研究課題/領域番号 |
21K03272
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分12010:基礎解析学関連
|
研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
林 正史 琉球大学, 理学部, 准教授 (90532549)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
|
キーワード | 確率過程論 / 確率微分方程式 / 無限分解可能分布 / 確率解析 / マルコフ連鎖 / 数値計算 |
研究開始時の研究の概要 |
株価の変動や溶媒中の微粒子の運動など、社会科学や自然科学に現れる不規則な現象には、常微分方程式では記述できないものが数多く存在する. このような不規則な現象の時間発展を考察の対象とするものが確率微分方程式の理論である. 確率微分方程式は理論とその応用がさまざまな研究者によって研究されている. 本研究では確率制御問題や統計学など応用上様々なところで現れる係数に特異性を持つ確率微分方程式や、経路に依存する係数をもつ確率微分方程式の解の研究を行う。
|
研究実績の概要 |
山里眞氏(琉球大学)、竹内敦司氏(東京女子大)と共同でCME+分布の密度関数に関する研究を行なった。CME+分布とは非負の無限分解可能分布で、レヴィ測度がルベーグ測度に関して絶対連続で、その密度関数が完全単調関数であるものである。CME+分布はBondesson族に属する分布と呼ばれることもある。一次元の一般化された拡散過程の初到達時刻や、逆局所時間の分布はCME+分布であることが知られている。 非負無限分解可能分布の密度関数の評価は、1980年代から近年まで多くの研究者によって研究されてきた。特にレヴィ測度の原点周辺でのある種の非退化性(Hertman-Wintner型の条件)を仮定すると、密度関数についての精密な評価を得ることができることが知られている。一方で、非負の複合ポアソン分布や、原点周辺での発散の速度が比較的遅い場合(緩変動の場合)などは、Hertman-Wintner型条件を満たさないことが確かめられる。本研究では、非負の複合ポアソン分布などのHertman-Wintner型の条件を満たさないような無限分解可能分布の場合も考察の対象にし、密度関数の評価および、時間を発展させた際の減衰の早さを調べた。研究成果は論文としてまとめ、国際誌に掲載された。 Arturo Kohatsu-Higa氏(立命館)、畑宏明氏(一橋大学)、安田和宏氏(法政大学)との共同研究で、CIR模型およびヘストン模型のリスク指標(グリークス)の研究を行っている。理論的な側面から、リスク指標に関する公式を得ることができたが、得られた公式では不連続なドリフト項を持つ確率微分方程式が現れるため、効率良くシミュレーションをする方法を検討する必要がある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マリアバン解析などの解析的な手法を用いることができない、初到達時刻や逆局所時間過程の分布を含むクラスの密度関数の評価について一定の成果をあげることができた。 CIR模型はベッセル過程をスケール変換して得られる模型で、特異性があるため、精密な解析の手法が必要である。ヘストン模型は、CIR模型をボラティリティとして含む模型で、解析が煩雑になる。現在得られた公式では、シミュレーションの面では、まだ不十分なところはあるが、効率の良い手法を提案できるよう研究を進めていく。
|
今後の研究の推進方策 |
CME+分布について、複合ポアソン分布の場合は原点周辺での有界性について、一定の結果が得られたが、絶対連続である場合には、原点周辺の有界性について明 白な結果が得られていない。ラプラス指数の発散の速さが対数関数と同程度であれば、発散することが予想できるが、現在のところまだ示されていない。 昨年度取り組むことができなかったエレファントランダムウォークに関する課題ついて取り組む。特に、pが3/4より大きいときは、エレファントランダムウォークを適当にスケール変換すれば、ある確率変数に概収束することが知られている(Bercu, B., Chabanol, M.L., and Ruch, J.J. (2019))。この確率変数の分布の性質を詳しく調べたい。また、この確率変数との誤差は正規分布に収束することが知られている(Kubota, N. and Takei, M. (2019))が、この場合のモーメント収束の速さについても低次のモーメントでは評価が得られそうである。今後は高次の場合に取り組む。
|