研究課題/領域番号 |
21K03316
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分12020:数理解析学関連
|
研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
木村 泰紀 東邦大学, 理学部, 教授 (20313447)
|
研究分担者 |
佐藤 健治 玉川大学, 工学部, 教授 (70307164)
高阪 史明 東海大学, 理学部, 教授 (20434003)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
|
キーワード | 測地距離空間 / 凸最小化問題 / 均衡問題 / リゾルベント作用素 / ベクトル場 / 凸解析 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は, 工学や経済学等で扱われる諸問題を解析するための基礎となる「凸解析学」の新たな知見を求めることを目的とする。とくに、測地距離空間と呼ばれる、無限次元の曲面を含むような空間を考え、その上で定義された関数の性質を考察する。関数の微分に相当する概念を考えるにはベクトル場の概念が重要となるが、凸解析の理論展開をするために十分な性質を持ったものを定義するにはさまざまな工夫が必要となる。本研究では幾何学や不動点理論等の研究を援用することで新たな理論の展開を目指す。
|
研究実績の概要 |
本研究の目的は、近年急速に発展が進んでいる完備測地距離空間上の凸解析学の理論を、ベクトル場の概念を用いて再構成することである。2022年度は、前年度に引き続き、ベクトル場の研究に対する準備に相当するいくつかの成果が得られた。具体的な成果としては、測地距離空間上の陰的な漸化式によって生成された点列の収束定理や、測地距離空間特有の凸結合に関するさまざまな課題に対応した解近似点列の生成法に関する結果がある。 また、凸最小化問題の一般化と見なされる非線形問題の一種である均衡問題についてもさまざまな考察をした。とくに、均衡問題の解近似において重要な役割を果たすリゾルベント作用素の定義において、摂動関数の選択は作用素の性質に直接的な影響があり、何を選択するのが適切かという問題は非常に興味深い。本研究では摂動関数を、定義される空間の曲率上限をパラメタとする関数とみなすことで、選択された摂動関数から得られる作用素の性質を一般的な形でまとめ、その性質を利用したいくつかの解近似定理を得ることに成功した。 さらに、摂動関数に関する研究からの派生として、空間の曲率上限の値に対応した関数を用いることでいわゆる中線定理に相当する不等式を統合的な形で表現することに成功した。さらに、この表現方法が従来から研究されているバナッハ空間に対しても適用可能であることを発見した。バナッハ空間の幾何学的性質は測地距離空間のそれとは異なるものであるというのが従来の認識であったが、今回の知見によって、これらを統合した形で研究できる可能性が見出され、今後の発展が期待できるトピックであると考えられる。 これらの結果の一部は既に研究論文として公開しており、他の部分についても、部分的に口頭発表などをおこなっている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に引き続き、2022年度も、測地距離空間におけるベクトル場を定義するための準備としての研究を実施した。とくに空間の幾何学的性質に対応した非線形問題の解近似法や、そこで利用されるリゾルベント作用素の性質、さらに空間の曲率上限の符号に依存しない統合的な証明法の考察などをおこなった。 準備だけでなく、ベクトル場の定義に関する具体的な研究にも着手しているが、妥当性があり、十分によい性質を持ったベクトル場の定義を得るためにはいくつかの課題が残されていることが判明している。今年度は主として中線定理と呼ばれる不等式について、曲率上限をパラメタとする重要な知見を得ることができ、満足する進展が得られたと考えている。 研究打ち合わせや研究成果発表については、昨年度と同様にコロナ禍の影響が残り、研究の進展に影響を与えている。2022年度末頃から徐々に、とくに海外での研究成果発表の機会が増えつつあり、2023年度はコロナ禍以前の状況に戻ることが期待される。成果発表に関する困難を除けば、研究の進捗状況は総じて良好な状況であると判断できる。
|
今後の研究の推進方策 |
現時点では準備段階としての研究が順調な進捗をしており、今後具体的なベクトル場の定義とその性質解明をするという目的達成へ向けて順調に進むことが期待できる状況である。とくに、中線定理に関連する新たな知見は今後の研究で活用できる見込が高く、大いに期待できる成果と言える。 これに関連して、均衡問題に代表される非線形問題の解近似理論もさまざまな新しい近似法が提案され、その収束性についても証明が得ることができた。これらの成果に関する計算機実験にも着手しており、実用的な成果に繋げることも今後検討していきたい。 研究打ち合わせや成果発表については、対面での実施が実現されることを期待しており、より活発に進められるようになることが期待される。
|