研究課題/領域番号 |
21K03271
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分12010:基礎解析学関連
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
中西 敏浩 島根大学, 学術研究院理工学系, 教授 (00172354)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2023年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | タイヒミュラー空間 / クライン群 / 双曲幾何学 / リーマン面 / 写像類群 / 離散群 |
研究開始時の研究の概要 |
写像類群(タイヒミュラー・モジュラー群)は多分野で重要な研究対象であるが複素解析学からの興味はリーマン面の変形空間であるタイヒミュラー空間上への写像類群の作用とその力学系である。写像類群についてすでに膨大な研究成果があるが,その理論の進展に比べて,理論の実践や応用面 ― 具体的な例の構成や定量的な事実は乏しいと思われる。申請者たちは従来の研究で位相的有限な曲面の写像類群を有理変換群として表現できることを示した。その過程で得られたさまざまなデータを活かして,複素解析,トポロジー,双曲的3次元多様体,離散群論,数論,複素力学系などに係わる諸問題を数量的に解き明かし,実例を作るという課題に取り組む。
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研究実績の概要 |
タイヒミュラー空間とその上に作用する写像類群に関する研究を行った。特に種数2の閉曲面のタイヒミュラー空間を扱った。種数2の閉曲面のタイヒミュラー空間を種数2の余コンパクト・フックス群の変形空間と見なすとき,従来の研究によってタイヒミュラー空間には7つのトレース・パラメータ(フックス群の指定された元であるSL(2,R)の行列のトレース)による大域的座標が導入される。これまでの研究で上記のパラメータによるタイヒミュラー空間の点としての種数2の曲面群の行列表示を得ていた。この結果はパラメータを複素化することにより,曲面の基本群のSL(2,C)表現の空間上に拡張できる。この空間上の写像類群の作用は有理変換として作用する。その力学系の作用を応用すればさまざまなクライン群の例を構成できる。この方針に従ってクライン群,すなわちSL(2,C)の離散的部分群で,その作用による3次元双曲空間の商空間が閉多様体になるものを見つけようと試みた。この多様体は種数2の閉曲面をファイバーにもつ円周上の曲面束の構造をもつ。そうしたSL(2,C)の部分群の候補を有理変換としての写像類が表現できることにより,代数的な処理によって見つけることができる。しかしそれが実際に求めている群であると結論するためには群が離散群,すなわちクライン群であることを示す必要がある。ポアンカレの多面体定理は群の離散性を保証する定理なので,それを応用するべくその群のフォード領域のコンピュター・グラフィックによる描画を行なった。その描画は群が離散的であることを強く示唆しているが,まだ完全に離散的であることを証明するに至っていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
タイヒミュラー空間に作用する写像類の力学系を利用して種数2の閉曲面をファイバーにもつ円周上の曲面束で有限余体積の双曲3次元多様体を具体的に構成する研究を行っているが,群の離散性判定に困難があり,あと一歩のところで足踏みしている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,科学研究費補助金で数式処理ソフト Wolfram Mathematica を購入できたので,有限体積な双曲3次元多様体の具体例の構成をするのに援用する。閉双曲多様体の例はまだ少ないのて,そうした具体例の構成は大きな価値があると思われる。Mathematicaを用いたさまざまな関数やプログラムが蓄積できたので研究が加速することを期待している。ただしSL(2,C)の部分群の離散判定に困難を抱えており,ポアンカレの多面体定理の改良,あるいは別の離散判定法の開発に取り組む必要がある。 また現在はSL(2,C)の部分群の一つの例しか研究していないが,さまざまな写像類を考察することによりより多くの例の構成に努める。
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