研究課題/領域番号 |
21K03276
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分12010:基礎解析学関連
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
中村 周 学習院大学, 理学部, 教授 (50183520)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | シュレーディンガー作用素 / スペクトル理論 / 散乱理論 / 超局所解析 / 半古典極限 / 連続極限 / 非楕円型作用素 / シュレディンガー作用素 / 半古典解析 |
研究開始時の研究の概要 |
半導体工学の高度化、量子計算機の開発などにより、量子力学の基礎的な理論の重要性は近年特に増大している。この研究計画においては、量子力学において素粒子を記述するシュレディンガー方程式、あるいは格子を運動する粒子の量子力学の方程式の記述する現象を理解するために、それらの数学的な構造を与えるスペクトル、散乱現象などを研究する。特に、解析学の最先端の理論である超局所解析などを用いて、量子現象の本質的な部分が、幾何学的構造、古典力学の解の構造によって理解できることを、いくつかの具体例を通じて示していく。
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研究実績の概要 |
超局所解析の手法などを用いて、シュレーディンガー方程式を中心とする量子力学の方程式、作用素に関する研究を行った。具体的な研究成果について、以下に概略を述べる。 (1) 時間を含むシュレーディンガー作用素、クライン・ゴルドン作用素などを時空間上の作用素と考えると、形式的に自己共役作用素であるが、楕円型作用素ではない。特に時空間上の(変数係数)クライン・ゴルドン作用素は、一般相対論的な場の理論の構成で用いられるファインマン時間発展作用素の存在に関わり、近年盛んに研究されている。研究代表者は平良晃一(立命館大学)との共同研究で、漸近的にミンコフスキー的な空間の場合のクライン・ゴルドン作用素の本質的自己共役性について研究を行ってきたが、時間方向に増大するような時空間モデル上の場合については未解決の領域が大きかった。中村は2024年2月から3月にかけて、Toulouse大学の Jean-Marc Bouclet教授との共同研究を実施し、この分野の研究に関して大きな進展があった。研究を継続中である。 (2) 格子上の量子力学系、特にシュレーディンガー型作用素の連続極限の問題とは、格子間隔を0に近づけた場合に、何らかの意味で連続空間上の偏微分作用素に収束する、という性質を示すことである。離散シュレディンガー作用素の連続極限については、只野之英(東京理科大)らとの共同研究を継続してきているが、一般の格子状のシュレーディンガー作用素の場合、グラフェンを記述する六角格子の場合、変数係数のシュレーディンガー作用素の離散化の場合などについての研究成果を得て、論文を完成した。また、離散ディラック作用素に関する連続極限など、いくつかの新たな知見をまとめた論文を完成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
上記の(1)の研究に関しては、時間方向に増大する時空間モデル上のクライン・ゴルドン作用素の本質的自己共役性については、部分的な研究成果を得ていたものの、空間が線形に増大する場合、あるいは指数的に増大する場合などの、物理的に重要な場合についての研究については技術的な困難があった。そのような状況において、2024年2月から3月にかけての中村と(関連する幾何学もの出るのエキスパートである)Jean-Marc Boucletとの共同研究において、顕著な研究の進展がなされた。線形増大の場合についてはほぼ研究の目処が立ち、指数増大の場合についても研究の方向性が得られて研究を継続中である。 上記の(2)の連続極限の問題に関しては、三角格子、正六面体格子、正八面体格子などを含む 一般の格子状のシュレディンガー作用素の連続極限、一般論が適用できない六角格子の場合、変数係数2階楕円型作用素の場合など、多くの状況下での連続極限のノルム収束の証明に成功し、只野之英(東京理科大)、三上渓太(理研)と共に論文を完成し、Pure and Applied Analysisに受理された。また、離散ディラック作用素の定義に関する物理の理論の数学的に厳密な定義を含む、新たな連続極限の収束の証明にも成功し、論文を完成させた。すでにJ. Spectral Theoryにオンラインで出版されているが、さらに新たな知見を得て研究を継続中である。また、連続極限における量子力学的共鳴固有値の安定性についての研究を、亀岡健太郎(立命館大学)と共同で進めており、論文の完成に近づいている。全体として、実り多い研究成果、進展が得られた年度だと判断している。
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今後の研究の推進方策 |
上記の(1)の研究課題については、中村はJean-Marc Bouclet(トゥールーズ大学)との共同研究を継続し、物理的に重要なクラスの時空間上のクライン・ゴルドン作用素の本質的自己共役性の証明を完成させることが、2024年度中に可能だと考えてる。また、さらにこのようにして定義されたクライン・ゴルドン作用素の散乱理論など、これによって開かれた研究領域の研究を継続的に行っていく。上記の(2)の研究に関しては、より一般のグラフ上の場合、離散ディラックの場合、多体の場合など、多くの未解決問題があり、また多数の研究者が新たに参入している研究分野ともなっている。上記の量子力学的共鳴の連続極限を含めて、いくつかの問題を継続的に研究していく。研究代表者の中村を中心に、只野、三上、亀岡などの共同研究者と共に研究を進めていくが、そのための出張旅費が必要になる。 また、2024年度においては、パリ・サクレー大学、ノースウェスタン大学での研究集会における招待講演での研究発表があり、それらの機会での議論から、新たな研究の知見が得られることも期待している。これらの研究推進のためには、海外旅費(海外出張、外国研究者招聘)を支出する必要がある。
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