研究課題/領域番号 |
21K03191
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分11010:代数学関連
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研究機関 | 愛知工業大学 |
研究代表者 |
大島 和幸 愛知工業大学, 工学部, 教授 (30547980)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2022年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2021年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
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キーワード | 楕円化 / 量子トロイダル代数 / 表現論 / 頂点作用素 / W代数 / 可積分系 / 楕円類似 |
研究開始時の研究の概要 |
数理物理学および可積分系において重要な代数系としてアフィン量子群があり,その表現論はよく調べられている.アフィン量子群の一つの拡張として量子トロイダル代数があり,近年,マクドナルド作用素に関する研究やネクラソフ分配関数に関する研究など数理物理学のさまざまなところに現れている.一方,アフィン量子群のもう一つの拡張としてその楕円類似である楕円量子群があり,8頂点模型との関連が調べられている. 本研究では,この二つの自然な拡張として,量子トロイダル代数の楕円類似を考え,その表現論を整備し,数理物理学および可積分系において,どのような模型の代数解析を可能にするのか,ということを明らかにしたい.
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研究実績の概要 |
本研究の目的はランクが2以上gl_n量子トロイダル代数の楕円化を定義し,可積分系への応用を目指すことである. 2021年度には,まずその足掛かりとして,gl_1量子トロイダル代数の楕円化である楕円gl_1量子トロイダル代数を調べ,その結果は共同研究者の今野均氏(東京海洋大学)との論文”Elliptic Quantum Toroidal Algebra U_{q,t,p}(gl_{1,tor}) and Affine Quiver Gauge Theories”にまとめ,Letters in Mathematical Physicsに掲載予定である. 今年度は以上の計算をgl_nに拡張することを試みた.まず,一般のリー代数に対する量子トロイダル代数について楕円化を定義し,ホップ亜代数の構造を定めた.そして楕円量子トロイダル代数のZ代数を計算した結果,楕円量子トロイダル代数のZ代数は元の量子トロイダル代数のZ代数に等しく,Z代数は楕円化の影響を受けないことが分かった.さらにsimply-lacedな場合にレベル(1,M)表現を構成し,またgl_nに対する場合にレベル(0,1)表現を構成した. 以上の結果は2022年8月29日~9月2日にフランス・リヨンで開催された研究集会「Recent Advances in Quantum Integrable Systems」において「Elliptic Quantum Toroidal Algebras and their representations」というタイトルで講演発表したほか,論文”Elliptic Quantum Toroidal Algebras, Z-algebra Structure and Representations”に共同研究者の今野均氏と共著で執筆し,論文誌に投稿中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度,研究がおおむね順調に進展した理由として,2022年にはCovid-19による行動制限が徐々に解除されたことが挙げられる.その結果,研究集会も対面で開催されることが増え,そのような研究集会で行われた研究の情報交換は大変有益であった.また,共同研究者との研究打ち合わせも実際に会ってできるようになり,議論のしやすい環境で研究を進めることができた.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として,これまでの結果を踏まえて,まずは,ランクが2以上のgl_nに対する楕円量子トロイダル代数に対しては,レベル(1,M)表現とレベル(0,1)表現を構成できているので,そのテンソル表現上に頂点作用素を構成する.この構成については頂点作用素のおおよその形を設定してintertwining関係式を書き下して比較することにより求めることができると考えている.そして,得られた頂点作用素から変形W代数を導出することについても,gl_1の場合の結果を参考にしながら計算できるものと思われる.そして,この変形W代数から導かれる「ネクラソフ分配関数」はgl_1の量子トロイダル代数から導かれる「通常のネクラソフ分配関数」の自然な拡張になっているであろうと期待している. 一般のリー環に対する楕円量子トロイダル代数の表現論の整備に関しては,レベル(1,M)表現についてはFrenkel-Jing のKac-Moodyリー環のaffinizationに対するレベル1表現の構成を拡張することによってsimply lacedの場合は構成ができたので,non-simply lacedの場合に取り組む予定である.この場合はKac-Moodyリー環の場合におけるBernard-Thierry-Miegのような形でできるのではないかと考えているが,具体的に計算はまだ行っていない.レベル(0,1)表現については,gl_n以外の量子トロイダル代数における先行研究も全くなく,現段階で見通しは立っていない.このような表現論の構成についても今後の研究の課題の一つである. さらに,楕円においても楕円でない場合においても量子トロイダル代数に対するRLL定式化については全く知られていないが,可積分系を考えるうえで非常に重要な課題と考えている.
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