研究課題/領域番号 |
21K03290
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分12010:基礎解析学関連
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
守屋 創 金沢大学, 機械工学系, 准教授 (20399794)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | C*-flow / 漸近可換 / 時間発展群 / 量子統計力学 / 漸近可換条件 / C*力学系 / 量子多体ダイナミクス / Jordan-Wigner変換 / 平衡状態 / 数理物理 / 関数解析 / 統計力学 |
研究開始時の研究の概要 |
統計力学の基礎的な諸問題を, 関数解析学の定式で研究する. 通常の統計力学では, 有限系に周期境界条件を課し, その体積無限極限を考える. 一方, C*力学系の定式では, 最初から無限系が存在し, 各有限系は部分系として含まれている. この枠組みを用いると, 無限系の時間発展, 平衡状態, 自発的な対称性の破れを厳密に定式することが出来る. 本研究では, この厳密な数学定式を生かし, 通常の物理の手法では扱い難い, 無限系の量子ダイナミクスを扱う. C*力学系の量子統計力学の数理を拡張整備しながら, 新たに超対称性格子フェルミオンC*力学系を詳細に研究する.
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研究実績の概要 |
RMPに発表した論文は, 量子平衡系における時間対称性の自発的破れの非存在に関するレビューで, この視点から, 量子平衡系を与えるKMS条件について, 非専門家向けに初歩から解説している. 既に著名な物理学者によって, 量子平衡系で時間方向の結晶が存在しないことが示されている. 有限ギブス状態の時間相関で定式されるが, 体積無限の数学的正当化には, 古くから知られる難問が横たわっている. 一方, C*代数では, 無限系を出発点にするため より直接・簡明に時間方向の結晶の非存在が証明できる. 同様に, 熱力学変分原理・ダイナミクス受動性という熱力学第二法則からも, 非存在が導かれる. C*代数の定式のほうが, 物理設定が広く, 相互作用の局所性, Lieb-Robinson boundが無い場合でも適用でき, 周期・非周期ともに時間方向の非自明な破れは排除される. 量子平衡系での時間方向の結晶は, genuine(真の) quantum time crystalと呼ばれている. 歴史的背景があるのだろうが, 存在が否定されているものに対し, `genuine'というのは珍妙である. 現在まで, 様々な量子非平衡系で, 時間方向の結晶が観測されている. それらは興味深い非平衡量子系の例ではあるが, 当初のWilczek模型とは概念的に乖離している. Wilczek模型に近いものとして, 2017年, 丹田-中津川氏が 有限量子系のdecoherenceから生じる時間方向の振動を発表した. 丹田-中津川の模型は非平衡な有限系で, オーダーパラメーターは量子性を持つ. 一方, 我々の非存在定理は, 平衡系で, オーダーパラメーターはvon Neumann環のセンター代数に所属する古典量である. この対比を象徴的かつ数学的に説明した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
格子フェルミオン系の超対称性模型のダイナミクスの非エルゴード性の解明を中心にしていた. 現在は, 超対称模型に限定せず, 格子フェルミオン系, 量子スピン系のC*力学系(C*-flows)の一般論に重点を移している. 理由として, 東大, アムステルダムの物理グループによって, 格子フェルミオン超対称性模型の代表例であるニコライ模型の可解性が明らかにされたことがある. 超対称を持つ格子フェルミオン模型の相互作用は, パラメーターが特別であり, また私の研究室で行った数値解析から, ニコライ模型のハミルトニアンの古典部分を摂動すると, 基底状態の高縮退は急激に消える. 超対称模型を,非自明な非エルゴード模型の例と位置付, より一般的な理論の構築を目指すことにした. 本年度,``漸近可換条件''の研究を開始した. 漸近可換性は強いカオス条件で, 非エルゴード的な超対称ダイナミクスとは対照的である. 代数的場の量子論の研究論文に, 漸近可換かつ超対称的なダイナミクスを公理的に扱うものがあるが, 少なくとも, 格子フェルミオン系には存在しておらず, 一般的にも存在は難しいと予想している. 以上のように, 研究の重心を超対称ダイナミクスから, 一般的なC*力学系に移しているが, 進展は順調で, 研究成果を昨年度RIMSで口頭発表した. これを論文として作成中である.
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今後の研究の推進方策 |
代数的場の量子論, C*代数量子統計力で使われている, 量子力学系のカオス性の特徴づけである, 漸近可換C*-力学系の研究を行う. 第一歩として, 格子フェルミオン系での成果を, RIMS研究会「量子場の数理とその周辺」で講演したが, それを次年度では本格的に発展させる. 典型的な漸近可換C*力学系として離散シフト変換があるが, その連続拡張を検証したい.類似するテーマをアムステルダム大学のグループが2021年に取り上げていて, 非存在定理を得ている: 「シフト変換は 局所性を持つハミルトニアンの自己同型群から生成できない.」 我々は考察をC*-力学系全体に広げて, 連続拡張を探す. アムステルダム大学のグループともメールで研究情報の交換を既に開始している. 幾何学的な観点から, これはKuipierの定理のC*-flow版といえる. 有限系では, クーロン長距離相互作用を持つ二体ハミルトニアンが対応するが, 無限系のC*-flowとしての意味づけはどうなるのか. また, シフトはQCAs(量子セルオートマトン)の例であるが, ``離散的QCAに対してどのように基底状態を与えることができるのであろうか?'' という問いを, 平衡状態に広げ考察したい. 漸近可換性はC*-力学系の定式で, RTE(平衡への回帰)などを導く強いカオス性である. しかし漸近可換は, 具体的模型からの裏付けが無く, C*代数の統計物理では忘れられている. 一方, 物理分野では, 量子カオスの研究が進展している. 無限系の立場から, 有限系での量子カオスの概念と比較し, 漸近可換条性の特質, 現在の量子カオス研究での位置付け・有用性を調査する.
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