研究課題/領域番号 |
21K03223
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分11020:幾何学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
岩井 敏洋 京都大学, 情報学研究科, 名誉教授 (10021635)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | バルク・エッヂ対応 / スペクトル流 / チャーン数 / Landau-Peierls量子化 / Jahn-Teller 効果 / 第2チャーン数 / 時間反転対称性 / Born-Oppenheimer / Jahn-Teller effect / bulk-edge correspondence / Dirac operator / second Chern number / Dirac oscillator / Chern number |
研究開始時の研究の概要 |
量子系のパラメータ変化に伴うエネルギー固有値のバンド構造の変化と、対応する半量子系のトポロジカルな変化をチャーン数や写像度の変化として捉える研究である。半量子系とは、量子系のスペクトル構造がいくつかのバンドに分けられるとき、スペクトル密度の高い部分にあたる変数を古典的に捉え、間隔の開いているバンドに対応する変数を量子力学的に取り扱ったものである。トポロジカル絶縁体の分野では、バルク・エッヂ対応に相当する研究であり、量子系のスペクトルとトポロジーとの関連を調べるという意味で共通している。
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研究実績の概要 |
バルク・エッヂ対応について研究を続けてきた. 昨年度の研究では第2チャーン数のかかわるモデルとして、2つの2次元球面の直積空間(底空間と呼ぶ)上で定義され、エルミート行列の形に表される1パラメータのハミルトニアンを取り上げた。対応する量子系との間で、バルク・エッヂ対応の成り立つことを証明した。その結果はすでに論文として出版されている。今年度は、底空間が2つの2次元トーラスの直積空間の場合を研究した。ここでいう2次元トーラスは固体物理学でのBrillouin帯域で、運動量空間に属するものであり、先見的には相空間の構造は持たない。しかし磁束密度が付加される場合には、相空間の構造をもち得る。この場合には、運動量空間で定義された半量子的はハミルトニアンの古典変数を Landau-Peierls 流に量子化できる。この手法でバルク・エッヂ対応の研究をしたものを論文にして投稿中である。さらに、この手法を利用して上述の2つの2次元トーラスの直積空間上のハミルトニアンとその量子化とについて、バルク・エッヂ対応の成り立つことを調べたが、こちらはまだ投稿準備中である。さらに、位相的絶縁体のモデルである Kane-Mele モデルについても、バルク・エッヂ対応の観点から研究したが、まだ投稿には至っていない。 さらに、動的 Jahn-Teller 効果を持つ平面3原子分子について研究した。非常に特別な場合であるが、Born-Oppenheimer 近似が成り立つとして、平面3原子分子の可積分モデルを構成し、その固有値と固有関数とを求めた。このモデルは、Dirac の単極子と共通するところがあるが、有界軌道を持つ点が異なる。こちらの研究はすでに出版済みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一昨年度は、論文投稿からレフェリー報告の受取りまでかなりの時間がかかり、かつ論文修正でもまた時間がかかったが、昨年度ようやく論文の出版に至った。その結果を踏まえて、その後の研究は比較的順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
研究実績の概要の欄でも述べたが、現在手元にあるバルク・エッヂ対応に関するまとまった研究を論文に仕立てることが当面の計画である。その他にも、コロナ禍以降久しぶりに訪れたダンケルク(フランス)の研究者との研究討論の中から、Jahn-Teller 効果の研究の後継として、Renner-Teller 効果を含めたより広い範囲の研究に着手したい。アイデアの段階ではその方向性は見えている。
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