研究課題/領域番号 |
21K03219
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分11020:幾何学関連
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
長瀬 正義 埼玉大学, 理工学研究科, 名誉教授 (30175509)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | transverse / Dirac operator / contact Riemannian / パラメトリックス / ラプラシアン / 接触リーマン多様体 / ディラックラプラシアン熱核 / 漸近展開係数 / エルミート丹野接続 |
研究開始時の研究の概要 |
接触リーマン多様体の研究は可積分ケースを中心に進められてきた。そのケースでは田中ウェブスター接続と呼ばれる強力な武器があり膨大な研究結果が得られている。一方,非可積分ケースでは丹野修吉氏の導入した接続を武器に研究が進められてきた。当代表者は熱核研究に際して氏の接続に不満を持ち,エルミート丹野接続と名付けた接続を導入した。この接続については,当時の目的を超えて有用性が明らかになりつつある。当研究では,擬微分作用素である Toeplitz 作用素の指数の研究への応用や,Kohn-Rossi ラプラシアンの熱核の漸近展開係数についての研究への応用を目指す。
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研究実績の概要 |
当研究代表者は,今年度,(可積分性を課さない)一般接触リーマン多様体の持つ横断的ディラック作用素について考察した。この多様体は Reeb 葉層構造を持ち,それと横断的な成分より構成されるディラック作用素をそのように呼んでいる。主な興味の対象は,その作用素の二乗の対角成分Dである。これは楕円型ではないが,あるケースでは楕円型のような振る舞いをする。そうしたケースでの横断的ラプラシアンD の主要部分は実は 良く知られているKohn-Rossiラプラシアンに一致することを当代表者は明らかにした。この結果より例えば熱核exp(-tD)の唯一存在が導かれ,それの漸近展開係数の明示を当研究では目指し,十分満足すべき結果を得た。なお,Dのパラメトリックスの明示にも成功しているが,こうした研究において重要な役割を果たすのが当代表者の導入したエルミート丹野接続である。当研究課題では一般接触リーマン多様体に関連する研究においてその接続が非常に有用な道具であることを証明したいと考えており,以上の研究もそうした試みの一例である。実際,その道具なしには係数の明示等は非常に困難と思われる。 なお,この作用素に関する先行研究には Glazebrook, Kamber, Kordyukov 等によるものがあるが,彼らは一般的なリーマン多様体上のリーマン葉層構造に横断的なディラック作用素を扱い,それの核の消滅定理について論じており,上述の熱核問題の研究の可能性にも言及しているが進展は見受けられないようである。当研究に現れるReeb葉層はリーマン葉層ではなく,実は核の消滅問題については扱いに成功していないが,一方,熱核問題については上述のように成功している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は,一般接触リーマン多様体上の Getzler symbolやKohn-Rossiラプラシアンのパラメトリックス,更に横断的ディラック作用素について考察し,以下の論文にまとめた。 ・M. Nagase, Getzler's symbol calculus and the composition of differential operators on contact Riemannian manifolds, Osaka J. Math. 60 (2023). 799--813(査読あり) ・M. Nagase, Parametrix and the Kohn-Rossi Laplacian on contact Riemannian manifolds: Osaka J. Math に掲載決定済み(査読あり) ・M. Nagase, The transverse Dirac operators on contact Riemannian manifolds (査読前論文) : 「研究実績の概要」に述べた研究結果をまとめた論文
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今後の研究の推進方策 |
現在,次の二つの課題への取り組みを考えている。 (1)可積分接触リーマン多様体上で,Chern-Moser はある種の Cartan 接続(今日ではそれは Chern-Moser 接続と呼ばれている)を構成して見せた。当代表者はその構成を非可積分ケースまで拡張したいと考えている。この研究の一部は研究発表論文として既に発表済みである。 (2)リーマン多様体M上の単位接ベクトル束の全空間UMは接触リーマン構造を持ち,その構造が可積分であることはMの曲率の消滅と同値であることが知られている。当代表者は,非可積分なケースも込めて接触リーマン構造の研究を続けてきた。特に,その上の Fefferman空間の計量のスカラー曲率の研究(Leeの定理の拡張)やトウィスタースピノールの研究(Baumの研究の拡張)等を念頭に,典型的接触リーマン多様体であるUM上でそれら結果の更なる詳細な研究を進めたい。
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