研究課題/領域番号 |
21K03146
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分10040:実験心理学関連
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研究機関 | 目白大学 |
研究代表者 |
時田 みどり 目白大学, 保健医療学部, 教授 (40571112)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 平均面積推定 / 平均表情推定 / ワーキングメモリ / 視覚探索 / 数量認知 / 要約統計量表象 / 平均量推定 / 個人差 / 視覚的注意 / 要約統計量 / 熟達化 / 個人差要因 / バイアス |
研究開始時の研究の概要 |
人には,短時間の内に複数の物や出来事の大凡の数量や変化量(要約統計量)を推測する認知能力が備わっている.この能力は,事物の特徴や関連する感覚器に関わらず見られることが指摘されている.一方,要約統計量を推測する際の精度やバイアスには個人差の生じることが示され,その要因の解明が重要な課題となっている.本研究では,実験室とWeb上での実験を併用して幅広い参加者を対象とし,多様な認知機能との関連性を精査しながら個人差要因を解明する.続いて,各要因を踏まえた効果的な教示法や練習プログラムを考案し,練習効果や異なる刺激条件への転移を検討する.実験結果をもとに,要約統計量表象の熟達化過程を明らかにしていく.
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研究実績の概要 |
ヒトは,複数の要素で構成される刺激群の平均量やバラツキ感を表象し,表象した要約統計量を日常場面でのさまざまな課題に利用している.先行研究では,このような認知過程を要約統計量表象(summary statistics representation, SSR,また,ensemble perception)と称し,その 統合的な処理メカニズムの解明が試みられている.本研究では,1)要約統計量推定における精度の違いやバイアス等の個人差を生じさせる要因は何か,2)どのような教示や練習方法によって,推定精度の向上やバイアスの低減を実現できるか,3)SSR機能の熟達化は,適応的な判断や意思決定にどのように寄与するのか,の3つの問いについて,実験室での心理物理実験を実施して検討している.平均量推定対象の刺激は,視覚処理の処理レベルに着目し,円の面積と,顔表情の二種類とする. 2022年度は,平均面積推定過程の個人差要因を特定することを目的として,平均面積推定課題と,認知的個人差が確認される3つの認知課題(数知覚課題,視覚探索課題,視空間作業記憶課)並びに平均値推定課題と関連することが予測される全体面積推定課題の5課題を被験者内要因にて実施し,各課題間の関連性を検討した.結果から,1)平均値推定課題と他の認知課題の成績に顕著な関連性はみられないこと,2)視空間作動課題と数識別精度・視覚的探索課題の成績とに軽い相関があることが示された.これらの結果から,平均値の推定には,他の認知能力とは独立した特徴的なメカニズムが関与している可能性が示唆された
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度は,主に,平均面積推定過程と他の認知能力との関連性についての実験検討を行ったが,平均表情認知過程については,刺激作成と視線計測装置の準備をかねた予備実験のみにとなった.特に,視線計測の測定手順及び分析方法についての調査に時間を要し.計画していた実験室実験並びWeb実験の実施にいたらなかった.このため,進捗状況の区分を「やや遅れている」とする.具体的な進捗状況は,以下の通りである. 1)35名の対象者に対し,同時呈示刺激の平均面積推定課題,円の全体面積推定課題,数の把握をする数知覚課題,ターゲット検出課題,短期記憶を測定するターゲット再認課題の5課題を実施し,平均面積推定と他の認知課題の成績との関連性を検討した.予想とは異なり,平均面積推定課題の成績と他の認知課題との成績に顕著な関連性は示されなかった.結果から,平均値推定能力は,主な認知能力とは独立した機能であることが示唆された. 2)平均表情推定課題を作成するために,顔表情刺激の作成方法を調査し,2種類の顔表情刺激用データベース(ARTとAIST)とモーフィングソフト(FantaMorph 5.3)を用いて刺激を作成した.作成した刺激について,予備実験を実施して値の設定の調整を行った. 刺激作成は,研究助手5名に依頼した. 3)平均表情推定過程における対象者の情報処理特性を検討することを目的として,視線運動解析装置における入力時の行動特性を測定する手段として,視線計測の検討を行った.当初の研究計画では予定されていなかったが,行動特性を推測する上でも,学習過程における介入手段としても,視線情報が有効であることを確認した.
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今後の研究の推進方策 |
2022年度の実験結果並びに刺激作成準備状況を踏まえて,最終年度である2023年度は,1)視線計測装置を用いた平均表情推定過程における個人差要因の検討,2)要約統計量推定の精度の向上やバイアスの低減を計る練習方法や教示法の考案,3)判断や意思決定に影響を与えると思われるSSR機能の熟達化のプロセスの検討,の3点について研究を進めていく予定である.以下に詳細を示す. 1)2023度の5月-7月は,昨年度行った予備実験の結果を踏まえ,平均表情認知における個人差要因の解明を行う.平均表情認知と表情認知課題,平均面積抽出課題の成績の関連性を検討するとともに,各刺激についての注視時間,視線移動回数等との関連を明らかにし,視線運動が平均表情推定にどのように寄与するのか検討する. 2)平均面積推定並びに平均表情推定の結果を踏まえて,個人差要因が明確となった参加に対して要因に応じた練習課題を考案し,練習セッションを実施した上で,平均値推定の成績が向上するか否かを検討する.実験室での効果が示された後に,Webでの練習課題を作成し,実施する.その際に,平均値推定課題の教示別学習効果を検討する.有効であると判断される教示を考案し,練習セッションを行ってその効果を検討する計画である. 3)上記2)で示された練習効果が,刺激属性間で転移が生じるかを検討し,転移が生じる要因と転移が生じない要因とを明確にする.刺激間で共通の要因と,刺激属性に固有の要因の背景にある認知機能を推測し,両者の機能を備えた平均値推定課題の高成績者を抽出して,熟達化の定義を行う.熟達観察者と,その成績ならびに予測される平均値推定過程についての熟達化モデルを構築する.
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