研究課題/領域番号 |
21K03262
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分11020:幾何学関連
|
研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
黒木 慎太郎 岡山理科大学, 理学部, 教授 (90433309)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
|
キーワード | GKMグラフ / 同変コホモロジー / 複素二次超曲面 / GKM多様体 / 自己同型群 / Hessenberg多様体 / 同変ベクトル束 / トーリック超ケーラー多様体 / トーラス作用 / GKM理論 / トーリックトポロジー / 群作用の拡張 |
研究開始時の研究の概要 |
トーラスが不動点を持って作用する空間で、その軌道が組み合わせ的に良い性質を持つ場合(GKM多様体)の研究を行う。特にGKM多様体上のトーラス作用がいつ非可換コンパクトリー群の作用に拡張するかとか、より大きな次元のトーラス作用に拡張するかという問題への答えを与えることが目標である。これらの問題は「与えられた空間の持つ最も自然な対称性は何か?」と言う問題への一つの数学的な答えを探す研究である。
|
研究実績の概要 |
令和5年は、特にロシアの研究者Grigory Solomadin氏を半年ほど岡理大に招待して共同研究を精力的に進めることができた。共同研究の中で、等質空間上のトーラス作用のtangential weightの独立性に関する結果を得ることができた。実際、等質空間の場合は、2,3,nの独立性しか現れないということが分かった(n-independencyの場合はトーラス多様体になる)。GKM多様体の独立性はその軌道空間のトポロジーとも密接にかかわるもので、我々の結果とAyzenberg-Masuda-Solomadinの結果から等質空間の軌道空間のコホモロジーは低い次元では消えていることが分かる。トーラス多様体以外のGKM多様体で、4以上の独立性を持つものがあるかどうかは我々の知る限り具体例が見つかっていない。GKMグラフの立場からはSolomadin氏が人工的ではあるが構成しているが、それに対応するGKM多様体は存在しないことを彼自身が証明している。 他にも、偶数次元複素二次超曲面の同変コホモロジー環を決定して、プレプリントとしてarXivに掲載した(arXiv:2305.11332)。この結果を出したことにより、年度末からBidhan Paul氏(IITマドラス)との共同研究が始まり、令和6年の初頭に奇数次元複素二次超曲面の同変コホモロジー環を完全に決定することができた。 また、枡田幹也氏(OCAMI)、佐藤敬史氏(OCAMI)、Donghoon Jang氏(プサン大学)、Haozhi Zeng(華中科技大学)と概複素構造を持つGKM多様体の具体的な構成に関して研究が始まった。その研究の派生として、Semisimple Hessenberg多様体のAutomorphismの簡約部分群は(旗多様体でなければ)複素トーラスになることもGKM理論を応用して証明することができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究計画書に書いたGKM多様体のルート系に関する研究はGKM多様体のAutomorphismの決定に関する研究に深くかかわっている。この問題と直接関係のある結果がSemisimple Hessenberg多様体という限定されたクラスに対してだがGKM理論を応用することで得ることができた。この結果を得ることができたのは、今まで共同研究をしてこなかったグループと共同研究をする機会を得ることができたことが大きい。 また、前年度に得ていた偶数次元複素二次超曲面の同変コホモロジーの論文を書き上げてarXivに掲載したことにより、(共同研究者のV. Uma氏の学生である)Bidhan Paul氏と知り合うことができ、共同研究を進めることができた。これは予期していなかった進展であり、今後研究者間のネットワークを広げることができると思う。 他にもSolomadin氏と共同研究は計算は大変であるが、誰も確認してこなかったところをきちんと確認し、新しい問題も提起できた。また、彼との共同研究をきっかけにフランスのストラスブール大学にも滞在することができた。これは当初思い描いていた研究計画から想像できなかった方向に展開している。 研究実績の欄には書けなかったが、トロント大(現テルアビブ大)のYael Karshon教授とのlocally standardなトーラス多様体の分類に関する研究について証明が完成した。現在は論文完成に向けてほぼ毎週研究打ち合わせを行っている。この研究に関しても研究計画提出当初はどこまで進むか予想はできなかったのだが順調に進展している。 以上の理由から令和5年度は研究が非常に進んだ(もしくは令和6年以降の研究の種を沢山まくことができた)、年度であったと言える。この理由により、当初の計画以上に進展していると考えても良いと思われる。
|
今後の研究の推進方策 |
令和6年度は8月にトロント大学で開かれる国際会議『Workshop on Toric Topology』に招待講演者として招かれている。また、12月にもインドのIITマドラスに連続講演を行ってくれるように招待されている。また、最終年度の令和7年度にも(まだ情勢が不安定ということもあって確定していないが)イスラエルで行われるGKM多様体に関する国際会議にも招待されている。残りの科研費は主にこれらの研究集会への旅費として使用したいと考えている。 令和6年度の論文作成計画としては、B.Paul氏との共同研究である奇数次元複素二次超曲面の同変コホモロジー環の論文を書き上げて早めに投稿することを目指したい。また、Jang-Masuda-Sato-Zengとの共同研究であるHessenberg多様体のAutomorphismに関しては夏までに論文が投稿できるのではないかと考えている。Y.Karshon氏との共同研究はトロント大の国際会議の前までには完成を目指したい。Solomadin氏との論文も、どう書いていいのか考えないといけないところが多いのだが、Solomadin氏と連絡を密に取りながら今年度中の投稿を目指したい。 令和6年に進める研究計画としては、ICUの松村朝雄氏と行っているGKMグラフのGale dualに関する結果を出したいと思う。かなり進んではいるのであとは最後の一歩のところまで来ているので今年度か遅くても研究計画最後の年である令和7年度までは結果を出したい。他にもJang-Masuda-Sato-Zengとの概複素構造を持つGKM多様体の構成に関して研究を進めたい。この研究が完成すれば、今まで具体的に明記されてこなかった深い部分まで理解できそうな予感のする研究なので、きっとGKM多様体のルート系にもつながっていく研究になると予想している。
|