研究課題/領域番号 |
21K03254
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分11020:幾何学関連
|
研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
豊田 哲 工学院大学, 教育推進機構(公私立大学の部局等), 准教授 (50599701)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
|
キーワード | CAT(0)空間 / 距離空間 / 非正曲率性 |
研究開始時の研究の概要 |
曲率は, リーマン多様体と呼ばれる滑らかに曲がった空間の性質を捉えるための基本的概念である. 近年, 測地的距離空間と呼ばれる任意の二点を二点間の距離と一致する長さの曲線で結ぶことができる(滑らかとは限らない)空間に対して, CAT(0)空間と呼ばれる「曲率が0以下の測地的距離空間」というべきものが定義され, 重要な役割を果たしている. 一方, 測地的とは限らない一般の距離空間に対し, 「曲率が0以下」という概念を拡張するためにはCAT(0)空間へ距離を保つ埋め込みが可能な距離空間を特徴付けることが基本的な課題となるが, 未解決である. 本研究ではこの問題の解決, あるいは部分的解決を目指す.
|
研究実績の概要 |
本研究は, 非正曲率距離空間の部分集合の性質, 特に全てのCAT(0)空間において成立する二次距離不等式(以下、CAT(0)二次距離不等式と呼ぶ)を特徴づけることを目標に研究を進めてきた. また, 本研究では, そのための最初のステップとして, いわゆる「重み付き4点不等式」から導かれないようなCAT(0)二次距離不等式を見出すことを掲げてきた. 2023年度の本研究では, Andoni, Naor, Neimanの3人によって確立されたCAT(0)二次距離不等式の族に注目して研究を進めた. この不等式族は, 「重み付き4点不等式」よりはるかに多くの不等式を含み, 現時点までに明示的に記述された全てのCAT(0)二次距離不等式を含むものである. そのため,「この不等式族から全てのCAT(0)二次距離不等式が導かれるか?」と問うことは自然である. 2023年度の研究において, 報告者は最終的にこの質問を否定的に解決した. すなわち, Andoni-Naor-Neimanの不等式族からは導かれないCAT(0)二次距離不等式が存在すること, 言葉を変えると, Andoni-Naor-Neimanの不等式族に含まれる全ての不等式を満たすにも関わらず, いかなるCAT(0)空間へも距離を保って埋め込むことができない距離空間が存在することを証明した. この内容の一部は, 2024年1月に熊本大学にて行われた研究集会「測地線及び関連する諸問題」において「On quadratic metric inequalities that hold true in every CAT(0) space」というタイトルで発表した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最終的な目標の達成には至っていないものの, Andoni-Naor-Neimanの不等式族からは導かれないCAT(0)二次距離不等式が存在すること, 言葉を変えると, Andoni-Naor-Neimanの不等式族に含まれる全ての不等式を満たすにも関わらず, いかなるCAT(0)空間へも距離を保って埋め込むことができない距離空間が存在することを証明できたことは, 本研究において意義のある成果だと考えている.
|
今後の研究の推進方策 |
2023年度までに, これまで本研究において注目してきた「重み付き4点不等式」よりもはるかに多くの不等式を含む「Andoni-Naor-Neimanの不等式族」に含まれる全ての不等式からも導くことができないCAT(0)二次距離不等式が存在するという結果を得ることができた. これにより, Andoni-Naor-Neimanの不等式族から導かれないようなCAT(0)二次距離不等式を見出すことが本研究における今後の重要な課題となる. Andoni-Naor-Neimanの不等式族は, 現時点までに明示的に記述された全てのCAT(0)二次距離不等式を含むものであるため, 上記の課題において述べたような不等式, あるいはそれに対応する「非正曲率距離空間の性質」を見出すには, 新たなアイデアが求められることになると考えられる. 今後は, 2023年度までに得た成果の発表を行うと同時に, 本研究においてこれまでに蓄積してきた内容を生かす形でこの課題に取り組んできたい.
|