研究課題/領域番号 |
21K03322
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分12020:数理解析学関連
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
藤田 安啓 富山大学, 学術研究部理学系, 教授 (10209067)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | Hamilton--Jacobi flow / 初期値の至る所微分不可能性 / 逆問題 / 正則効果 / 病的函数 / Hamilton-Jacobi flow / 至る所微分不可能 / 放物線群 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、実数直線上で定義された連続かつ周期1を持つ函数を初期値とするHamilton-Jacobi flowの挙動から、初期値である函数のどのような性質が導かれるかという逆問題を考える。初期値である函数の性質から、それを初期値とするHamilton-Jacobi flowの挙動を調べる順問題は広く研究されている。しかしながら、この逆問題についてはほとんど調べられていないようである。
本研究の目的は、初期値である函数の性質として、至る所微分不可能性がそれを初期値とするHamilton-Jacobi flowの挙動から導びかれることを示すことである。関連するさまざまな問題も調べて行きたい。
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研究実績の概要 |
今年度は、昨年度得られた結果について2回研究発表した。また、共同研究者4人が富山に勢揃いして次の研究への準備を行った。これらの意味では、研究は大いに発展したと言ってよいと思う。しかしながら、コロナ禍の影響で、どうしても出張や発表を控えてしまう傾向が見られ、新年度は更なる発展を目指したい。 これらについて詳細を述べる。今年度は、昨年度投稿してacceptedされた論文「Hamilton--Jacobi flows with nowhere differentiable initial data」について2回発表した。この論文は今回の科研費による研究の最終目標がほぼ達成できたことを示す論文であり、私自身としても自信作である。この2回の講演のうち、最初は早稲田大学の応用解析研究会であり、もう一度は日本数学会秋季総合分科会である。両方の講演とも大変評判がよく多くの質問も出た。もう一回講演を依頼されてはいたが、コロナ禍に学内の会議の都合もあり果たせず残念であった。 また、2023年の2月18~23日の日程で本科研費の共同研究者(海外協力者を含む)4人が富山に勢揃いした。このうち、Antonio Siconolfi 氏はイタリアから東京に来ていた際に時間を割いて富山に来てもらった。この時の議題は、自分たちが定義してその構造を調べて来た、至る所連続で至る所微分不可能な函数のあるクラスに属する例を従来知られているものよりも拡張することであった。具体的には、良く知られている高木函数はこのクラスに入るが、これもまた良く知られているWeierstrass函数は今までは入っているか否か不明であった。この函数もパラメーターにより、このクラスに入ることを示した。ここで用いた方法により、このクラスの函数の例が飛躍的に伸びた。現在、日本側の共同研究者が作った文章や図をSiconolfi氏が推敲中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
「当初の計画以上に進展している」と言える理由は、昨年度投稿してacceptedされた論文「Hamilton--Jacobi flows with nowhere differentiable initial data」の存在である。この論文は今回の科研費による研究の最終目標である「Hamilton-Jacobi flowを見ることにより、初期値の至る所微分不可能性が導けるか」という逆問題を扱っているが、それがこの論文によりほぼ肯定的に解決できたと言って良い。これは私自身としても自信作である。同時に「当初の計画以上に進展している」と言える根拠になると思う。 しかしながら反省点を述べれば、昨年度はコロナ禍と言うこともあり、出張もおっかなびっくりの状態で行っており、その回数も少ない。従って、講演の機会も2回だけであり、論文の結果の出来の良さに比べて多いとは言えない。 良かった点としては、2023年の2月18~23日の日程で本科研費の共同研究者(海外協力者を含む)4人が富山に勢揃いして、次の論文の準備がほぼ終わった点であろう。現在論文執筆中であり、今年中にはどこかの専門誌に投稿できそうである。 新年度は、感染には十分注意を払いながらも出張の回数も増やして講演も多く行いたいと思っている。
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今後の研究の推進方策 |
2023年の2月18~23日の日程で本科研費の共同研究者(海外協力者を含む)4人が富山に勢揃いして、自分たちが定義してその構造を調べて来た、至る所連続で至る所微分不可能な函数のあるクラスに属する函数の例を拡張することを話し合った。まずは、これについての論文を完成して投稿にまで持っていきたい。 次に、現在計算中だが確信が持てて来たものとして、このクラスの函数に作用するHamilton-Jacobi半群(作用して出来上がるのがHamilton-Jacobi flow)の役割を解明することである。このクラスの函数の多くは無限級数として表されるが、Hamilton-Jacobi半群はこの無限級数のうちの、ある番号から先の項を時間と共に消滅させていくようである。すなわち、Hamilton-Jacobi半群には消滅効果があると言って良いと思う。計算はほぼ出来上がっているので、細かい点まで精査を重ね、また共同研究者たちの意見も聞いて、論文として行きたい。 最後に、昨年度投稿してacceptedされた論文「Hamilton--Jacobi flows with nowhere differentiable initial data」については、今年度出来るだけ色々な機会を捉えて発表をしていきたい。
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