |
次年度も引き続き,3頭のサルを用いたfMRI計測を行う.得られた結果を元に,速やかに電気生理実験に移行する.
|