研究課題/領域番号 |
21K03298
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分12010:基礎解析学関連
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
松本 裕行 青山学院大学, 理工学部, 教授 (00190538)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | ブラウン運動 / 正定値行列 / 拡散過程 / 擬等角写像 / 対称空間 / 生成作用素 / 確率解析 / 確率過程 / 多様体 |
研究開始時の研究の概要 |
二次元拡散過程に関しては,一次元拡散過程と擬等角写像の理論を参考に滑らかな場合の結果の整理から始める.測度に基づいて拡散過程を構成することは容易でないと思われるが,初年度は例を作りたい.2年目以降は一般論の構築に向かうが,得られている結果の公表も考慮したい. 正定値行列の空間上の拡散過程に関しては,固有値に関する考察を進め初年度中に論文の形での結果の公表を試みる.2年目以降は,一般の対称空間上の拡散過程への一般化,とくに長時間挙動に関して研究を進める.
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研究実績の概要 |
正定値行列の空間上のラプラシアンの岩澤座標による表示を調べることによって,解析に役立つ表示を与えた.2次元,3次元,4次元の場合の表示を具体的に書き下すことにより,次元に関する帰納的な関係を予想し,実際に一般の次元の場合にも解析に役に立つ表示を得ることができた.応用として対応する拡散過程について,固有値が指数増大または指数減少し,指数部分に関する大数の法則の形で長時間漸近挙動が知られている.上述のラプラシアンの表示を用いることによって,行列式が幾何ブラウン運動と同じ確率分布をもつこと,最大および最小固有値に対して指数部分の中心極限定理を証明し専門誌に発表した. ユークリッド空間上のブラウン運動の球面への到達時刻とその位置の同時分布に関して,その確率密度に対する球面調和関数を用いた表示を与え,尾確率に関して調べた.手法は,従来の問題を時空ブラウン運動の調和測度の解析に基づくものと異なり,ブラウン運動のベッセル過程と球面上のブラウン運動の歪積表示に基づく自然なものと思われる.また,到達時刻に関する既知の結果を含むことが直ちに分かる.球面上のブラウン運動を直交射影して得られる確率過程が拡散過程であることが,もう一つの鍵であった.定数ドリフトをもつブラウン運動についても,カメロン-マルチンの定理を用いて上述のドリフトのない場合に帰着できるという以前示した注意に基づき,ドリフトのない場合と同様の結果を示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
拡散過程の解析的手法を用いた研究において,研究当初に掲げた二つの具体的な問題に関して,当初考えていた結果を予想以上に簡明な形で示し,結果を公表するレベルまで研究を達成できている. 正定値行列の空間上のブラウン運動に関しては,最大および最小固有値の時間パラメータを大きくしたときの挙動を調べることができたが,その他の固有値に関しては予想は立つものの証明に至っていないので今後の課題である.また,低次元の場合にセルバーグ跡公式を考察することも目標であるが,いまだ手つかずである. ユークリッド空間上のブラウン運動の球への到達時刻と場所の同時分布に関しては,満足のできる結果が得られたと考えている.今後は具体的な応用に関して考察したい.
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今後の研究の推進方策 |
正定値行列の空間に関しては,セルバーグ跡公式を考察したい.2次行列の場合は,これまでに得られた岩澤座標によるラプラシアンの表示を用い,さらにポアンカレ上半平面上の跡公式を用いて考察できると思われる.セルバーグゼータ関数がパラメータを増やした形で得られるので,未知の分野に入っていけるのではないかと期待される.3次以上の場合は複雑であるが,ラプラシアンの具体的な表示を用いることにより解析が可能な問題があると思われる.等距離変換群である一般線形群の離散群に関する学習・研究を進めるとともに,ラプラシアンおよび対応する拡散過程のさらに詳細な研究を進める予定である.研究は,代表者松本の個人的な研究であるが,谷口説男氏(九州大学名誉教授)と日常的に電子メールなどで連絡を取りながら研究を進める予定である. ユークリッド空間上のブラウン運動の球面上への到達時刻に関しては概ね目標は達成したので,オルンシュタイン-ウーレンベック過程などの球面への到達時刻を調べ管状近傍の体積の考察へつなげたいと考えている.研究は濱名裕治氏(筑波大学教授)との共同研究であり,電子メールなどによる日常的な研究連絡および相互訪問や研究集会・学会などにおける研究連絡を役立てながら,研究を進めたい.
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