研究課題/領域番号 |
21K03297
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分12010:基礎解析学関連
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
野村 祐司 兵庫県立大学, 理学研究科, 教授 (40282818)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2021年度)
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配分額 *注記 |
2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 埋蔵固有値 / 閾値レゾナンス / Persistent多様体 / Fermi面 / ランダムAB磁場 / Lifshitz tail |
研究開始時の研究の概要 |
閾値埋蔵固有値をもつポテンシャル全体の集合をP_{s}とし、Persistent 集合と名付け、P_{s}の幾何的な構造を明らかにしていく。P_{s}は特定の埋蔵固有値をもつポテンシャルを決定するという固有値逆問題の解を完全にパラメタライズする分類集合であり、これを調べることにより閾値埋蔵固有値の安定・不安定性が完全に解明される。 離散作用素固有のフェルミ面における双曲的特異点に対応する閾値レゾナンスを定義し、その存在性を追及する。ポテンシャルのサポートが有限の場合にレゾナント状態の漸近挙動をより精密なものすること、および閾値レゾナンスのPersistent集合の幾何学的構造の解析を進める。
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研究実績の概要 |
離散シュレディンガー作用素の埋蔵固有値と閾値レゾナンスの関係を調べることを研究の目的としている。
d次元正方格子上のシュレディンガー作用素のスペクトル、特にポテンシャル摂動による固有値分布への影響に関する精密な研究の必要性を感じ、有限台ポテンシャルをもつ離散シュレディンガー作用素の場合の離散固有値の個数の精密な評価を行ってきた。これは連続スペクトルから離れた多重度有限の離散固有値の評価である。それ以外にも連続スペクトルに埋め込まれた固有値の存在の可能性があり、研究はその方向に向かった。すでに磯崎・森岡により有限台ポテンシャルの場合には連続スペクトルの内部における埋蔵固有値の非存在が示されていた。しかし連続スペクトルの端点においては埋蔵固有値(閾値埋蔵固有値)が存在する可能性があり、これを調べることとした。この研究の過程で、閾値埋蔵固有値の存在・非存在の条件を得るだけでなく、閾値埋蔵固有値をもつポテンシャル全体の集合をP_{s}とし、Persistent 集合(多様体)と名付け、P_{s}の幾何的な構造を明らかにしていくという新たな研究視点を得た。Persistent set (variety)を決定し、その幾何学的構造および、それの特異点と元の作用素のスペクトルとの関係を調べている。
このPersistent集合の研究の過程で、固有状態ではないが、連続スペクトルの端点において減衰するシュレデインガー方程式の解を見つけることができた。そこでこれを微分作用素で知られているレゾナント状態との関係において解析していくという研究方向を得ることが出来、特にサポートが有限でないより一般の場合にレゾナンスの意味ある定義を与え、レゾナント状態の無限遠での漸近展開により特徴付けることを目指している。またFermi面上に現れる楕円型、双曲型特異点とレゾナンスの存在との関係に関する研究を推進していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
d次元正方格子上 n個の固定した点をサポートとしてもつポテンシャル全体の集合はR^nと同一視される。この空間の中で、端点を埋蔵固有値としてもつポテンシャル全体の集合をP_{s}とし、Persistent 集合(多様体)と名付け、P_{s}の幾何的な構造を明らかにしていく。これを調べることにより、閾値埋蔵固有値の安定・不安定性が完全に解明される。さらにPersistent集合の幾何構造と元のシュレディンガー作用素のスペクトルとの関係も研究対象である。特にP_{s}に現れる特異点と埋蔵固有値のより精密な構造との関係性に注目している。現在、P_{s}はdが5以上、3,4の場合、2の場合において大きく異なることが分かってきた。P_{s}のユークリッド空間への埋め込まれ方も調べている。離散固有値の個数の評価公式を精密化することにより、離散固有値の個数とP_{s}との関係も興味深いものであり追及している。 ポテンシャルにある程度の減衰を許した状況で、まず閾値レゾナンスの定義を与え、レゾナント状態をその漸近挙動によって特徴付けることを試みている。また、微分作用素(ラプラシアン)の場合には現れないフェルミ面における双曲的特異点に対応する閾値レゾナンスを定義し、その存在性を追及している。さらにポテンシャルのサポートが有限の場合には、レゾナント状態の漸近挙動をより精密なものすることも目指している。
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今後の研究の推進方策 |
閾値埋蔵固有値をもつポテンシャル全体の集合をP_{s}とし、Persistent 集合(多様体)と名付け、P_{s}の幾何的な構造を明らか研究を研究を推進してきた。ポテンシャルを摂動したときに閾値埋蔵固有値は安定であるかどうか、という問題がある。P_{s}の構造が明らかになれば、この摂動に関する閾値埋蔵固有値の安定・不安定性の問題は完全に解決するといっていい。またPersistent集合の幾何構造と元のシュレディンガー作用素のスペクトルとの関係も興味深いと思われる。P_{s}はdが5以上では代数多様体、dが2、3、4の場合には特異点付微分多様体となることが分かってきたが、この特異点と作用素の閾値埋蔵固有値の固有空間の構造との関係に今興味をもって研究を推進していく。離散固有値の個数の評価公式の精密化に成功しており、これを援用することにより離散固有値と閾値固有値との関係性が解明されると期待している。このPersistent集合の研究の過程で、固有状態ではないが、連続スペクトルの端点において減衰するシュレデインガー方程式の解を見つけることができた。そこでこれを微分作用素で知られているレゾナント状態との関係において解析していくという研究も興味深く、研究を推進していく。
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